見出し画像

2024年読んでよかった本ベスト3

こんにちは。ゆきのです。
2024年読んでよかった本ベスト3を紹介させてください。

今年はここ10年の中で1番本を読んだ年になりました。目標の1つであった「気になる本と積読本を全て読む」を今年ついに決行することにしたんです。累計で約50冊ありました。最初は自己啓発本中心でしたが、苦手だった文芸書(小説)にも挑戦してみたら面白い作品にたくさん出会えてホクホクしています。ありがたいことに、あと1ヶ月残して全て読み終えることができました。

そこで、今年読んだ本の中から印象に残った文芸書3冊を紹介させてください。特に活字が苦手だけど本自体は好きだから何か読んで自信をつけたい人、自己啓発本ばかり読むから文芸書に挑戦してみたい人に響くと嬉しいです。過去の私もそうでしたので、大丈夫。

個人メモ(忘れないように)
読書ペースは1時間100ページ。本を読む前に必ずページ数と章を確認して「今日は100ページまで、今日は1章と2章だけ」と決めて読む。


運転者 未来を変える過去からの使者

最初に紹介したいのは『運転者 未来を変える過去からの使者』です。

「Amazonのレビュー数がかなり多いから読んでみたらすごく良かった!とにかく読んでみてよ!」と何気なく貸していただいた本でした。紙の本とkindle本の両方を所持するほど気に入っている作品です。

不運続きで不機嫌な主人公が乗り込んだ不思議なタクシーが舞台で、運転手は淡々と話をしながら「主人公にとって必要な場所」へと導きます。しかし、その場所では劇的な出来事が起きません。大きな事件がないなんてストーリーの展開的に不思議に思うところですが、むしろそれでいいのです。そして、この流れを繰り返していくことになります。

非常にシンプルなストーリーにも関わらずここまで本書の物語に引き込まれたのは、知らず知らずのうちに主人公の境遇や感情に自分自身を重ねていたからでした。そして、運転手の語るエピソードや言葉が主人公を通してもはや自分に向けられているのかとさえ思います。主人公が自身の内面を見つめ直して変化していく様を追っているはずが、読者である私自身の内面も一緒に見つめ直すことになるのでした。

特に印象的だったのは、"運とは何か"というテーマに対するアプローチです。人はつい「何か運がいいと思えるような特別なことが起こってほしい」と期待しがちですが、それが「運が良かった」ことだったと気づけるのは好転した後のことです。不機嫌や不満に支配されている間はせっかくのチャンスや幸運を見逃してしまうこともある、そんな当たり前のようで深い気づきを本書はさりげなく教えてくれていました。

伏線回収もあるという小説としての面白さだけでなく、自己啓発の要素も含んでいるので、いつもは自己啓発本しか読まないけれど小説のジャンルにも手を伸ばしてみたい人にはぜひ読んでみてほしいです。自己啓発本のようなストレートな物言いではなく、主人公と同じ視点で読者自身も「気づかされる」形で受け取れるようになっています。

ちょうど悩んでいた時期に読んだこともあり、本書を読み終えたあとの納得感とスッキリ感は今でも覚えています。もしかしたら、私は運のポイントを少し使って、本書が手元にくるようにしたのかもしれません。

[AD] Amazonアソシエイトリンクです。

成瀬は天下を取りにいく / 成瀬は信じた道をいく

次に紹介するのは、2024年本屋大賞の大賞を受賞した『成瀬は天下を取りにいく』と続編『成瀬は信じた道をいく』です。

今年の本屋大賞の大賞を取った作品も読んでみたいと思い、運良く続編も一緒に本を借りることができました。私はあらすじを一切読まない人なので、表紙だけで「成瀬という女の子が野球部のマネージャーになって野球部員と天下取る話か」と思っていたら全然違いました。西武大津店の閉店が決まったため成瀬あかりと成瀬の幼馴染島崎みゆきが、西武ライオンズのユニフォームを着て夕方のローカル番組「ぐるりんワイド」の中継に映ることを、閉店日まで毎日繰り返し行うところから私たち読者は成瀬あかり史を見守ることになります。

本書には2つの特徴があり、1つ目は"ほとんど成瀬以外の視点”であること。幼馴染島崎から見た成瀬はもちろん、え?誰?っていう人の視点の話もありますが、しっかりと成瀬が関わってきます。他人から見える成瀬は、一見”変わっていることをする人”に見えますが、成瀬を追い続けていると成瀬自身がやりたいことには結果関係なく行動する姿に段々と惚れ惚れしてきます。ここで突然ですが、『迷ったら、ゆずってみるとうまくいく』という本に記されていた内容を紹介させてください。

