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「企画力の高い人材」採用で見過ごしがちなポイント

「企画力」の有無を客観的に評価できるのか?

子ども向けのキャラクター開発などを主軸とするあるメーカーから商品企画部門に属するスタッフ全員の「公平で客観的な評価」を依頼されたことがあります。私たちの間では「ベンチマーキング」と呼ばれる仕事です。

ベンチマーキングとは...
対象となる会社なり、組織なりに属するメンバー全員にキャリパープロファイルを受検してもらい、その結果に応じて、最適な人材配置を提言するプログラムです。キャリパージャパンでは1999年の創業以来、規模の大小を問わずありとあらゆる業種・業態のベンチマーキングを請け負っています。

一口に「企画力」と言っても、その道の専門家ですら、その優劣を公平に判断するのは難しく、企画の善し悪しに果たして「客観性」が相容れるものかどうか...と悩んだ末、そのメーカーは、私たちにその見極めを依頼して来たという訳です。

その会社は、採用時に応募者の出身校や経歴、これまでの作品や成果物を提出してもらうことでどうにか採用を決めて来たのですが、入社後、どうしても能力のバラつきが出てしまうと言うのです。ある程度一定の水準で選抜しているはずなのに、いざ仕事を始めてみると、優秀な人とそうでない人の開きがあまりにも大きい、という悩みを抱えていました。

そこで私たちは、対象となるメンバー全員のキャリパープロファイルを実施し、現時点で優れた業績を挙げているトップパフォーマーのグループと、あまり業績のパッとしないボトムパフォーマーのグループに分けて、その「潜在行動力」がどのように異なっているのか実態を把握することにしました。

全員が同じように商品企画を自分の職業としている人たちですから、基本的には両者の「潜在行動力」は似通っているはずです。実際[リーダーシップ]や[対人関係]、[問題解決/意思決定]いずれの項においても、評価軸はほとんど重なりあっており、一見、顕著な差異はないようにも見受けられます。

企画力パフォーマー比較グラフ

組織やチームで仕事をするのに大切なこと

しかし、私たちの目から見るとキャリパープロファイルに表れた両者の「潜在行動力」の違いは歴然としています。

決定的に異なるのは、主張力とコミュニケーション能力の部分です。

トップパフォーマーのグループは主張力と新奇・リスク志向が高いので、自分のアイデアを周囲に説明して説得しようとします。そのためのコミュニケーション能力にも優れていますので、ボトムパフォーマーのグループに比べてアイデアを商品として実現できる可能性はずっと高くなるのです。しかも切迫性に富み、ルールや規則を大切にしますので、会社の定めたプロセスを尊重して仕事に取り組むことができ、企画が途中で破綻する確率はぐっと低くなります。

これに比べるとボトムパフォーマーのグループは、積極性は高いので自己主張は激しくするのですが、主張力が低いのでどうしても説得力が不足しがちになります。また、周囲の理解と応援を取り付けるコミュニケーション能力にかけても低めなので、周囲からは独りよがりに見られることもあります。したがって、折角のアイデアも仕事として実を結ぶ確率はかなり低くなるのです。

これは、必ずしもボトムパフォーマーのグループに企画力がない、ということを意味しているわけではありません。作品だけを見せられた場合、中にはトップパフォーマーより優れたものが数多くある可能性もあります。

しかし、ボトムパフォーマーたちの「潜在行動力」を見ると、何が何でも自分たちの企画を商品として完成させるぞ!という強い意欲に欠ける傾向があるのです。企画が商品化というゴールにたどり着くには、期限を守る、反対する者を説得する、コストを節減する、といった様々な障害をクリアしなければなりませんが、ボトムパフォーマーたちにはこの力が不足していたのです。

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「ビジネスセンス」というもうひとつの感性

トップパフォーマーたちは自分たちの企画を「作品」とは考えず、あくまで「商品」と捉え、営業や法務など他部門と協調しながら仕事を進めていくことができます。

感性の高さを求めると、どうしても管理の枠組みからはみ出てしまう傾向があり、この会社に限らず、クリエイティブ部門を抱えている企業は一様に似たような悩みを抱えています。ひと昔前までは、むしろ枠からはみ出ることが美徳、とするような風潮すらありましたが、ビジネスセンスの欠けたクリエイティビティは結局、成果を挙げることができないということをこの事例は示しています。

「企画力を判断するのは難しい」とお考えの人事担当者はまず企画の巧拙よりも、パフォーマンスを出せるか否かという視点で見極めを行うようにしてみては如何でしょうか。