精神病の正体と精神科医の犯罪 8 〈最先端研究が暴く不都合な真実〉
精神病の正体 その8 統合失調症のメカニズム
脳が縮む?
統合失調症はとも不思議な病気です。
例えば代表的な症状に入浴拒否があります。綺麗好きで毎日入浴を欠かさなかった人が、髪がボサボサでも体か臭くなっても入るのを嫌がるのです。以前は毎日入浴していたという記憶は間違いなくありますし体を清潔にするため入浴するべきという知識もあるのに入浴したがらないのです。
統合失調症が精神・心を司る前頭葉など一部の部位だけが萎縮し機能が低下することによって発症することは間違いないようです。
体の成長は青年期で終わってしまいますが脳は少なくとも壮年期までは成長し続けるように思えます。それが「縮む」という不可解な現象はどうして起きるのでしょう?
初期の仮説「ドーパミン仮説」は様々な症状のうち陽性症状、つまりハイな状態や暴れたり叫んだりする症状が、脳を活性化させるドーパミンが増えることで情報伝達が過剰に起きるからではないか、というものです。
しかし陰性症状の説明はつかず、実際にドーパミンの過剰は起きていないことも分かっています。この仮説に基づいて作られた抗精神病薬はドーパミンの分泌を抑えることで症状を一時的に緩和することは出来ているようですが、意欲や行動力の減退が起きますしドーパミン不足による副作用も顕著で根本的な治療効果はありません。
NMDA受容体仮説はうつ病と同じように学習機能に関連するNMDA受容体が何らかの作用で働かなくなるという考え方なのですが、ここで長期に渡る情報過多は起きていませんのでダウンレギュレーションは起きるはずもありません。また、ダウンレギュレーションが半永久的な症状をもたらすことも考えられません。
ドーパミン過剰に見える状態やNMDA受容体の機能低下も「結果」であって、統合失調症は全く異なる原因で起きていると考えるべきでしょう。前頭葉が縮むということは何かがなくなっているということになります。何が消えているのでしょう?
シナプス病
統合失調症は「シナプス病」だと言われています。国立精神神経研究センターのプレスリリースに「統合失調症患者はシナプスが維持できない」とあります。つまり形成されたはずのシナプスが「消えていく」というのです。
生後増え続けていくはずの前頭葉シナプスが「消えていく」ことが萎縮をもたらし機能が低下してしまうことが統合失調症の原因ということなのです。
シナプスが消えていく・・・確かシナプスを消す機能があったはずですね。
シナプスを再編するため不用なシナプスを削除する機能「シナプスの刈込」、この機能がもし過剰に働いたら必要なシナプスを誤って消してしまうのではないでしょうか?
前頭葉におけるシナプスの刈込は情動記憶を追加再編するためのシステムです。パソコンで前頭葉や側頭葉に相当するOS、ソフトウエアのバージョンアップはデータを追加するだけではできませんね。OSをバージョンアップする場合古いOSをアンインストールしてからでないと新しいものをインストールできません。OSが重なっているとエラーが起きてしまうからです。
そこにはアンインストーラー、つまり消しゴムが存在するということです。強力な消しゴムだけが機能して誰も次のプログラムを書かなかったら・・・形を整えるつもりが丸坊主になってしまった・・・それが統合失調症だと思えませんか?
重要なことは消しゴムが何か、それがストレスとどう関係するかということです。
この事に関する驚くべき研究が東大大学院によって発表されています。
シナプスの刈込に鎮静性情報伝達物質として知られるGABAが直接的に関与している・・・つまりGABAがシナプスを過剰に刈込む・・・「GABAが統合失調症を引き起こす」とはけして書いてはありませんが、どう考えてもそう読み取れるようにしか私には思えないのですが・・・。
GABAはストレス時にCRH2系統で過剰分泌されることが分かっています。繋がって来ましたね。ストレス時には通常とは異なるプロセスでシナプスの刈込が起き、その原因がGABAだということなのです。脳の中でも前頭葉にGABA受容体が集中していることがわかっています。その目的がシナプスの刈込である可能性が高いのです。
しかし、GABAは精神安定作用がありストレス後の興奮を鎮めるために作用するはず、それが統合失調症を引き起こすというのはどういうことなのでしょう?
抗不安作用
CRH2系統のストレス後作用に抗うつや抗不安作用があることは前述のとおりです。抗不安作用とは不安がなくなるということですね。これはどういうことでしょうか?
例えば敵に襲われ大きな恐怖を感じたとしましょう。するとまた襲われるのではないかという不安が芽生えます。食糧を手に入れるためには外に出なければなりませんが不安が大きければそれができず飢え死にしてしまいますね。
そのようなことを防ぐために備わっているのが抗不安作用だと考えられます。不安は前頭葉にシナプス構成として記録されます。不安をなくすにはそのシナプスを消去すれば良いのです。襲われた記憶自体は一般記憶として記録されますから消えるわけではありません。前頭葉に記録された恐怖や不安だけが「ある程度」消えるシステムです。
マンチェスター大学の脳神経科学者ペネロペ・ルイス著「眠っているとき、脳では凄いことが起きている」(インターシフト)の中でストレス時にシナプスの刈込が大きくなることが記されてきますから間違いありませんね。
精神は不安で出来ている
道路を渡る時大抵の人は左右を確認しますね。なぜなら「車が来て跳ねられるかもしれない」という不安があるからです。怒りを感じても、相手に酷い言葉をかけたら傷付くかも知れない、あるいはパワハラで訴えられるかも知れない、と考えて言葉を噛み殺したりますね。
言動や行動を制御するのに大切なのは将来を予測する「不安」です。この不安が理性や人格を作り出しています。つまり、精神は「不安の塊」でもあるのです。この不安のシナプスが必要以上に刈込まれ消えてしまったらどうなるでしょう?
今まで慎重に左右を確認して道路を渡っていた人が突然道路に飛びだして跳ねられてしまうことになります。これが統合失調症のメカニズムなのです。
統合失調症はストレスによって直接引き起こされるのではなく「ストレス後作用」によって発症するということになります。この事実は病気の考え方を根本的に変えるばかりか、全ての精神病の解明に繋がっていきます。また、ストレス後作用を利用している薬物治療に大きな疑問が生じることになります。
ちなみにこの統合失調症のメカニズムを私はシナプスの刈込が認知される数年前にほぼ解明していて「感情記憶の喪失」と名付けていました。
シナプスの刈込は研究者の間では広まっていますが精神科医で知識を持つ方はほとんどいません。東大大学院の研究から10年以上経つにもかかわらず研究者の間でもGABAが統合失調症の原因であることはいまだに結論づけられていません。どうしてなのでしょう?その理由はこの一文にあると考えられます。
次回は「前頭葉の機能低下」が何を意味し様々な症状がなぜ生じるか、精神科医が誰も答えられない領域を掘り下げていきましょう。
精神病の正体と精神科医の犯罪9に続く
*この文章は「悪魔の処方箋」を加筆、再構成したものです
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