禅は、ただひたすら無心に取り組む姿ほど美しいものはないと教えています。

『迷ったら、ゆずってみるとうまくいく』枡野俊明 p67

つまり、人からよく見られたい、好かれたいなどというはからいの心を一切もたずに、無心に何かにとり組む姿は魅力的であり、人を惹きつけるのです。

『迷ったら、ゆずってみるとうまくいく』枡野俊明 p68

まさに"禅"を体現しているような女子成瀬。成瀬視点では分からないけれど、成瀬以外の視点だからこそ無心に取り組む成瀬の姿が大変魅力的に映り、またその視点を読者が見ているので、成瀬のファンが日本中に溢れているのではないかと思いました。

そして、2つ目は"成瀬が人にお願いすることはあるものの、強制はしていない"こと。成瀬に関わる人たちが成瀬に巻き込まれていくのは本当ですが、成瀬自身は「じゃ、頼む!よろしく!」と強制的に相手を巻き込むことはせず、むしろお願いされた相手が「しゃあ、仕方ないかあ〜!やるか〜!」と自分から主体的に成瀬あかり史に巻き込まれていきます。お願いした相手が「嫌だ」と言ったら「そうか」と言って成瀬はすぐに引き下がって自分のすべきことに集中するところも、成瀬の魅力に拍車がかかっているような気がします。

あとは面白いくらいに滋賀県に関する固有名詞が登場するので、滋賀出身の人や現滋賀県民が読んだら妙にくすぐったい気持ちになりそうです。

[AD] Amazonアソシエイトリンクです。

赤と青のガウン オックスフォード留学記

最後に紹介するのは、三笠宮彬子女王のオックスフォード留学記『赤と青のガウン』です。

YouTubeのおすすめ欄にたまたま本書に関する特集動画が表示され、興味本位で視聴したらとても面白そうな内容だったので手に取ることにしました。

本書のタイトル通り、彬子女王がオックスフォード大学院で博士号を取ること、すなわち卒業式で赤と青のガウンを羽織ることができるまでの留学記になります。彬子女王のお父様の願いであるオックスフォード大学へのご留学を決意されたところから非常に細かく当時の状況や心情を綴られており、研究や論文に日々追われながら同時並行で留学記をご執筆されていたとは本当に恐れ入りました。これも留学をするための条件であった”留学記を出版すること”というお父様とのお約束があったからこそなのではないかと思います。

一般庶民である私が知る日本のプリンセスといえば、想像の範疇にはなりますが普段は優雅に振る舞われていて、またある時は公務にご献身なさる姿でした。しかし、本書を読み進めていると「彬子女王、本当にタフでお茶目な方だ!」と驚くばかり。頻繁にオックスフォードの寮から飛び出して食事やご友人方と交流するバイタリティなお姿が垣間見えたかと思えば、(ヨーロッパの地理と交通事情には詳しくないため普通のことかもしれませんが)目的地へ移動なさる際に格安航空やバスを利用していたことがあったとのこと、思わず笑ってしまいました。私が空港職員や隣の席に座った一般庶民Aだったなら「え!?」となるところですが、きっと彬子女王なら「日本のプリンセスなんです」とサラリと笑って答えるのでしょう。

もちろん、プリンセスならではの日常や苦悩も記されています。どこへ行くにも必ず側衛がついていること、外交旅券を持っているため海外の空港職員に不審に思われること、エリザベス女王と1対1でアフタヌーンティーをしたこと、トラブルが起こると「彬子女王、留学中に〇〇に遭う」と新聞記事に書かれたらどうしようとお悩みになられること。一般庶民である私からしたら大変新鮮な内容で驚きつつも、プリンセス業も大変だよねと心が痛くなりました。

留学中の小話が目を引くところですが、あくまで留学記の本筋は「西洋人が日本美術をどのようにみていたかを、大英博物館所蔵の日本美術コレクションを中心に明らかにする」ことをテーマとした研究・論文作成です。胃に穴が開きそうになるほど論文に向き合っていた当時の苦労話も交えながら、博士号の論文を完成させるまでの過程で出会った人々へ、そして留学中に心の支えになっていたであろうお父様への感謝が詰まった1冊でした。

[AD] Amazonアソシエイトリンクです。

いいなと思ったら応援しよう!