#DNトーク大阪「令和新時代のビジネス戦略ガイド」参加レポート(後編)
セキさん/Andyさん/上司ニシグチさんの3人によるトークイベント。昭和~平成編と話は進み、いよいよ「令和新時代のビジネス戦略ガイド」のメインコンテンツともいえる令和編に入っていきます。
※昭和~平成編については、「前編」をお読みください。
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おまちかね「令和・新時代のクリエイティブ戦略」
東京会場で一番盛り上がったテーマだというコチラから
・お金と真摯に向き合おう①
セキさん:たくさん稼ぐという意味ではないが、「お金」は大切にしている。経営者と仕事していることもあり値段設定を相談されることが多い。そんなとき「安売りは止めましょう」を開口一番に言う。スキルがない、実績がないなどの後ろ向きな理由で安くするのは絶対にやめた方がよい。「安い」ことが「売り」になってしまう。安いことを理由にすると、クォリティが求められなくなる(いい仕事の声が掛からない)。
ニシグチさん:(値付けは)逆算して考えている。「幾らぐらいほしい」というのがあって、それを満たすのが提案数なのか、クォリティなのか、また別のものなのか……を考えている。あとは、思いきって人に聞いている。教えてくれる人は多くはないけど、同じレベルや異なるレベルの人が幾らで仕事しているかを知っておくべき。
Andyさん:若手デザイナーから「相場は幾らですか?」とよく聞かれる。相場を知ることは大事だけど、相場で売ることは自分の価値を捨てることになる。
「よぉ~く考えよう、お金は大事だよぉ~」は、何の歌だったでしょうか。ただ、ここで言われている「お金」はそのままの意味だけではなくて、「市場価値」やクライアントからの「信用価値」を意識しよう、ってことかと。
・お金と真摯に向き合おう②
セキさん:はじめて仕事をするときは、可能なかぎり細かく項目を明記する。例えば名刺デザインの場合であれば、見積もり項目をデザイン一式とはしない。コンセプト/打ち合わせ/デザイン/印刷用データ変換/色校正/印刷費、といったように。そうすれば、なぜここまでの費用が掛かるのかに納得してもらえやすくなる。プロセスを公開することは重要。
Andyさん:細かな見積もり出しには賛成で、項目は細かく示すようにしている。自分のなかでは項目ごとに値段設定をしていて聞かれたら全て答えられるが、見積もり書には記載していない。自分の価値を知っている、ということが一番大事。
ニシグチさん:名刺デザインであれば実績を例に、実際の作業項目ごとに金額を示して総予算を伝えている。それでスムーズに進んでいる。実績の数は多くなくても問題ない、一つだけでも大丈夫。
画像提供:@B4ka1sakuさん
仕事をクリエイターさんに依頼している身としては、手の内が分かるいいことが聞けましたw というのは半分冗談半分本気。実際、内訳明細のついた見積もりを出してもらえると安心できるというか、信頼できる印象を持っています。一式の見積もりだと、作業の項目や範囲、条件といったことが見えないので、依頼したことと受注されたことの間に、ズレが出る可能性がないともいえません。私がクライアントに見積もり出しするときも、同じように明細を示してリスクヘッジを行っています。
続いてのテーマは、ニシグチさんの希望によるものだそうです。
・できる仕事仲間の見つけ方
ニシグチさん:なぜこのテーマを設定したか。最近よく聞かれることに「誰かいいデザイナー(ライター、カメラマン)いませんか?」がある。雑談でなく、わりと本気の困りごととして相談される。
セキさん:2年前ぐらいから感じていた。実はクリエイター仲間どころか友達もいなかったw SNSで面白そうな人を探してニシグチさんを見つけて、会いたいと思って「クリエイター向けのイベント」に参加してみた。ただ、イベントに参加して知り合いを増やそうとは思っていなかった。ニシグチさんに会いたい一心だったw そこから色々と繋がりができ、いまはオンライン・コミュニティとリアルな場の両方で、強みを持った人と出会えている。
Andyさん:勤めている会社で東京オフィスの代表をしていて、スタッフを増やそうと2年ほど前は考えていたが、採用も含めてコストが重すぎるので社員の採用はやめた。いまはオンライン・コミュニティで知り合った信頼できる人たちに仕事をガンガン動かしてもらっている。実際、本当に安心して任せられる。
ニシグチさん:オンライン・コミュニティはクリエイティブのクォリティだけでなく、やり取りの早さや内容なども見て、その人を判断できるというメリットがある。ポイントは旗を立てた人に好意を持って集まってくれている、という点。信用してくれていると思える方に依頼できる。そのルートがオンラインというだけで、リアルな場であっても全然構わない。
Andyさん:そう、スキルだけじゃなく人柄は重要。コミュニティに入って無理することなく動いた結果に、信頼や仕事が発生してくる。SNSもオンライン・コミュニティも、漠然とやるだけ/入っただけではダメ。
以前のセキさんに負けず劣らず、私に友達がいないことはどうでもよくて、はじめて入ったオンライン・コミュニティでは、バリバリ活躍されている人を眺めては疲れ~自己嫌悪するということに毎月5000円を払っていたことも(2カ月で退会しましたが、そのコミュニティ自体はいまも好きです)。
オンライン・コミュニティはあくまでも「場」でしかないので、どういう「場」にする/できるかは、結局のところ自分次第という話だと思います。
・新時代のクリエイター営業術
セキさん:営業は基本的にやりたくない。だから「いかに営業しなくていい状態をつくるか」を考えまくった。①そこで、リピーターを増やすことを主軸に決めた → ②なので、単発の仕事は受けないというスタンスを明確にした → ③だから、事業の成長を支援するために中長期で支援したいことを、相手のメリットとともに伝えるようにした → ④同時に、敬語も使わない/スーツも着ない、といったスタンスまでを伝えきることにした。これによって相性が合う人を最初に絞ってしまう。その代わりリピートされるために「結果(お客さんの成果)」を出すことにこだわる。それで「(価値が見えにくい)広報費」が「業績への投資」に変わる、リピーターになる。
