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【ショートエッセイ】少しの間だけ

少しの間だけ、何もかも忘れて目を瞑ってしまいたい。

今日も外は、雨。

あなたの連絡を待つ間、大きく心臓が鳴り響き、このまま何もかもリセットしたい思う。

私の心も、雨。

あなたはそんなこと、一度も考えたことないと思うけど。

今日は会えると思っていた。
どうしても会いたくて、無理してでも会いにきて欲しくて、なんとかこじつけるような言葉ばかり送った。

ふと通知を見た。

「ごめん、今日はちょっと厳しそう」


分かってた。分かってたよ。
あなたが忙しいことくらい知ってるよ。
あなたが優しくて、悪い人じゃないのも知ってるよ。
でも今日は元々約束していたよね?私はこの日のために頑張ってきたのに。
会えないことよりも、会う予定を平気で変えられることがすごく嫌だった。
私との予定はそこまで大切じゃないのかな。
目に涙を溜めて、布団に入った。


私は彼がどれだけ優しいか、他の誰よりも知っているつもり。
だから、彼がそう思うことなんてないのは知ってる。
私はそれでも会いたかった。
こんなに好きで、だからあなたにいつも期待してしまう。
期待が崩れた時、吐き出す場所がないから自分に嫌気がさす。
自分で自分を不幸にする。


ずっと遠距離だった。
会いたくて、会える距離ではあったけどなかなか行動にはならない距離だった。
友だちも少ないし、なんでも彼氏が優先の私。
今日だって、買い物をしたり料理をしたり休日をあなたのために使った。
こうやって私は無意識に期待しているんだろうな。
私はきっと、彼に依存してる。
彼をこんなに好きになって、こんなに思い焦がれて、焦るばかり。
私はいつも泣いてばかり。

彼は「もう君しかいない」と言った。
その言葉だけをずっと信じてる。
彼は優しくて、友だちも多い。
いつだって男女問わず周りに人がいる。
そんな人が、私に好意を向けているなんて変な話。
結局は私も、独りぼっち。
この真っ暗でぽっかりと空いた穴を、どうやって埋めようか。
この長い夜をどうやって過ごそうか。


ねえ、あなたはなにをしているの?
私はいつもあなたのことを考えているよ。
写真と動画を見て、あなたに会いたい気持ちを膨らませて。
あなたのことをずっと待っているんだよ。
あなたにもっと求めてもらいたくて。
あなたと行った旅行、あなたと食べたご飯、あなたと見た夢をひとつ残らず思い出していく。
早くあなたと一緒になりたい。
会った日のまま、ずっと時間が止まればいいのにね。

少しの間だけ、涙を流しても。
雨が降っているのに、傘をささなくても。
来てくれると期待して待っているこの時間は苦痛だけどほんのりあたたかくて。
分かってて待っている私も、かわいくて。



あなたが来れば、雨に濡れることもないのにね。


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