「モチベーション」と「やる気」の根本的な差
「やる気」という言葉に中身はない
「やる気出せよ」とか、「やる気が出ました」とか、「やる気」という言葉は日常的によく使われます。この言葉はしばしば「モチベーション」という言葉に置き換えられてしまうことがあるのですが、キャリパーの解釈はちょっと違っています。前にお伝えした「内的動機」が、そのモチベーションに相当する訳ですが、なぜ単に「動機」と言わず、「内的動機」と言うのでしょうか。
「内的動機」とはその人の行動を駆り立てる(場合によっては押し留める)心的傾向のことを言います。心の奥底に脈々と流れているそれに本人も気付いていないことも多く「これが私の内的動機なのだ」と認識できている人は、実はごくわずかなのです。
「やる気が出る」状態になるのは、いわばその内的動機が刺激された結果です。「やる気が出た」と言っている人は「自分の内的動機が刺激された」と言っているようなもので、着目すべきはこの人が何によって刺激されたのか、ということです。
「もう完全にやる気失せてたんだけどさ、課長の一言で、またやる気出たんだよな。」
「へぇ、何て言われたの?」
ほとんどの人が「何を言われたんだろう?」というところに興味を持つはずです。そして「うん、そりゃやる気出るね」と思うこともあれば、「ふーん、そんなんでやる気出るんだ」と思うこともあるでしょう。「内的動機」は人によって千差万別ですから、共感できたり、できなかったりするのはむしろ当然なのです。
「ありがとう」が好きな人とそうでもない人
キャリパーではその人の「内的動機」を特定するためにさまざまな指標を定義していますが、たとえばその中のひとつに「感謝欲」というのがあります。
サービス精神旺盛で、誰に対しても親切、他人のために何かをするのを好む人は一様にこの「感謝欲」の数値が高くなります。一見、いいことずくめのようにも見えますが、欠点もあります。懸命に尽くした結果、誰から何の反応も得られないとき、「感謝欲」の数値が高い人は大きな失望感・挫折感に囚われてしまうのです。
世の中には感謝されなくても、人知れず黙々と続けなければならないような仕事はたくさんありますし、職場にも「ありがとう」を言わない人もたくさんいます。「感謝欲」の数値の高い人をこうした仕事や職場に留めておくと、本来のパフォーマンスを発揮できないどころか、ストレスに日々晒され続け、最悪の場合離職・退社ということにもなりかねません。
ここでこんなことを考える方もいると思います。
別にわざわざ「ありがとう」と言われなくても、感謝されてるかどうかなんて、普通なら感じ取れるでしょう?子どもじゃあるまいし。
まったくもってその通りです。
「感謝欲」の数値が高くても、他人の思いを感じ取ることができれば、そんなストレスに晒されずに済むかもしれません。しかし、これもまた「感応力」(エンパシー)という、内的動機を規定する指標のひとつなのです。言葉に出さずとも、相手の気持ちを察することができる/できないは、人によって相当バラつきがあります。よく言う「KYな人」(空気が読めない人)とは、まさに「感応力」が低い人のことを指しています。
逆に「感謝欲」も「感応力」も低い人は、非常に冷徹で付き合いにくく、仕事を頼んでも成果を出せないのではないか、と言われそうですが、そんなことはありません。「感謝欲」の高さは、実は相手から良く思われたいという気持ちの裏返しなのです。「感謝欲」も「感応力」もともに低ければ、情に流されたりすることもなく、通常であれば断りにくかったり、伝えにくかったすることにも迷いがありません。数値や、ルールを厳格に守らねばならないような仕事や、タフな交渉が日々続くような仕事にはむしろ向いているとすら言えるのです。
会社の人事においてパーソナリティを重視した方がいい、と言うより重視しなければならないとキャリパーが主張するのにはそんな理由があるのです。
数値化できる6つの心的傾向
キャリパーは通俗的な人間性ではなく、あくまで、仕事に向かったときに、その人が何によって動機づけられ、どのような行動を示す傾向があるかを心理学的・統計学的に見ていて、これを客観的に測定するために「キャリパープロファイル」と呼ばれるテストを実施しています。職種によっても異なりますが、その人固有の「潜在行動力」を判断する上で次の6つの心的傾向を「測定」しています。
●リーダーシップ
●説得力
●サービスとコンサルティング
●対人関係
●問題解決と意思決定
●自己管理と時間管理
この心的傾向を評価するために、先に例として挙げた「感謝欲」や「感応力」といった18の指標を数値化し、そのテストの結果で、その人の持って生まれた潜在的な能力を知り、人材開発やキャリアデザインに役立て、その人にふさわしいチーム編成や職場環境を実現することができるのです。
18の指標については、追って少しずつ説明していくことにしましょう。