宣伝が下手な企業が多い。そういう会社を見つけて、提案(初回は無料!)を仕掛けていく。一つ目の制作物を納品したあとに、クライアントにどれぐらい(幾らぐらい)の価値を感じたかを聞いている。これで相手の本気度も分かる。
ニシグチさん:オンラインとオフラインの2軸。オンラインだとTwitter経由で依頼がくる。オフラインは、実際に会って話をするということを大事にしている。今年は年間12回のイベント登壇を目標にしていて、11月で達成できそう。そういった場に来てくれている方とのつながりから仕事が生まれることも多い。どちらかに偏るのはよくない。実際に会うことは、やっぱり大切なんじゃないか。人間だものw
Andyさん:オンラインに偏っていると、例えばSEOが落ちたときにどうする?みたいな問題があるので、バランスが大事。SNS経由で仕事の依頼がきても、すぐには反応しない。断片的な情報しか知らない相手が、自分に何を求めているのか分からない。対面したときは(言葉は選ぶが)率直に思ったことを伝えるし、その場で改善提案をする。その後、連絡をくれる人は多くはないが、くれた人には意図が深く刺さっていて、その後の提案がスムーズに進むのでメリットしかない。
ニシグチさん:いま、webサイトをつくろうと思っている。きっかけは、くわたぽてとさん。ぽてとさんは、自身で開催した名刺セミナーの情報を、しっかり自分のwebサイトで紹介していて(情報のストック)、それを見た某大手企業からセミナーの依頼があったことを聞いた。自分はイベント関連はツィッターだけで発信していたので、流れてしまっている(機会損失している)ということが分かった。
画像提供:@B4ka1sakuさん
3人とも「自分の価値」で勝負するためにどうすればいいかを、考えて、動いて、続けている。ここまで徹底することをしないで「上手くいかない」と、やり方ばかり模索してはいないだろうか。そっと胸に手をあてる、私。
・新時代の自分の武器の見つけ方
ニシグチさん:コミュニティにいる若い子を見ていても、技術では追いつけないことを痛感している。自分が持っていて彼らにないのは「経験」や「人脈」なので、(広義の)ディレクションで勝負していくことを考えている。
セキさん:武器の見つけ方に関していうと、いろいろな人と会って話をして「自分の強みを教えてもらう」という方法もある。自分が力を入れていないこと/気負わずできていることが、効果を発揮する武器である可能性がある。それは自分では気づけないことが多いので、他人に見つけてもらうという手は、意外に有効。
Andyさん:スキル特化で戦える人はごく一部になる。ただ、武器=強みを考えるときに「好き」と「得意」は分けた方がいい。得意なことは、例えば長く続けていること。これは自分で気づいていないことが多いので、セキさんが言ったように気づかせてもらうことも大事。あと、多くの人が好きを伸ばそうとしがち。ただ、世の中に猛者は本当にたくさんいる。「好きなこと」に固執するのではなく「得意なことと掛け算にする」というのがいい。ニシグチさんもデザインだけで戦っていない。デザインとアイデアと戦略の掛け算……だから強い。得意を見つけるためには、いろいろやるしかない。
自分ができることから、たとえ技術はずば抜けていなかったとしても、何かを掛け合わせることで自分だけの武器はできる。さとなおさんや藤原和博さん、西野亮廣さんが言われている「 1/100をいくつか作るといいよ 」を思い出しました。ただ、何の1/100になるのか、何と何を掛け算すると強い武器になるのか、にはマーケット感覚も必要だなとも。そして「得意」なことは「他人に聞く」という、なんちゃって水見式で知るべし……は、目から鱗。
「DN」が意味していたもの
最後にセキさんから締めの挨拶。ここで「DN」に込めた真意が明らかに。
「DN祭」、ふつうに考えればDSF(ディレラボ・サマー・フェス)となるところ、あえてDN祭(ディレラボ・夏・祭り)としていた。それは「DN」という文字をどうしても使いたかったから。めちゃめちゃ大事にしている思いが僕らにはあった。
「DN」……これは「打倒(D)ニシグチ(N)」なんです。
ニシグチさんはいま、関西クリエイター界で突出して活躍されている一人。そんなニシグチさんのまわりで影響力にあやかるのではなく、「個で戦っていくことが大事な時代」の目標にすると同時に、切磋琢磨できる存在に自分たちもすぐに追いつく決意表明として宣言したもの、それが「DN」。
というわけで、驚きの発言で幕を閉じたトークイベントを、記憶を辿りよせて思い出せる限り書いてみました。車座になっての質疑応答を含め、ここに書ききれない(教えたくない)ことが、まだまだ手元のメモと頭の中に残っていますが、これは参加した方だけの特典ということで。
画像提供:@B4ka1sakuさん
イベントに参加しての感想
笑いと凄みの高低差がたまらないニシグチさん(ホスピタリティの鬼......いや、虎という印象が強まりました)、頭の回転速度を言葉が追い越していくAndyさん(例えを用いたロジカルなトークで、とにかく分かりやすい)、冷静と情熱の間を反復横跳びするセキさん(クールな素振りに隠し切れない人間味にギャップ萌え)。
登壇された3人が、多くの場面で共通のことを語ってらしたのですが、その切り口と切れ味の違いが個性的で本当に面白かった、楽しかった。
貴重なお話ありがとうございました(セミナーの質疑応答タイム風に)!
長々とお付き合いをいただき、ありがとうございました。
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