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「クリエイティビティが発揮できない会社」と言われないために

働く側と会社側のすれ違いはなぜ生まれるのか

私たちの周りにはたくさんのカタカナ言葉(その多くは英語由来)があふれています。本質がきちんと理解されて使われているうちは良いのですが、誰もが口にする流行語のような状態になると、意図や定義があいまいなまま言葉だけが独り歩きするようになり、思わぬ誤解やすれ違いを生む原因となってしまうことがあります。

最近の例で言えば「DX(デジタルトランスフォーメーション)」がそれで、DX人材という触れ込みで入社してみたら、来る日も来る日もWebに掲載するためのテキストや動画の更新をやらされる羽目になった…というような話も漏れ聞こえてきます。

意外に定義が甘い「クリエイティビティ」

もう随分前から、日常的に使われるようになっている「クリエイティビティ」という言葉も、そんな言葉のひとつではないでしょうか。「創造性」「創造力」のちょっとスマートな言い替え、くらいの感覚で、「クリエイティビティを発揮できる職場」といった使われ方が目立って来ました。

いわゆる「カタカナ言葉」の多くは、利用が広るにつれ、その理解や定義が曖昧になり、人によってその言葉に対する思いや解釈が異なったものとなりがちで、殊に仕事や人柄を評する時に「クリエイティビティ」という言葉を使う際には注意が必要です。

本来この言葉から想起されていたのは、芸術的な嗅覚や審美眼のようなもので、それが求められていた職種もデザイナーやプランナーといったものに限られていたのですが、言葉自体が一般化するにつれ、営業などの職種にも適用されるようなケースが増えてきました。

新規事業や、新製品の企画などの領域などでも「クリエイティビティの高い人材」を求める声は当然現場からも上がって来ます。クリエイティビティとは何か、という社内的な議論がないまま、その中身を理解したつもりで採用を決めてしまうと、会社側にとっても、働く側にとっても、あまりいい結果を得ることはできないでしょう。

会社組織である限り、どんな職種であっても、期待される役割と成果があります。求められる「クリエイティビティ」が、そこにどうかかわるのかをきちんと定義していないと「聞いていた話と違う」「採用時に期待したほどの成果が出せてない」といった会社側と働く側のすれ違いが生まれやすくなります。

「まとめる」のではなく「分解する」

しかし、その定義を何の準備もなく、いきなりまとめようとしても、たいていうまくゆきません。一気に文章をまとめようとすると、どうしても美辞麗句の並んだ、どこかで聞いたことのあるようなフレーズになってしまい、求める人材像や期待される成果の読み取れない空疎なものとなってしまうからです。

いったん基本に立ち返って「なぜクリエイティビティが必要なのか」「そのクリエイティビティを何に活かすのか」を冷静に考え、まずは単語やフレーズを断片的にでも列挙してみることをお薦めします。

「新規事業だから、新しいアイデアが欲しい」「マンネリ化している社内の雰囲気を変えて欲しい」といったニーズがあるのだとしたら、そこにはクリエイティビティと言うよりも、

  • リーダーシップ

  • 雰囲気づくり

  • アイデア力

などのキーワードが出て来るでしょうし、「企画力を強化して、ヒット率や利益率を上げて欲しい」ということであれば、

  • ビジネスプランニング

  • 計数管理

  • 交渉力

といったものが挙がってくるはずです。

こうして挙がってきた単語なり、フレーズなりを改めてまとめてみると、おそらく「クリエイティビティ」とはならないのではないでしょうか。言うまでもなく、こうした作業は採用担当者が一人で思い悩むのではなく、雑談レベルででも、現場を積極的に巻き込んだ方が有効であることは言うまでもありません。

「適材適所」とは、そういった議論や検討を経てこそ初めて到達できる境地です。採用がうまくいっていないと感じたら、求める人材の具体像がお座なりの合意形成で終わってしまっていないか、今一度振り返ってみて下さい。