こだわりを一度リセットしてみる勇気
責任の重い「人材評価」という仕事
私たちキャリパーは客観的なデータを用いた科学的手法で人材評価を行う会社です。本社はアメリカのニュージャージー州にあり、世界13か国に拠点を持つグローバル企業です。
日本ではかれこれ20年以上もビジネスをしてるので、お客様は規模の大小・業種・業態を問わず、実に様々で、前回の記事のように、スポーツ選手やスポーツチームの人材評価を行うこともあります。
科学的・数理的根拠があってのこととは言え、生身の人間についてその適性を断じる訳ですから、責任も重大ですが、とてもセンシティブな仕事でもあります。特に企業のトップやマネジメント層が対象となる場合、私たちの進言如何で、会社が停滞したり、悪い場合には後戻りしたりする可能性すらあるからです。間違ったリーダーを採用すると、業績や組織に悪い影響が出て、しばらくするとまたリーダーを変えなくてはならない事になるのです。
どうしても「慣性」が改まらない組織
変革を牽引するトップを外部から雇い入れる時、あるいは新規事業部門を託すことができるリーダーを選抜する時、私たちは極めて高い確率で、その適・不適を判じることができます。過去の記事でも何度か触れていますが、過去数十年にわたる全世界のキャリパープロファイルに蓄積された600万件のデータから、リーダーに限らず、あらゆる業態・職位の適性を客観的なデータをもとに判断しているからです。
人が変われば、組織は変わり、組織が変われば、人も変わる ── この定説はポジティブなことばかりでなく、ネガティブなことも引き出します。
組織変革や新規事業の成否は、いかにそれまでの評価方法や枠組みに囚われることなく人材を抜擢・登用することができるかどうかにかかっているのですが、「過去にこんな人を取ったことはない」「うちの社風には合わない」といった、これまで通りの感覚・経験則で、せっかくの人材を拒んでしまうお客様も少なくありません。「人が変われば組織も変わる」ことを無意識のうちに拒んでしまっていたり、あるいは「こんな人材では、馴染めるはずがない」と頭から決め込んでいるのです。
逆に、採用すべき人物像について、お客様が100%合意していても、その人物像にフィットする人材が現れないこともあります。そんな時は、それまでの履歴書上の経験やスキルセットがある人を妥協して採用してしまうのですが、私たちが予見していた通りの行動や弱点が実際に発現して、業績改善も進まず、1-2年後、結局採用をやり直すことになったりして、忸怩たる思いにかられることもしばしばです。
経験則や成功体験には賞味期限がある
これまでとは異なる印象や才覚の人材を採用するのは、ある意味誰にとっても冒険です。しかし、私たちキャリパーがリーダー適性が高いと判断する人材は独裁者や暴君ではなく、周囲が何を考えているかをしっかり理解できる感応力(エンパシー)を持ち、かつ自分に足りない資質は自ら補正したり、その道に明るい者の意見を聞いたりして、判断の誤りを未然に防ぐことができるような能力の持ち主なのです。
イソップの寓話に、王を欲しがった蛙たちが、神様から蛇を与えられ、最後は皆食われてしまうというのがありますが、多くの人がこの結末と似た状況を想像してしまうのでしょう。しかし、この寓話の意図は蛙たちが王を欲しがった点ではなく、神様が最初に与えた王(木片)を拒否した点に込められているのではないかと思います。
人は誰しも、自分で見聞きしたこと、経験したことに頼って様々な判断を下しています。一度そこから離れろと言われても、その勇気を持つことは簡単ではありません。しかし、すべからく組織とは、ひとつでも多くの幸せを生産するべきもの、という視点に立つなら、いつも自らの考えのみを頼みとするのではなく、時には冷静に第三者の提言に耳を傾けてもよいのではないでしょうか。
私たちキャリパーには「恐れ」を「希望」に、「過去の成功」を「未来の成功」に変える力があります。「人材」というイシューを通して、成長や変革のお手伝いができるものと自負しています。