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「自分がこんなにおしゃべりだったとは...」

ワンマンタイプの創業経営者は、すべてを自分で取り仕切ってしまおうとするせいか、なかなか後継者を育てられないことがあります。私たちキャリパーに「ベンチマーキング」を依頼してきたある建設会社の場合もまさにその典型でした。

ベンチマーキングとは...
対象となる会社なり、組織なりに属するメンバー全員にキャリパープロファイルを受検してもらい、その結果に応じて、最適な人材配置を提言するプログラムです。キャリパージャパンでは1999年の創業以来、規模の大小を問わずありとあらゆる業種・業態のベンチマーキングを請け負っています。

オーナー経営者が病気で倒れ、4年もの間長期療養していたために業績は低迷、社員も入れ替わってしまい、彼が現場に復帰した時にはすっかり様子がわからなくなっていました。そこでキャリパープロファイルで経営幹部を含めた社員80名のデータを取り、ベンチマーキングを行って、人事配置を見直すことにしたのです。

トップが入院している間は、ナンバー2の専務ですら、毎日のように病院に出向いて決済をあおぐような体質でしたから、4年もの間、明確な経営ビジョンが打ち立てられることもなく、問題は山積みでした。

見出された数々の課題のうち、最も興味深かったのは営業スタッフです。

営業スタッフの補充はもっぱら経験者頼みで、ただ「経験があった」という応募者の自己申告を鵜呑みにするような採用が行われていました。前の会社で成果が出せなかったとしても、採用面接で正直にそう申告する人はそう多くありません。結果として、この会社は「経験」を重視するあまり、そもそも営業向きでない人材ばかりを採用していたのです。

採用や人員配置がうまく行っていない会社には往々にして起こることですが、営業に適した「潜在行動力」を持つ人材が全然別の部門にかたまっていたりすることがあります。この会社の場合、それは「設計部門」でした。キャリパープロファイルの結果から、間違いなく営業適性の高い人材が、それも複数人「設計部門」にいることが判明したのです。

そこで、その会社ではそれまでには決してなかったことですが、試験的に設計部門のスタッフを顧客を訪問する営業スタッフに付き添わせることにしたところ、設計担当者たちは水を得た魚のように張り切りはじめ、顧客の要望をじっくり聞いて、要望にぴたりとはまるアイデアを次々提案し始めたのです。

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彼らは一様に主張力があり、エゴ・ドライブ(影響欲)にも恵まれていて、エンパシー(感応力)に不足のない「潜在行動力」の持ち主でしたので、この結果は至極当然でした。この後、この会社はキャリパープロファイルを活用した人事戦略の全面的な見直しにより、設計スタッフを営業の前面に押し出すという、これまで考えてみもしなかった方法によって、売上を毎年30~40%も伸ばすことに成功しています。

自分たちの提言によって、その会社が生まれ変わり、業績を伸ばすことができたなら、これにまさる幸せはありませんが、私たちが何よりも嬉しかったのは、一日中、設計室に閉じこもって、殆どパターン化された図面ばかり引かされていた設計スタッフが、毎日のように顧客の元に出向いて、営業の資質を開花させ、営業スタッフと一緒になっていきいきと仕事に取り組んでいる姿を目にすることができたことです。

これまでは営業スタッフの注文で設計していたので、お客様の顔を見て仕事をするようなことは全くありませんでした。それが、そこのご家族全員と家族ぐるみで仕事ができるようになったのですから、設計家冥利に尽きます。会社勤めをしながらフリーの設計家と同じように自分の作品で勝負できるのですから、こんなに嬉しいことはありません。お客様に喜んでいただければ、それだけこちらにも張り合いが生まれてきます。

と入社7年目の若手設計士は熱く語ってくれたものです。「自分がこんなにおしゃべりだったとは、自分でも意外に思っているんですよ」と言う通り、人は案外、自分の「潜在行動力」には気付いていないものなのです。