日本外食新聞掲載原稿 第54話
第55話が掲載されたので第54話をアップします。
今後どうなるかわからないドキュメンタリー(実話)連載です。
実録!飲食業界のパラダイムシフトに田舎の喫茶店マスターが巻き込まれたとき、現場をこなしながらどのように活路を見出すか。531日目。
12月26日(日)11時59分、震える手でECサイトのカートをオープンした。こんなに緊張するものなのか。本当は3分前からカートをオープンしておこうと思って更新ボタンを押していたのだが、なぜか画面が更新されず「おいおい、12時になっちゃうって!こんな時に不具合とかやめてぇ〜」と1人バックヤードで焦っていた。
巷で人気のECサイトなどは、カートオープンと同時に一気に注文が殺到し、ものの数分で売り切れるという話をよく聞く。実際、販売する曜日や時間を決めているところは「○曜日の○時じゃないと買えない」と思い込ませることで、その時間に一気に完売するように仕向けているのだ。例えば「毎週月曜日の10時に販売開始します」というお店があるとする。購入希望者の中でも熱量の高い人なら、買い逃さないように月曜日の9時55分には正座して待っているだろう。
しかし人間は忘れることもある。今度購入しようとは思っていたけど『ふと気付いたら月曜日の15時だった』となったら、その人はサイトを見に行くだろうか?否、見ないはずだ。なぜなら「あ〜しまった〜、もう売り切れてるだろうなぁ。また来週にしよっ」と簡単に諦めてしまうからだ。ネット通販の業界でもリアル店舗同様、販売手法は沢山あるが、人気店の売り方は得てしてわざと在庫を豊富には置かないようにしている。いつも売り切れていて「簡単には買えないストレス」を与え続けることにより、その商品を忘れない状態をキープさせるのだ。
今で言うとアパレル業界「#FR2」の石川涼社長の戦略が非常に参考になる。そうして喉から手が出るほど欲しいところまで欲求が高まった消費者は、月曜日の9時55分に正座させられることになる。これを繰り返すことで、常に売り切れをキープできるのだ。ただ逆に言えば、10時オープンからせいぜい2時間以内に完売しなければ、その日は売り切れないということになってしまう。販売日・時間を限定しているので、時間が経てば経つほどサイトに来る人数が減るからだ。人気店はこの一点集中突破の形をとっているところが多いように思う。
さて話を戻そう。私もこの数日間、毎日ブログで「12月26日、12時からティラミスを販売します」と再三謳ってきた。自分に出来る最大限のアピールで認知を広げ、数量限定で購買意欲の掘り起こしをし、月に一回しか販売しないというプレミア感で、カートオープンと同時に一気に売り切るという作戦だ。これを頭の中で何度もシミュレーションしてきたが、いざ本番となると『今、どれぐらいの人が待ってくれているんだろう』『買いたい欲求が高まっている=期待値が上がっているだから、この期待値を超えないと満足してもらえないしリピートは無いぞ』『期待に応えられなかったらどうしよう』『お店で出すティラミスなら自信満々だけど、配送するとなったら全然自信無くてむしろ怖いんですけど…』と悶々としていた。全然注文入らなくても嫌だけど、めちゃくちゃ注文きたらそれはそれで期待されているということだから怖い。
あ〜やべぇ〜バックヤード寒いし手が震えるんですけど…もう後には引けないし…あっ!iPadの画面が切り替わった!どうやら更新されてカートが無事オープンしたようだ!さぁ、こいや!!
