不登校が急増している理由を考える
10月末に2023年度の不登校の数字が出た。数年前まではいつの間にやら数字が発表されているのを後追いで見るだけであったが、2022年くらいからは「10月末だから不登校の統計が発表されるな」という認識になった。発表された数字は大方予想されたものであった。
私もこの10年で8人の不登校の児童生徒と接している。理由は「子どもの数だけある」と実感する。起立性障害、やる気が出ない、勉強が分からない、人間関係のトラブル、本人も理由が分からない等、様々である。また塾とは違う所では、いつも昼前に二十歳くらいの金髪の男性が運転するバイクに乗って学校に行く中学生がいたり、秋になっても平日の午前中から川に入って遊び、時々注意されている小学生グループなどもいたりする。はたまた学校にずっと来ておらず同級生でも名前しか知らないような子もいるようだ。「不登校を解消するにはコレ!」という手法はどこにもなく一人ひとり対応が異なるのは間違いない。また学校に戻った方が良い子もいれば、そうでない子もいるのだろう。ただやっぱり増えすぎだとは思う。ずっと上昇傾向が見られていたのであれば「時代の変化」と捉えられるが、ここ5年の増え方は「何らかの変調」と捉えなければ説明が付かないからである。
一点気になる部分がある。従来の不登校はHSPの人が多かったのではないかと推測する。最も多いものとしては「激しく叱責された、他の子が激しく叱責されるのを見た」という理由が考えられる。数少ない不登校になった同級生の親もそんなことを話していたし、2015年以前の塾で出会った不登校気味の子は多かれ少なかれそんな原因を伝えてくれることがほとんどだった。しかし私のnoteでも何度も書いているように、学校現場から激しい叱責はほぼ無くなっている。しかしそれに反比例するかのように不登校の児童生徒は増えているのだ。これは「激しく叱責する、我が物顔でやりたい放題振る舞う。勝手に授業中に立ったり出て行ったりする同級生」の増加を疑っている。授業参観に行くと低学年のクラスでは勝手に動き始める子が驚くほど目立つ。それに対して教員はあまり反応せず、補助教員が何とか宥めすかしたり、教室外まで付いて行ったりするのを見ている。体の小さい子や繊細な子は隣の子があの振る舞いをすると恐ろしいだろうと感じる。しかしこちら側からの指摘はSNSではあまり見ないなぁと不思議に感じている。
この点においても「教育のアップグレード、学校のアップグレード」と呼ばれている所の副作用を感じるのだ。
一昨日、Xで興味深い連続ツイートを見た。今の「理知的」な小学生の様子をある保護者が書いたものである。少し長いが引用させてもらう。
こちらの方は特に子育てのことばかり発信している訳ではなく、日常や趣味や仕事をポツポツとポストするアカウントであった。またこの件について良い面も悪い面も両方の感想をフラットに書いている。それが価値があると思った。
不登校のニュースや分析記事や当事者たちの発信はネット上にゴマンとある。そしてそのほとんどがポジショントークである。記事を書いた専門家の名前を見ればもうどんな内容かは想像がつく。また当事者の発信も基本同じ所をグルグルしているだけで新たな発見は減ってきた。皆、自分の仕事や子どもが可愛いので当然だ。その利益が最大化するような発信をする。子どもを弁護し仮想敵を設定する考えを発信する。そしてただ愚痴を吐き捨て続ける親アカが少数あるのが現実だ。
私はこの「不登校の文脈からは独立したこの連続ツイート」に現代の不登校が増えている理由が如実に表れていると感じた。ここで書かれた小学校の生活に「しんどそうだな。かったるそうだな」と感じないだろうか?またこのような子たち30人の集団を管理したいと考えるだろうか?
「本人も理由が分からないが学校に行けない理由」も「暴力は減ったがいじめの認知件数が増える理由」も「ある日、突然学校に行けなくなる子がいる理由」も「鬱になって休職離職する教員が多い理由」も全てここに詰まっているように思う。皆さんも想像してほしい。職場の大半がひろゆきマインドを持った人間に囲まれている毎日を。確かに暴力や目に見える危険や極端な貧困を子どもたちから減らし漂白してきた。そしてデジタル漬けにして家に籠らせ、親は理解よく振る舞うようになり仲良し親子が増えた。その結果としてこんな「ひろゆきッズ」が大量発生しているのである。
驚くべきはこちらのツイートに付いたコメントの8割が「子どもたち進化していますね」「理論武装できて素晴らしい」「教育のアップデートの賜物」のような肯定的な内容だったことだ。子どもたちが子どもらしく振る舞うことを現代の大人たち(特にネット民)は嫌うことがよく分かる現実である。
それを見た時にまだまだ原因不明の不登校は増えると確信した。もっと子どもたちに野生や本能に従った時間を提供しなければ歯止めはかからないであろう。
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