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経営を失敗に導くリーダーの8つの資質

道をはずす要因「ディレイラー」

「ディレイラー」と言えば、自転車好きな方にはお馴染の言葉ですが、自転車で変速器を指す「ディレイラー」はフランス語由来でderailleurと綴ります。人事用語の「ディレイラー」はderailer。レールを表すrailにdeとerがくっついたもので、直訳すると「レールからはずれるもの(要因)」となります。

個人個人の性格や気質は、仕事においても重視されなければならない、というお話は前にも触れていますが、企業の代表や役員といった、いわば経営幹部に関とって、このことはより重要かつ深刻です。

経営幹部として、失敗する要因となる個人特性をエクゼクティブ・ディレイラー(executive derailer)と呼びます。日本ではネット検索してもそれほどの件数は挙がりませんが、米国では既によく知られた概念で、これに特化したコンサルティングビジネスも盛んです。

8つのエグゼクティブ・ディレイラー

「過ぎたるは及ばざるがごとし」という諺にもあるように、数値的にリーダー適性が高いと認められても、行き過ぎるとかえってよくないこともあります。

例えば、人の機微や関心毎に通じて人をまとめることが上手い人(人たらし)は行き過ぎると政治的になり、派閥を作ったり、周りをお気に入りで固めたりします。完璧主義のリーダーはしっかりと細部に注意を払い、経営効率をあげたり業績を改善したりするのですが、マイクロマネジメントとなり、部下は全てリーダーにお伺いを立てることで自立性を失い、後継者も育たず、そのリーダーが変わると、また業績が低下してしまうことが起こります。

私たちが独自に規定しているエグゼクティブ・ディレイラーは以下の8つです。

  1. 権威主義的 Arrogant
    自信家で、周りの意見やアドバイス、アイデアを聞かず、決して受け入れない。

  2. 自己防衛的 Self Defensive
    自信のなさと懐疑性から、他の意見を自己への批判と受け止めて防衛する。言い訳が多かったり、徹底した否定等の行動に出る。

  3. 政治的 Attention Seeking
    自分を目立たせたいがために、自己宣伝をしたり、事実に基づかない噂を流したりする。周りをお気に入りで固めるので、組織に政治的要素を蔓延させる。

  4. 低自立性 Approval Dependent
    上層部からほめられることを強く望み、自立的に意思決定することをためらう。

  5. 安全志向 Risk Averse
    将来の悪い結果を想定し過ぎ、リスクを避けたがるので、今までに試したことのないことを極端に嫌う。

  6. 低感応性 Imperceptive
    他人の気持ちや考えに対する興味がなく、それゆえに個人個人のモチベーションや個性を把握できない。

  7. 感情的 Volatile
    自らの感情をコントロールできない。機嫌が悪い状態が続いたり、怒り易かったりする。

  8. 完璧主義 Perfectionistic
    統制をしようという意図が強く、自分の水準を他者に要求する。マイクロマネジメント。

このnoteの記事に長らくお付き合い頂いている読者の方はうすうすお気付きかと思いますが、こうした会社経営を危機に導くリスクの高い経営幹部のパーソナリティは、キャリパープロファイルの21の指標によって、統計学的・心理学的に極めて正確に検出することができます。

危機は回避することができる

例えば「新奇・リスク志向」と「復元力」が低く、逆に「慎重性」が高いとその経営幹部は間違いなく「安全志向」であり、業績低迷や新規事業開発といった局面で、妨げとなる可能性が極めて高いのです。対策のために採用・登用した現場人材との折り合いも当然悪く、せっかくの逸材を離反・流出させてしまうようなことも起こり得ます。

このような場合、小手先の人事異動や組織変更では変革は難しいでしょう。大事なのは本人に変わってもらうことなのです。誰かに「代わる」のではなく、本人が「変わる」─── そうした選択をした企業に対して、私たちキャリパーは経営状況と、ご本人のパーソナリティについてまずはご理解を頂き、コーチングという形でご支援を行っています。

歴史小説や古典を紐解くと、この「エグゼクティブ・ディレイラー」に符合するリーダーや支配者に数多く出会うことができます。

たとえば、たびたび映画やお芝居になっている『忠臣蔵』に登場する赤穂藩の浅野内匠頭は、人望ある藩主として描かれていますが、吉良上野介に浴びせられた罵詈雑言に耐え切れず、刃傷沙汰に及んだことで、浅野は切腹、お家は断絶という結末をもたらします。当然、多くの家臣とその家族は露頭に迷うことになるのですが、現代に置き換えてみれば、家臣は社員や株主などのステイクホルダーです。社長や役員がキれて会社が倒産、などということなれば、彼らにとって、こんなにいたたまれない話はありません。

経営幹部の難点について、本人以外が行動を起こすのはもちろん簡単な話ではありません。が、対策を先延ばしにすると、いつ『忠臣蔵』の赤穂藩のようなことが起こらないとも限りません。勇気を持って「変える」決断をすることも時には必要なのではないでしょうか。