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『BLEACH』とストーリー漫画の二類型

こんにちは、Cahierです。社会人になって3日なのですが、めちゃめちゃ忙しいです。例年通りの研修を、時短勤務で終わらせようとしているようなので、とにかく研修の密度がすごいことになっています。残業がない(定時で強制的に帰らせられる)のはありがたいのですが、入社3日目にして報告書がたまりにたまっています。仕事の持ち帰りも怒られるのでおとなしくnoteを書きます。

今日はタイトルの通り『BLEACH』の話をします。実は、4月12日まで『BLEACH』48巻分が無料で読めちゃうんですよね。今まで読んだことなかったんですけど、この機に無料分は読みました。結論から言うと、かなり面白かったので、まだ読んでない人は無料のうちに読むことをお勧めします。どうせみんなコロナで暇でしょ(ジャンプ+から読めます)。

!!ここから先、『BLEACH』(48巻分まで)のネタバレを含みます!!










!!ここからネタバレあり!!

『BLEACH』——「キャラ萌え」の極北

僕、漫画の「ストーリー」をすごく重視してるんですよ。漫画の面白さってすなわちストーリーの面白さだと思ってました。もちろん、ストーリーがほとんどなくても面白い漫画はありますけど、フィクションとしての漫画作品の面白さを規定するものはストーリーだと思ってたんですね。
で、『BLEACH』はどうかというと、はっきり言ってストーリーはカスじゃないですか。『BLEACH』の同期の漫画って、勝手に『ONE PIECE』と『NARUTO』だと思ってるんですけど、この両者とは比べ物にならないくらいストーリーが練られていない。例えば、黒崎一護の父、黒崎一心周り。一心が実は死神だったってのは、まあ間違いなく後付なんですが、全然許容範囲なんですよね。個人的にストーリーの整合性は面白さとはあんまり関係ないかなあ、と思っています。気になる人は気になるんだろうけどね。で、問題はこの黒崎一心が死神だったと発覚するシーンなんですよ。この時一心が倒した敵、主人公の母を殺した仇だったわけじゃないですか。当然、一護の母ということは一心の妻でもあるので、一心にとっても仇ではあるわけなんですが、「主人公の母親の仇」なんていう物語的に美味しすぎるキャラが、主人公が全然絡まないシーンで死ぬの、すごくないですか?まあ、この辺は49巻以降でフォローが入るのかもしれませんが。
あと、とにかく似たような展開が多いですよね。48巻分というのは「尸魂界篇」と「破面篇」が大部分を占めるんですが、この二つ、マジで展開が一緒じゃないですか?

敵が現世に攻めてくる→ヒロインがさらわれる→一護たち一行が別の世界に助けに行く→一護が修行する→めっちゃ強い敵を倒してヒロインを連れ帰る

長期連載の漫画なら、似たような展開になっちゃうこともあるもんですが、『BLEACH』の場合、連続した二つの長編がほとんど同じプロットで描かれてて笑っちゃったんですよね。手抜きスレスレでしょ、これ。あと、一護の修行シーンも毎回同じような感じですよね。「内なる自分」と戦い過ぎ。

じゃあ、『BLEACH』は面白くなかったのかというと、めちゃめちゃ面白かったんですよ。なんで面白かったのか、ということを考えていくとですね、結局人間はカッコいいキャラがカッコいいセリフ吐きながらカッコよく戦ってるのを見るのが好きなんだという結論に落ち着きました。『BLEACH』の場合、特に「カッコいいキャラ」と「カッコいいセリフ」という要素が秀でている感じはしますね。「カッコいいキャラ」、もう少しこなれた言い方をすると、魅力的なキャラ、ですね。これは、もちろん名作には欠かせないものですが、『BLEACH』の場合はこいつらがとにかく多い。護廷十三隊とか、隊長副隊長合わせると26人もキャラがいて、第三席以下も含めるともっといる。こいつらが「尸魂界篇」になるとワーッと湧いて出てくるんですが、みんなかなり作りこまれてて、魅力的なんですよね。こんだけ魅力的なキャラがいると、そりゃあ一人は好きになるキャラがいるってもんです。で、こんだけたくさんキャラがいるのに、それぞれにちゃんと見せ場が用意されている。これがすごい。ちなみに僕は石田雨竜と斑目一角が好きです。あと、涅ネムと砕蜂も好きです。

