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8/17(土)「詩人の生涯」「時の崖」渋谷シネマヴェーラにて

 箱男が来週に迫っておりますが今日の12:20〜の回、「詩人の生涯」「時の崖」+トークショーを見にいきました。
 ↓

 「時の崖」については大学の授業の際に見たことがありました。ただ「詩人の生涯」について、事前に「世界SF全集」に収録されているものを読んだことがある以外にはほとんど事前情報がない状態での鑑賞となりました。
 
 どちらかと言えば後半のトークショー目当てで行ったのではありますが、「詩人の生涯」を劇場で見れたことも想定外の大きな収穫だったと思うくらいに、とても素晴らしい作品でした。

 ちょっと少し個人的な話をすると、2019年に小島秀夫の「DEATH STRANDING」が出たタイミングで「なわ」を読んで、「R62号の発明」ではカフカの「流刑地にて」を”何もしない機械”という題でレポートを書いたこともあります。
 飛んで現在は「砂の女」を少しずつ読み進めております。

 私個人、安部公房で個人的に最も好きな一文に「第四間氷期」の以下があります。

プログラミングとは、要するに、質的な現実を、量的な現実に還元してやる操作のことである

第四間氷期より

 「詩人の生涯」で主人公の母が糸になり、ジャケッツになるシーンがあります。
 そのシーンについて私は、人間や個人と言ったある種質的に意味のある存在が工業製品という量的な物質に還元されてしまうというふうに解釈しました。
 そしてふと自分の方に目を向けてやると、この糸になってしまった母とまったく同じことをしているのだと気付かされます。
 今私は会社員として決して少なくない時間を給料のために費やしております。
 時間といういわば本来計数できないものを、金銭に変えてしまうというところにおいて、資本主義社会における労働行為の根源的な悪徳を常日頃から自覚せざる得ません。
 「詩人の生涯」は最後救いのある展開になるため、心持ちは幾らか穏やかな状態で見終わることができました。ただ「人間がただの物質へと還元されてしまうのかもしれないという根源的な恐怖」を安部公房作品全般において通底しているテーマだと感じます。

 まさに会場はこんな感じでした↓

 石井岳龍さんの、「箱男」の実写化について安部公房へ直談判したエピソードなど他にも貴重な話がいろいろ聞けました。
 「箱男」への期待値がさらに上昇している中、実際劇場で見たらどうなって
しまうことやら、、、。(楽しみ)


 本当はスケジュールを全て見たかったところですがにっくき労働のためにそれが叶わず、、、ただ今週いっぱいはやっているため是非予定の合う方は見に行くことを強くお勧めします。

明日以降の上映スケジュール

石井岳龍さんのXも是非↓


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