優しくするなら
「 寒い日に自販機に行こう」
この歌詞を見た時不覚にも
あの子のことを思い出してしまった.
奢ったりなんて滅多にしないし
あんまり物欲もなさげだからこっちが貢ぎたくなってしまう、そう思わせてくる、あの子.
悪気はサラサラなさそうだから全然いいのだが
あの日のあの時は
いつもと違う君だった.
その日は、秋から冬へなりかけている頃、
自販機やコンビニにホットドリンクが出回る季節だった.
寒がりな2人だったから
遊ぶ場所も相変わらず家だったし
会うまでのLINEは
さむい。 それな。 外出たくない。 それな。
みたいな、完全インドア派の会話しかしていなかった。でもなんだかんだ言いながら、「もうそろ着くよー」と連絡すると、「今から行くわ」と言って、最寄りの駅まで迎えにきてくれた。これ結構感動した.いつもの君なら「寒いから迎えに来て!」と言っても、「寒い嫌だ。家知ってるじゃん来れるやろー」みたいな返信が来るはず。でもその日は君から来てくれた.
そして会った瞬間2度目のニヤけが来た.
あんなに寒い寒い言ってたのに
ただの薄いジャージ姿で現れた.
ギリギリまで家に居て、急いで出てきたのだろう.
なんでそんな薄着なの?って聞いたら
さっきまで寝てたわ笑 って言われて
なんかもう微笑ましくなった.
君は正直者ですごくバカだ. 愛くるしいほどに正直すぎるバカな人だった.
その帰り道、初めて君が奢ってくれた.
バンホーテンのホットココアだった.
家まではそこまで遠くない。
寒いねーこんな日はココア飲みたくなる~って
不意に出た言葉を君は拾ってくれた.
ちょっとコンビニ寄ろう〜って言われて
ココアの種類はなくそれだけだったから
迷うこともなく
他を見ずにその2つだけを購入し、
コンビニを出た後
「これ持ってたら、あったかいやろ〜笑」って渡してくれた。
ここで私は自分でもありえないくらい軽率に
惚れてしまった.
飲みな〜ではなく、これなら温かいでしょ〜
とカイロ代わりに好きな飲み物を渡すという
ただ君も飲みたくなっただけもしれないが
私はその時、そのさりげない行動に
惚れた.
嬉しすぎて家に着いてからもすぐには開けず、
温かいからまだ飲まないーと言って
しばらくの間握りしめていたのを覚えている.
今でも思いだしてしまう
コンビニ の そのココアを見ると
君のあの日の優しさを.
相変わらずそのココアを買ってしまうし
買う度に君のことを思い出してしまうけれど
ココアは悪くない.
そういえば、初めて会った日も公園に何故か行ったらしい、少年少女の気持ちが抜けていないことが、愛くるしい.
明日も 私のことを忘れないで
と思いながら 私は日々を過ごすのだろうけれど
きっと君は私にココアを買ったことすらも
忘れてコンビニで違うドリンクを買っているんだろう.
この冬が終わるまでに 一度でいいから
ココアを見て私とあの日のことを思い出してほしい.
まぁそんなこともきっと叶わないだろうから
代わりに今日も私がココアを買うよ.
ナウプレ🎧優しくするなら/JIGDRESS
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