もう一つ、「カッコいいセリフ」。これはもう説明不要でしょう。『BLEACH』といえばこれ。

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このセリフ、ネットだとめちゃめちゃネタにされてますけど、実際読んでるときはめちゃめちゃシビれましたね。
『BLEACH』って、セリフ回しもそうなんですけど、語彙がまずオシャレなんですよね。

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このコマ、第一話からなんですけど、「男爵閣下(バロンかっか)」って単語がこんなしょうもないギャグシーンに出てくるの凄くないですか?オシャレ語彙が体に染みついてないとこんなの無理ですよ。いったいどんな人生を送ってくればこんなセンスになるんだ。

とはいえ、こういったセリフ回しは人によって合う合わないがあると思うので、やっぱり『BLEACH』の魅力といったら「キャラの魅力」ということになるんでしょうね。Wikipediaによると、作者の久保帯人先生はキャラクターを先に考えて、話は書きながら考えているそう。ストーリーは二の次に、とにかくキャラクターの魅力で勝負するという潔すぎる『BLEACH』という作品はまさしく「キャラ萌え」の極北と言えるでしょう(言えるか?)。

ところで、よくよく考えてみたら、こんな風に「ストーリーは面白くないのにキャラクターの魅力に魅了される」という経験はこれが初めてではなかったことに気づきました。『グラップラー刃牙』です。「最大トーナメント編」以降の『バキ』も、ストーリーなんてほぼないんですが、とにかく魅力的なキャラクターが大勢出てくる。『バキ』も似たような展開多いですしね。こういうふうに、キャラの魅力で一点突破するような漫画は意外とある気がします。というわけで、次は『BLEACH』を読んだ経験に基づいて、ちょっと「ストーリー漫画の二類型」について書いてみたいと思います。

「ストーリー漫画」ってそもそもなによ?

ストーリー漫画って言葉、皆さんは使います?漫画の一ジャンルを指す言葉のはずですが、一般的には「ギャグ漫画」と対比的に使われることが多いような気がしますね。特に明確に定義されているわけではないようなので、ここで勝手に定義しちゃいますか。ここでは、「一連のストーリー(物語)が連載を通し、エピソードをまたいで進行する漫画」とでも定義しましょうか(あまり厳密な日本語ではないですが許して)。新聞で連載しているような四コマ漫画や、『ドラえもん』なんかはこの定義には当てはまりませんね。なぜなら基本的に一話完結であり、エピソードをまたいで進行するストーリーを基本的には持たないからです。『クレヨンしんちゃん』なんかはエピソードをまたいで進行するストーリーがある場合もあります。「剣道編」とか。でも、これも定義には当てはまりません。「連載を通し」、進行するストーリーではないからですね。本質的には一話完結と変わらないと、ここでは考えます。

くどくどと書きましたが、皆さんが思うような「ストーリー漫画」は基本的にはこの定義に当てはまるはずですので、細かいことは気にしないでください。僕も細かいことは考えてないので。ちなみにこの定義に基づくと、『ボボボーボ・ボーボボ』が「ストーリー漫画」にカテゴライズされる気がします。まあ、そういうこともあります。

ストーリー漫画の二類型

僕の敬愛する漫画家、冨樫義博先生(『幽遊白書』とか『HUNTER×HUNTER』とかの作者ですね)の言葉に、

(漫画賞の総評で)「話の勉強をして下さい。苦労するのが嫌なら凄いキャラを作って、そいつが動くのに任せてください。漫画家になりたいなら絵を描いている暇なんてないはずです」

