実録「建設作業現場より」
前回の記事は開店前物件がようやく見つかった頃の様子、 「さすがに名実共に完全無収入プーになったので、年末からバイトを始めた。 ガテン系。プチ肉体労働。 」とあります。物件が決まるまで、これをやって食いつないできたっていう、肉体労働体の様子を生々しく語っている当時の日記があるのでそちらを貼りつけておきますのでご覧ください。
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ムクムクと太ってきてて、史上最重量を更新しまくりだったので、シンプルに「消費カロリーが摂取カロリーを上回れば、動物生理学的に絶対に痩せる」を実践すべく、ガテン系のバイトに心が向かったのだが、この「痩せるため」と「生活のために貯金をくずさないため」という二大モチベーションのほかに、「建物の内装仕組みの把握」や「人間ウォッチング」というオマケがついてきた。
名目は一応建物の「養生・クリーニング」という職種になるのだが、他にも資材運びやら何やらで要は雑用。
会社がある池袋(ほとほと俺は池袋に縁がある)まで面接に行ったが、あれは面接とは言わず登録というもんだ。
採用は確定で、逆に「大変そうだ」とかでキャンセル、脱落する人が多いだけで、今どき珍しい確実に採用される業種だ。
ヘルメットと安全帯を貸与され、あっさり登録完了。
俺みたいに週4ペースでしか出来ない奴はいろんな現場にスポットで入るため、毎回メールで現場の住所だけが記され、住所だけを手がかりに現場に向かう。
初日は田園調布の豪邸の最終掃除。
ただの民家の一軒家なのにエレベーターまであるようなところ。
あ、だからただの民家じゃないか。金ってあるところにはあるんだぁ、を実感。
職長(いわゆる親方)と俺の二人だけでまったり掃除して終わっていき、こんなんでいいの?って思ったものだが、 翌日の現場から一気に様子が変わった。
お台場の近くにあるホテルの新築現場。デカすぎるからそこの住所にはすぐに着くも、そこの何処に集合するのかわからず、ようやく詰め所に着いたらもうビックリ。
百人以上の作業員がひしめきあって集結。
ドラマとか漫画でしか見たことのない青木雄二の漫画に出てきそうな光景。
7時45分になると朝礼が始まり、ラジオ体操が始まり、その後一列縦隊で前の人の肩に手をやり(グレーシートレインみたいなやつ)、いきなり「肩揉み」開始。ビックリする。
朝礼では現場監督がボソボソもそもそ何か言ってるが、誰も真面目に聴いてない。 安全帯のフックをお互いにかけあい(バロムワンのバロムクロスみたいなの、って通じないか・・)「今日も一日安全第一で頑張るぞ」「オー」いや「うー」と、全くやる気のないトーン。
なんとなく夢でも見てるような光景。興味深い人間ウォッチングの開始である。
これまでの一ヶ月間でのウォッチングの成果は~
99%の人がタバコを吸う・・・現時点ではタバコ吸わない人を見たことがない。 だから100%といいたいところだが、俺が吸わないから99%。
AB型がいない・・・ヘルメットに名前&血液型が書いてあるんだが、AB型の人を見たことがない。俺はAB型だから、やはりこれも0.1%くらいなのか。
前歯がない人が多い・・・これはかなり多く、驚きの事実。理由が知りたい。 ケンカ?シンナー?違うよな。やっぱ作業中の事故なのかなぁ。 現場はやはり危険っちゃ危険。簡易足場から踏み外せば簡単に死ねる。 階段をゆっくりのぼってるだけの速度で、鉄柵に頭を強打したことがあるが、メットをしてても首がグキってなり、危なかった。
国籍不明・・・あきらかに多国籍。作業中にずっとイヤホンをつけてるアジア系の人で、人民放送っぽい音がずっと漏れていて、もしやこれは中国じゃなくて「北!?」とか、勝手な妄想によりドキドキしたりしてみた。
わけありな感じの人が多すぎる・・・プライベートな話はしないっていう暗黙のルールがあるみたいだ。 最初、俺は職長に「前はどこにいた?」って訊かれ、「全く関係ない事務職みたいなものです」とこたえると、「そうじゃねぇよ、前の現場だよ」ってことで、前職とかはどうでもいいようだ。
休憩中の話題は競馬、パチンコなどのギャンブルか風俗のことが多い・・・グループで集まってする下ネタを俺は得意としないんで困った。
一回俺に下ネタ話がふられたことがあって、「自分はムッツリなんで・・・」っていうとやたらとウケた。そして他の人にシフトしてった。
ムッツリだからってもう少し突っ込む余地はあるはずだろうとも思うが、でも他にそれていったので何よりだ。
下ネタは誰かと二人だけとかで淫靡な感じでするほうが絶対いい!
と、それはともかく、俺はこのバイト場では自分のことを「自分」と言うことに決めた。
そう、得意の「ごっこ」だ。
体育会系の雰囲気をかもし出すにはやっぱり「自分、~っすよ」みたいなのでいこう、と。
でも基本的に常連の作業員同士でだけ盛り上がり、新人には話しかけては来ない。 これは俺にはありがたかった。ボーっとしたり一人だけにされるのは大歓迎なんで。
しかしそれにしても新人にコミュニケーションとらなすぎだなぁとは思う。
羽田空港のとある場所まで行くのにさすがに住所だけだとわけがわからんというとき、職長が駅まで迎えに来てくれて、二人で歩いて現場に向かったことがあって、いきなりその人は最初から物凄い不機嫌で、一言もしゃべらず、重~い空気が漂い、現場へと向かったわけだが、作業が進み、その日の午後には俺の苗字に「ちゃん付け」するまでになったりするんだが、とにかくまぁみなさん第一印象がたいへんによくない。
やり続けるにつれ、これらの理由、事情もだんだんわかってはきた。
というのも、そもそもこの仕事は一ヶ月もしないで蒸発するように辞めていく人が多いらしく、コミュニケーションとったり、仕事を教えたりするだけ無駄、みたいな感じになってるのだ。
そんな中、一度やたらとコミュニケーションとりまくりの時があった。
新宿のとあるビルの解体工事で、通称「ガラ出し」と呼ばれる解体したコンクリートの破片が入った膨大な数の袋をトラックにバンバン積むっていう作業があり、超ハードなんだが、短期決戦で、積み終わったら次のトラックが来るまでは休憩みたいなことがあり、その時は俺と職長が二人だけという状況。いろんな話をした。
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