静かに燃える
今回はちょっと日記風の文体でいきます。
ブラック企業という言葉が出てきて久しく、その筆頭格によく出てきた某居食屋。その後、鬼の首でもとったかのようにみんなで叩きはじめたけど、土俵の外からただ攻撃してるだけの人はなんであれカッコ悪い。別にこの会社を擁護する気もないし、特別な気持ちも持ち合わせていない。でも、過去に「青年社長」というこの会社の社長を描いたドキュメント実名企業小説があって、それはとても面白かった。繰り返すけど、主人公(=あの社長)が好きとか尊敬するとかそういう感情ではなく、純粋に小説(当たり前だけどやたらリアルなという点で)として面白かった。主人公が運送業者のセールスドライバーをやって一年で起業資金の300万貯めてた頃の描写で好きなところがある。
先輩ドライバーの岡本とのやりとりである。
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11時40分に、岡本は蓬莱町のラーメン屋のそばで集配者を止めた。
「大卒、昼めしはどうするんだ」
「おむすびを持ってきました。よろしかったら食べてください」
「阿呆!おまえの施しなんて受けられるか。俺はラーメン食ってくる」
岡本は言いざま運転席から降りて、けたたましくドアを閉めた。
渡邉は助手席でラジオを聴きながらおむすびを頬張った。
朝食が早かったのと、重労働で空腹感がひどく、
大きなおむすびをむさぼるように3個たいらげた。
熱い緑茶が内腑に沁みる。
15分ほどで咥え楊枝の岡本が戻ってきた。
店がすいていたのだろうか。それにしても早すぎる。
そしてハンドルを握るなり、集配者を急発進させた。
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物凄く詳細に激務であるシーンが浮かぶのと、個人的にはおむすびを分けようとする部分に関してはこの主人公のことが大好きである(実像はともかく)。そしてどうであれ、彼は起業への道を真っ直ぐに見据えて全力で突っ走った。
私がここで言いたいのは、起業の準備段階で注がれるハンパないエネルギーの話なんだが、この会社、この社長を引き合いに出すとまたすぐ「でもそれには多くの屍が……」とか言われるのはめんどくさいので(笑)、もっと身近な例を挙げる。
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