というのがあります。漫画家になりたいなら面白いストーリー作るか、魅力的なキャラを作れと言っているわけですが、『BLEACH』はまさに後者の作られ方をしているんです。逆に、前者の作られ方をしていると思われる漫画もあります。多分、『DEATH NOTE』なんかはそうなんじゃないでしょうか。

何が言いたいかというと、この冨樫先生の言葉を基に、ストーリー漫画は大きく二種類に分けられるのではないかということです。前者の作られ方をしている漫画を「脚本型」、後者を「キャラクター型」とでも呼びましょうか。

「脚本型」の漫画には、どのような漫画があるでしょうか。さっき挙げた『DEATH NOTE』のほかには、『進撃の巨人』なんかもこちらに分類されると思います。『ONE PIECE』も、多分こっち。『HUNTER×HUNTER』も、各長編エピソード単位でみると「脚本型」のような気がしますね。『HUNTER×HUNTER』の場合は、「ハンター試験編」、「ヨークシン編」、「グリード・アイランド編」などの長編エピソードは割と独立してますね。

「キャラクター型」の漫画は、なんといっても『BLEACH』と『バキ』が入るでしょう。あと、『ドラゴンボール』はこっちでしょうね。最近の漫画だと、『僕のヒーローアカデミア』と『鬼滅の刃』が恐らく「キャラクター型」だと思います。両方とも、単行本のおまけなどでキャラ設定がすごく細かく書かれているんですよね。

どっちに分類されるかが不明瞭な漫画ももちろん存在します(そういう漫画が大多数だとは思います)。『ジョジョの奇妙な冒険』はどちらに分類されるか分かりませんね。作者の荒木飛呂彦先生は、キャラの履歴書を必ず作るらしいので、「キャラクター型」のような気もしますが……。長期連載で、エピソードの区切りがはっきりしているので、創作時期によって違うんでしょうね。あと、『NARUTO』もよくわからないですね。『NARUTO』はちゃんと読み込んでないので、もう一回読み直せばわかるかも。

ここまで、ストーリー漫画の二類型について語ってきましたが、もしかしたらこういう類型化はすでに行われていて僕が知らないだけかもしれませんね。でも僕が書きたかったからいーの!!!!!!!!!!!!!!!!!

そもそも、この類型化は意味があるんですかね?僕はこういうのが好きだから書きましたが、ぶっちゃけ意味はないと思います。まあ、こういうのを指針に自分好みの漫画を探せればいいんじゃないですか。ただ、一つ言うと、商業展開は「キャラクター型」の漫画の方が有利だと思います。キャラクターグッズとかキャラソンとか出しやすいからね。あと、2.5次元化も「キャラクター型」の方が向いてると思います。役者に個性を持たせられるはずなので。また、完全に偏見ですが、女性人気が高いのは「キャラクター型」の漫画の気がしますね。完全に偏見ですが。

というわけで、結論としては「ぶっちゃけ意味ないよ」ということでした。なのでこの節と一個前の節は読まなくていいです。まあ、僕が楽しかったので良しとしよう。
ただ、この「ストーリー漫画の二類型」は個人的に気に入っているので、今後も折に触れて深めていきたいですね。なんか、漫画以外のフィクションにも適用できそうじゃないですか?例えば、『アベンジャーズ』をはじめとするMCUの作品群は明らかに「キャラクター型」の作品なわけですよ。あれはキャラクターありきの映画なので当然ですが。

というわけで、今日はここまで。お疲れさまでした。次回更新日は未定ですが、『ゴールデンカムイ』か『横山三国志』か東方キャノンボールの話をすると思います。全然関係ない話をするかもしれませんが。とりあえずは、週二~三回くらいのペースでやっていければなと思います。
あと、『BLEACH』の続きをいつ読むかも未定です。無料にしてくれ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

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