すばらしいワインには「バランス」と「複雑さ」も大事 !? 〜 BLICのススメ 〜
「何も言わずにワインをテーストすることはできる。しかし、どうして何も語らずに意思の疎通をはかることができるだろうか!」
(ワインテースティング入門 M・ブロードベント 著より)
先日、ロバート パーカーの言葉を用いて、すばらしいワインとは「低収量」と「熟したブドウ」で決まるかもしれないと書きました。
それらは、各々、”凝縮感”と”熟した果実味”を生み出すと考えられます。
しかし、それ以外に重要な要素はないのでしょうか。
忘れてはならないと考えられるのは、「バランス」と「複雑さ」かもしれません。
ワインを評価する際に、“BLIC”などの造語がつかわれることがありますが、まさにこのBとCがそれらを示しています (B: Balance; C: Complexity)。
「バランス」は、食べ物に限らずおそらく何事にも大切なのだと思いますが、すばらしいワインにもあるべきものと思います。
なんと言っても最初に浮かぶのは、熟した果実味と対になる”酸味”です。
とても不思議なもので、酸味が、熟した果実味をさらに盛り立ててくれます。単に甘いだけのワインとは大きなちがいがあると思います。デザートなどでも、単に甘いだけのものは、物足りなさ、つまならさを感じることがありますが、ワインでも同じことがいえるのではないでしょうか。
そして、おそらくこれにタンニンやオーク香も加わったバランスが基本的に問われる要素なのだと思います。
「複雑さ」とは、すなわち、いろいろな香りや風味があることと考えます。
あらゆる食べ物にいえると思うのですが、複雑さはすばらしいワインにもとても大事だと思います。
複雑さのないものはおもしろさにかけるように思います。一方で、複雑さのあるものは、テイストが何層にもなっている奥深さを感じます。
たとえばカルトワインに関していえば、ラベルはとってもシンプルなのに、中身は複雑。このギャップに感動します。
ある程度の複雑さは、「熟したブドウ」からも生じるとは思うのですが、醸造・熟成テクニックなどもきいてくるのだと思います。
このように、「バランス」と「複雑さ」は各々異なるものではありますが、おもしろさや奥深さの有無という共通点があると思います。
一般にワインのテイスティングでは、花、果物、草、香辛料、酵母類、乳製品、オーク、木の実、動物、鉱物という表現にとどまることなく、それらの中でさらにどんな種類が含まれているのかを特定することに集中する傾向があると思います。たとえば、赤スグリ、黒スグリ、クランベリー、ラズベリー、レッドチェリー、ブラックチェリー、ブラックベリー…ビスケット、パン、トースト….アーモンド、ココナッツ、ヘーゼルナッツ…。
テイストの表現で、単に「おいしい」だけですと、”どのようにおいしいのか”はわかりません。ですので、それを表現することは大事だと思うのですが、種類の特定はほどほどにして (ヒトには限界があるし回答がないので)、それよりはむしろ、「バランス」や「複雑さ」がどうなのかといったコメントのほうが大事かもしれないと思います。
ワインが難しいと思われている背景には、こういったこともあるのではないでしょうか。
ちなみに、先のBLICの”L”はLength、”I”はIntensityで、Lengthは余韻 (の長さ) を、Intensityは (味の) 強さを示します。いずれもとても大事と思います。これらは、まさに「低収量」と「熟したブドウ」でカバーされると考えました。
このように、ワインをたのしむ際に、「低収量」と「熟したブドウ」に加え、「バランス」と「複雑さ」を気にしてのんでみることはいかがでしょうか。
“BLIC ブリック”という造語だけ覚えることで、今後たのしみがひとつ増えればこの上ないです!
(Photo by Austin Neill on Unsplash)