「辛くはなく、酸っぱさが際立つ」イラン料理を知るための10皿
1980年代後半から90年代にかけて、日本にイラン人が大挙やってきたこともあってか、イラン料理は中東料理の中でも比較的早く日本に広まった。とはいえ、ケバブや「ポロウ」と呼ばれるピラフなど、料理店で食べられるものは、比較的限られている。ここでは、もう少し幅を広げて紹介できたらと思う。
イラン料理を特徴づけるものはいろいろあると思うが、中でも「酸っぱさ」は大きな特徴だ。味付けにレモンなどのかんきつ類を大量に使う。9年前、イランに暮らしている時、ツイッターで思わず、こうつぶやいた。
①緑野菜シチュー(ゴルメ・サブジー)
「ホレシュト」と呼ばれるシチューには独特の味のものが多い。酸っぱさがカギという点では、「ゴルメ・サブジー」を挙げたい。緑野菜に豆などを加えて煮込んだものだが、乾燥レモンを大量に投入している場合が多く、ほんのり漂う酸っぱさがアクセントになる。
②ザクロ入りシチュー(フェセンジューン)
酸っぱさに甘さが加わったシチュー、と表現すると、ちょっと味の想像もつかない。ザクロを使ったシチュー。イラン料理の独自性を語るときに常に紹介される料理。好みで好き嫌いはあると思う。
③ナスのシチュー(ホレシュテ・バデムジャーン)
シチューをもう一つ。ナスのシチュー。これは比較的、日本人の味覚に近いこともあり、日本のイラン料理店でもポピュラーな一品になっている。
私が初めてイランに行ったとき、ハマった料理でもある。さほど酸っぱくはないが、辛くもない。
④アーブ・グーシュト
イランのカフェ飯定番、というとこれ。アーブ(水)とグーシュト(肉)という意味。小さな壺で羊肉や野菜の煮込み、すり鉢のような棒でつぶして、ナンですくって食べる。何もつぶさなくても、と思えるし、実際、イランでも、つぶさずに食べる、という人もいた。でも伝統的な食べ方には、理由がある。一度食べる価値はある。
⑤おこげご飯(タフチン)
おこげご飯がおいしいという感覚は日本にもあると思うが、わざわざおこげができるようにご飯を炊くのが「良い炊き方」とされているイランはやはりユニーク。
一口味わうと、カリッと香ばしくて、これを美味とするイランの感覚に同意せざるを得なくなる。
⑥シーラーズ・サラダ
イラン南部の古都シーラーズの名前を冠している。トルコでは「チョバン(羊飼い)サラダ」、エジプトでは、「オリエンタル・サラダ」などとも呼ばれる。下の写真は、イラク・クルディスタンで食べたもの。
⑦キュウリ入りヨーグルト(マースト・ヒヤール)
サラダ系というと、もうひとつ、キュウリ角切りをヨーグルトであえた「マースト・ヒヤール」。ヨーグルトの酸味もイランの食卓には欠かせない。
イランでキュウリは、果物のカテゴリー。果物の盛り合わせにも必ずといっていいほど含まれる。
⑧ポテトサラダ(オリビエ・サラダ)
この記事のヘッダーにも使ったが、成形に適した固さなので、イラン人が得意な盛り付けでも創意工夫が可能な料理。元はロシアで生まれたらしいが、イランでも完全に定着している。日本のポテトサラダに似た感じのものも多い。食べて日本を思い出させる唯一のイラン料理かもしれない。
⑨羊ひき肉串焼き(クービーデ・キャバブ)
イランにもケバブはいろいろあるが、羊ひき肉を使ったこれが、一番ポピュラーといえるかも。バターライスにのせると「チェロウ・キャバブ」。ナンにトマトと一緒に包んで食べると、より庶民的な感じになる。
⑩羊あばら肉串焼き(シシリク)
羊のあばら肉のケバブ。ちょっとこぎれいなレストランでしか食べられない。シシリク専門店という店もあり、長い串にあばら肉がずらっと刺さっていて壮観。スパイスなどによる味付けもおいしさのポイント。
この20年ほどで、日本にイラン料理レストランが増えた。ここで挙げた料理のすべてが味わえる訳ではないが、「酸っぱさ」などイラン料理の独特な面に注目して、ぜひトライしてみて欲しい。
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