日曜日のランチだというのにクリスマス翌日のせいか全然忙しくなかったので、暇さえあればスマホを覗き込んでいた。
「やべぇ…」スマホを握りしめた手がだんだん汗ばんでくる。恐ろしい勢いでメールが入ってくるのだ。
「おいおい、やべーぞ。通知が止まらねぇ…」「マジっすか!すごっ!!」
1件の購入につき「新規購入通知メール」と「入金完了メール」の2通が届く。メールの件数が60件を超えたあたりから胃がキューっとなるのが分かった。うわぁ〜これはマジで期待されてるぞ。絶対に失敗できないじゃん…ホント、三越より顔が見えない分、怖いし緊張するわぁ。ランチ中ずっと「やべー…まじやべー…」とぶつぶつ言いながら放心状態で、料理持っていくテーブルを間違えるわ、追加オーダーを忘れるわで散々だった。お客様、すみません…
2時間経って残り8個というところで完全に注文が止まったので、このまま放っておいては売り切れないと思い、すぐFacebookに「あと8個です!!」と追加投稿。残り2個になったところでもう一回投稿して、なんとか17時に限定50個を完売できた。初めての販売ということで応援購入もかなりあるだろうが、Facebookで『初回だから』という勢いを使って無理矢理売り切った感じだ。ただ自分としては、どんな形であれ【完売した】という既成事実がどうしても欲しかった。
何故なら、これを繰り返すことで勝ち癖と自信をつけ、お客様には【いつも売り切れるティラミス】というイメージを刷り込んで、買えないストレスを与え続けなければならないから。そして今日がその最初の第一歩だったから、絶対に売り切れる必要があったのだ。購入してくれた皆様、本当にありがとうございました…という感謝の気持ち以上に、やっぱり怖い。お客様のもとに無事に届けて、食べて頂いて、喜んでもらうまでは安心できない。さぁ、売るという第一関門は突破した。これから第二関門、梱包配送だ。ちゃんと綺麗な状態で届けることができるのか…三越の催事で失敗しているのでここが山場になる。
次の日、定休日に休日出勤をお願いして2人で住所印刷→梱包→ヤマト運輸に持ち込みまで行った。三越の催事の時とは期待値が桁違いなので、細部まで何度も何度もチェックし梱包して発送したつもりだったのに、やっぱり何か忘れるという凡ミス。「成分表貼り忘れた!!!」「あっ!!!」……お客様から何か言われたら対応しようと思っていたが、結果的に問い合わせがなかったので今回はセーフとする。ごめんなさい、次回はちゃんと貼ります。本来なら謝りの電話なり、メールなりするのが会社としての正しい対応なんだろうな。反省。
翌日、応援購入してくれた常連さんから「届いたよー。心配でしょ?写真送るねー」とどんな状態で届いたかを写真付きで細かく教えてもらえた。その翌日にはまた1人、2人とSNSで送ってくれた。冷凍なのでティラミス自体に変化は無いのだが、表面のカカオがケーキピックにかかって店名が読み取れないほど汚くなっていたり、一緒に送ったドライフルーツの蓋が開いてしまってこぼれていたり、はたまた外装の段ボールが壊れていたりと、様々な反応を頂けた。これは本当に有り難いことで、全て次回の販売に活かす材料にさせて頂く。
こうやって一組一組と密なコミュニケーションを取りながら販売していると、ネット通販もリアルな販売と何ら変わりないんだなと実感させられた。ネットでは接客できるポイントが限られるため、少ないやり取りで最大限の満足を与えなければならない。だからリアル店舗よりも遥かに難しいし、お客様の感情の導線を細部までコントロールできるように先に手を打っておかなければならない。ふむむ…これは店舗を営業しながら片手間でできるような代物ではないな〜。んー、本格的にネットでの売り上げを取りに行くのか、コロナで下がった売り上げの補填程度で考えるのかで、今後の動き方が大きく変わってくるぞ。
実店舗の方はありがたいことに年末まで常連さんの忘年会がぼちぼち入っていたので、昨対117%とまずまずの結果を残せた。といっても2020年の12月は完全にコロナ禍自粛モードだったので、その売り上げに対してだから全然すごくはないし、新規のお客さんは皆無なので、まだまだコロナの影響は大きいと感じざるを得ないが、ただこの一年は新しいことに着手し、まだ結果は出ていないにせよなんだか前向きに頑張れた、2020年とは全く違う景色を見ることができた一年になった。私に関わってくれている全ての人に感謝感謝である。
2022年の始まりは例年より1日休みを減らして、1月4日から営業を開始した。今年のテーマは【ダサカッコイイ】である。田舎なのでダサい=安心感という方程式が成り立つのだが、今まではカッコつけて東京のカフェの真似をしたり、世界最先端を取り入れたりしたが故に、地元からは敬遠されてきた節が少なからずある。うちは客単価の高いちょっと変わったカフェなので、名古屋や岐阜からのお客様も多い。つまり単価が高い分、商圏が広いのでそれなりの客数を集めることができていたのだが、コロナで移動に制限がかかったことにより客数が減っていた。「もっと近所の人に来てもらおう」と言ったところで、お洒落なカフェなんて「しゃらくせぇ」となってしまう地域だ。だったら今年からちょっとダサくしてみよう…分かりやすい大きな文字に、店前にノボリとメニュー、あえてダサくして安心感を演出する。で、しっかり集客してしっかり稼ぐ。カッコつけてて稼げていないより、お店がダサいのに儲かってる方がカッコイイじゃん!ということで今年は色々ダサくしていこうと思っている。まずは文字ばっかりのグランドメニューを全て写真入りにして分かりやすく、トイレはこっち、お会計はあっちみたいな案内表示板もつけよう。お洒落な空気感でオブラートに包んでいたところを潰していくのだ。そう、コメダ大先生のように!さて、今年も大改革になりそうだ。
カフェパルランテ/秘密工房 三井隆義
〒487-0026 愛知県春日井市不二町2-6-7 0568-53-2477
営業時間 12:00~22:00 (ランチ12:00~14:30LO・ディナー17:30~21:00LO)
月曜定休 + 不定休あり(noteで告知します)
P7台(乗り合わせて来てください)
http://www.caffeparlante.com/ ←カフェパルランテの歴史(2009年7月~)
https://www.facebook.com/ciccio.don.925 ←マスターのFacebook
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