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【生豆を洗って焙煎したコーヒー】が好きだ

取扱注意!

「良い/悪い」
という判断に
似ているようで
まったく違う
「好き/嫌い」

これは
個人の好みだから
誰かと意見が違っていても
そのままでいい。

これからお話しするのは
私が「好き」な
コーヒーの焙煎方法。
インターネット上でも
論争が絶えない
焙煎前に生豆を洗う
「水研ぎ焙煎」について。

誰かと争うつもりはないが
たまに炎上したりする
センシティブな話題であると
前置きしておく。

一杯のコーヒーはこうやってできる

【栽培・収穫】
赤道を中心に広がる生産地の
農園で育てられるコーヒーの木。
そこにはサクランボに似た
甘い実がなる。

【精製】
果肉の中にある種を取り出す。
代表的な方法は
発酵槽に数日漬けた後
水流で粘液質を取り除き
乾燥させる。
脱穀して選別し
麻袋に詰めて出荷。

【輸入】
船のコンテナで運ばれ
通関時に害虫などの検査があり
合格すれば業者が倉庫で保管。
不合格なら消毒(燻蒸処理)が
行われる。
ここまで収穫から数ヶ月。
この豆が国内で流通し
半年から1年後
次に入荷するまでの
在庫となる。

【焙煎】
豆売り業者や
私のような自家焙煎店が
豆を仕入れて焙煎し
やっと見慣れた濃い茶色の
コーヒー豆に。

【抽出】
豆の量、挽き目、湯の量と温度
器具を選び
どれだけ時間をかけるか…
バリスタの仕事によって
一杯コーヒーは完成する。

きっかけ

7年前
趣味でコーヒー焙煎を始めた。

当時
料理をすることは多かったが
コーヒー焙煎のことは何も知らず
「豆なら小豆みたいに洗うよね」と考え
焙煎前に生豆を洗ってしまった。

最初は勘違いで始めた
この「水研ぎ焙煎」は
主流な方法ではない。
賛否両論あるし
手間もかかる。
ただ
豆の汚れを落とせたような清潔感と
ダイレクトな豆の味わいに
私は惹かれた。

それから試行錯誤の末
できるだけ短時間で
お米を研ぐように
ゴシゴシ洗う方法こそ
一番効果があると気づいた。

さらに手回し式の小さな焙煎機でも
どうすれば安定して焙煎できるのか?
研ぎ洗いで増えた水分にどう対処するのか?
さまざまな工夫を重ね
約2年かけて自分のスタイルが完成し
現在の店「CAFÉIZM」をオープンした。

来店されたお客様が
コーヒーを注文する時点で
「水研ぎ焙煎」の情報は
全く伝えていない。

先入観なく味わってほしいから。

それでも
7年前の私と同じように
感じてくれるお客様は
多いのだ。

衛生的な感覚

「あなたは
 家の近所の川で水を汲み
 それを沸かして淹れた
 お茶を飲めますか?」

私は浄水でないと嫌だ。

キレイかどうかの話をするとき
・目に見える汚れがあるか
・菌のレベルではどうか
この2つが気になる。

前述の「川の水」の質問は
見た目にはキレイに見えたとしても
煮沸で雑菌が死滅したとしても
気持ちよく飲めるだろうか…
という感覚の問いだ。

コーヒーの生豆でいうと
私の感覚からすれば
洗いたいのだが
「コーヒーの生豆が汚れている?
 嘘だよ、生産者がかわいそう」
そんな意見もある。

本当に汚れているのか?

主要な生産国のアフリカや中南米では
前述のような【精製】の工程で
使われる水
豆を入れる容器
保存用の袋などは
私が持ち合わせる衛生的な感覚に
近いだろうか?

確かに土やホコリが付かないよう
現地の人なりに
努力はされているだろう。
しかし…

写真① 水研ぎ作業1回目の研ぎ汁

この写真を見てどう感じるかは
それぞれの感覚に委ねたい。

どうしても気になる人は
インターネットで
「コーヒー 発酵槽」という
キーワードで画像検索をすれば
現地で精製している
過程の写真を見ることができる。

カラダに優しいコーヒー

コーヒーが体に与える影響として
カフェインについてはよく語られるが
「汚れ」や「雑菌」については
あまり注目されていない。

たくさんのお客様と話す中で
コーヒーを飲みすぎたときの
体の不調について
大半の人は
カフェインが原因だと思っている。

私は
「本当にそれだけが原因だろうか?」
と疑問に思う。

写真② 未作業の豆には雑菌が付着していた

写真②は医療機関へ依頼して
コーヒー豆の雑菌を調べるために
培養した結果。
あえて同定した菌の名前は伏せるが
焙煎の高温で菌が死滅するとしても
そんな環境に豆が置かれていたことを
私は心配している。

さらに
現地で使用される農薬や
輸入時の害虫検査で不合格となった場合の
燻蒸(くんじょう)処理と呼ばれる消毒
これらの残留成分も大いに心配だ。

水研ぎ洗いをすることで
それらのリスクを軽減する効果が
期待できる。

風味が落ちる?

コーヒーは数百年前から飲まれている。
当時は今のように焙煎をしていなかった。
元々は実や葉を煮出していたのだ。
コーヒー成分を取り出すことが
容易ではなかったことが分かる。
それから
短時間で効率よくする目的で
今のような焙煎という工程や
抽出方法が研究されてきた。

つまり
生豆を水に浸しても
簡単に抽出などできないのだ。
私が水研ぎ作業をする
わずか2〜3分で
風味が減るほどコーヒー成分が
溶け出すとは考えにくい。

確かに
味わいは変わる。
個人的な見解だが
それは風味が減ったのではなく
余分な雑味が取れたと感じている。
お客様の声からも
そう推察している。

そこまでする意味はある?

YouTube で
「水研ぎ」を検証した動画を
いくつか拝見したところ
ほとんどの場合
ちゃんと汚れを落とせていない。
生豆の水分が増えたのに
焙煎の時間や火力を変えず
いつも通りの焙煎をしている。
あれでは
「水研ぎのメリットがない」と
思うのも無理はない。

私は「水研ぎ」作業で
増えた豆の水分量を
元に戻すために
乾燥工程を加えている。

コントロールしやすく
再現性を高める理由から
自然乾燥ではなく
焙煎機を使い
低温で行う。

商品として納得できる
焙煎のレベルにするために
必要な工程だと
考えている。

しかし
そこまで手間を増やしたのに
効果を感じない人もいるだろう。
それでも
汚れや雑菌を除去し
気持ちよく飲めるということを
新しい「価値」として見いだし
提供している。

選択肢としての存在意義

私は水研ぎ焙煎した豆が
コーヒーの正解だと
言っているわけではない。

ただ
衛生面を気にかける人に対する
ひとつの選択肢だ。

お客様からは
・クリアに味わいを感じる
・後口がスッキリで2杯目が欲しくなる
・胃にどっしりくる重さがない
そんな声をいただいている。

私は自分の好きなコーヒーを作り
CAFÉIZMを選んでくれる
たくさんのお客様がいる。

この事実に心から感謝して
今日も焙煎機を回している。


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