【エッセイ】もう忘れたと思っていたのに
私はもうあなたのことを忘れたと思っていた
あなたと部活や授業を抜け出して入った教室とか、あなたと一緒に聴いた曲とか、あなたと食べたご飯とか、あなたが好きだったもの、口癖、私だけにくれてた言葉も。
私が今も行く場所に、あの頃の面影がずっとこびりついて離れないの。
新しい彼氏ができて、あなたがいなくても私は幸せで。
彼は私を特別扱いしてくれるし、絶対に泣かせない。喧嘩もしない。
あなたじゃない方が、私は私のことが好き。
あなたじゃない方が、私は幸せで満たされてる。
それなのに、あなたといた時のことばかり思い出す。私じゃダメなのかと思う時もある。
たまに会う機会があると、私に見せたあの顔を他の人にも見せたのかなと思う。楽しそうに友だちと話す姿が、まるで彼女だった私に話しかけているようで。半年以上時が経っても、ずっと1番大好きだった人。
私はあの時、まだ子どもだった。彼は大人びていたが、私は大人になれなかった。感情を振りかざしてよく喧嘩していたことも、その度に泣きながら電話して和解したことも、ずっと大切な思い出で。
私はあなたのその優しさや人間性にのめり込んで依存してしまってたんだね。それでも私に、かけがえのない、忘れられない愛をくれた人にひとつも変わりない。
ねえ、今幸せ?私は幸せだよ。どうせならあなたとがよかった。あなたはもう私なんていらないと思っているんだろうな。私だってここまであなたにこだわる理由が分からない。今の彼氏よりも散々ひどいことを言われたし、ずる賢くて世渡りが上手で、だらしないところもあったし。嫌いなところも多く思い出すのに、どうしてそれが美化されてしまうの?
思い出も、あなたの面影も、もう忘れたと思っていた。今が1番幸せだって思ってた。
でも本当はあなたを忘れられなくて、あなたを探して後ろを振り返ってみたり、時に夢に出てきたり。
だからどうか、私との思い出がぜんぶ色褪せないように。私との思い出が胸に刻まれているように。
あなたはただ輝いて、ずっと綺麗なままでいて。
私も、たまに振り返るくらいはいいでしょう?
だって、本当にあなたのことが好きだったから。