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有名人のお客さんとの接し方
皆さんがお店を開いたならば、もしかしたらいわゆる有名人(芸能人、作家、スポーツ選手等)が来店されるかもしれません。
今回はその時の対応の仕方(と言ってもそれが正解というわけではありませんが)を述べていきます。
テレビ番組や雑誌での取材で芸能人が来店することもあるかもしれませんが、今回はそうではなく、純粋に「お客さん」として来店される有名人の話です。
「いやいや、別に有名人が住んでるような都会や一等立地でお店出すわけじゃないからお客さんとしては来ないよきっと・・・」と思ってる方も多いかもしれませんが、私のお店は各駅停車しか停まらない、例えばスターバックスなどの大手チェーン店もない、全国的にはそれはそれは地味な街であります。
それでも確実に3名の有名人は来店されその後もリピートしてくださっています。
3名のうち1名は誰でも知ってる某大女優さんで、その方の来店は現時点で3回ですが、他の2名に関してはもはや来店数なんぞカウント不能な超常連さんであります。
まず、J-waveナビゲーターや作家のロバートハリスさん。
珈琲文明の本当に創成期の頃から来てくれているのがハリスさんで、元来人見知りな私(カフェのマスターとしては全然オススメできないことですよ)にも超オープンマインドで接してきてくださり、例えば今日もつい先ほどまで珈琲文明に来て話していました。
今や私も心を全開放して本当に色々なことを話します。
もう1人の方はつい先日(というより先週)お亡くなりになられた新井満さんです。
新井満さんは「千の風になって」でレコード大賞作曲賞受賞、「尋ね人の時間」で芥川賞受賞、長野五輪のプロデューサー等等とにかくこれでもかっていうほどに肩書には枚挙にいとまがない人でありますが、当初私は満さんのことを知りませんでした(「千の風になって」という曲の存在は知っていましたが)。
私が人見知りであることに加え、満さん自身も随分と人見知りといいますか、寡黙で威厳があり近寄りがたいオーラ全開なのが満さんでした。
オーダーの際にコーヒーに関する質問があってそれに対して結構長めにお答えした時以降だったと記憶していますが、ある日「このお店にカメラとか入っても大丈夫?」と仰ってきたので「いいですが何をされてる人なんですか?」と私が問うと「物書き」だと返ってきて、一緒にいらっしゃった奥様が名刺をくれました。
そこに書いてあった「新井満」という名前をご夫婦が帰られて以降検索してみると、先に述べた数々のプロフィールが次から次へと出てきて驚きました。
その後、ハリスさんもそうですが、雑誌や各メディアにご自身がインタビューを受ける場所として珈琲文明を利用してくださっています。
本人たちもインタビューを受けるためにどこか遠くまで行きたくないだろうし、そうかと言って自宅に呼ぶのは面倒だという状況に珈琲文明はうってつけだったみたいで超WINWINの関係です。
今回ここで述べるべきポイントは彼らとの現在の関係性ではなく、ゼロからイチの初動対応でおそらく皆さんもそこが知りたいところだと思うので早速結論から言いますね。
それはズバリ「他のお客さんと一切区別しない」ということと「社交辞令や建て前上の会話ゼロで自分自身が本当に興味持っている疑問や自分の考えも思い切って伝える」という2点であります。
こんなことがありました。
満さんが「千の風になって」を色んな人がカバーしたアルバムを私にくれました。
インストゥルメンタル(歌のない曲だけのもの)で、リード楽器がいろんな有名ミュージシャンが手掛けているというものです。
その中に無伴奏のチェロというものがあり、店内ではチェロしかかけないことにしている私は早速店内でそのCDのチェロのところだけ流すことにしました。
そのCDの中には他に私が尊敬するギタリスト渡辺 香津美のクレジットもあって、そこに私が最もテンション上がっていることを知った満さんはチェロのバージョンの後に「じゃぁ次に渡辺 香津美のやつも流してみなよ」と仰いました。
ところが私は「申し訳ありません、このお店ではチェロしか流さない(またはリード楽器がチェロである楽曲)ことにしているためかけられないんです、でも私が最も聴きたいのはまさに渡辺 香津美さんのやつなんで閉店後にすぐ聴かせてもらいます」と言いました。
確かに一瞬その場の空気はシラけてしまったと思います。
でも満さんは怒ることもなく、その後もご自身の著作や関連作品等をたくさん私にくれました。
私はそのことごとくを読み、聴き、その感想を一切のお世辞を抜きに本音で自分の言葉で表すようにしていました。
満さんからしてみると「このマスターは本音しか言わない」というのがむしろ心地よかったのかもしれません。
確かにもはや業界の人々で満さんに何か意見出来る人なんていないとも思います。
私は別に意見したことはありませんが、とにかく感じた本当のことばかり述べました。
10年以上前だったと思いますが、「富士山を世界遺産にしよう」という満さんがゲストスピーカーで出演する決起集会のようなものが立派なホテルで行われた時に私と妻は満さんに招待されました。
その会には中曾根康弘元首相や女優の長澤まさみも登壇され、それこそ長澤まさみが緊張してたのを覚えています。
その会が終わって、別室でパーティーのようなものがあり、それにも我々夫婦は招待されてしまい、間違いなくその場にいた全ての中で最も場違いだったのが我々夫婦でした。
我々はなんだかどうしていいかわからず隅っこのほうのテーブルで飲んだり食べたりしていました(はい、しっかり飲み食いはしてました)。
そこに満さん夫婦がやってきて、その後満さんはなんとずっとそこのテーブルを動かなかったのです。
私が「満さん、いろいろ回ってきたほうが良いんじゃないでしょうか」と言うと、「挨拶まわりとかそういうのめんどくさいんだよ」と満さん。
そんなことはお構いなしに色んな人が満さんのもとに名刺を持って挨拶に来ました。
同じテーブルにいる我々夫婦にもその方たちは視線を投げると、満さんの奥様が「こちら近所の喫茶店の人なんです」とニコニコしながら言って、そこにいた相手の方々は「きっとこの喫茶店のマスターとやら只者じゃないんだ」とか思ってたのかもしれませんが、実態は完全なる「只者」であり(笑)、でもそうやってニコニコしながら紹介している満さんの奥様のことが本当にそれまで以上に大大大好きになったのを覚えています。
話を戻しますが、結局こうした何の肩書も持たない、一切の忖度もない、圧倒的外野で好き放題言ってる側(笑)の人間である私と話すのを満さんやハリスさんは好ましく思ってくれていたようです。
まだまだ満さんとは話したいことがいっぱいありました。
満さんが住む北海道の大沼の家に遊びに行きたかった(誘っていただけてました)。
風になった新井満さんにご冥福をお祈りいたします。
【追記】ここまで書いてこの原稿は終了でいったん入稿したのですが、「もしも自分が開業希望者の読者だったら」を今一度イメージしてみたところ「有名人のお客さんの対応」はこれで良いとしてもそもそもそういう人たちの初来店の動機のようなものを書いておかねばならないと思い立ったもので、もう少し書き足します。
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