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雑穀王国・岩手のヒエを、レバノンの定番サラダの素材に

先週、「酪農王国・岩手のヨーグルトで中東のエキゾチックなチーズを作ってみた」というタイトルで、岩手・岩泉町の「岩泉ヨーグルト」を使ってアラブのヨーグルトチーズ「ラバネ」を作ってみる、という試みをした。

そして、今度は岩手の雑穀を取り上げる。また「王国」か、とゲンナリした人もいるかも知れない。でも、岩手県にとって雑穀こそが、他県を圧倒する生産量を誇る農産物なのだ。

岩手県庁によると、岩手の雑穀生産量は全国の6割を占めるというから、圧倒的だ。ヒエ、アワ、キビ、ハトムギなどが多い。ビタミンやミネラル分、食物繊維が豊富に含まれているとして、健康志向の高まりとともに需要も拡大しているようだ。

岩手に住み始めたら、スーパーでヒエ、アワが真空パックに入って売られているのを見かけるようになった。

雑穀が並ぶ商品棚をながめていて、ふと思った。「何かに似ている」。「そうだ、ブルグルだ」

ブルグルとは、小麦を細かく挽いたもので、日本語では「挽きわり小麦」とも言われる。そのまま炊いてご飯のようにして食べることもあるし、スープ、ケバブのつなぎなど、さまざまな料理に使われる。

トルコ東南部からイラク北部にかけてのいわゆるクルディスタンへ行くと、このブルグルに出くわす頻度がぐんとあがる。

そのブルグルを使ったサラダに「タッブーレ」というものがある。ブルグルのほか、大量のパセリ、玉ねぎ、トマト、ミントの千切りをあえて、レモン汁やオリーブオリーブをかけたさっぱりした味のサラダ。特に、シリアやレバノンなどの東地中海地方でよく食べられている。

このサラダを、ブルグルの代わりに岩手の雑穀を使って作ってみたら、と思い立ち、早速試してみた。使ったのは、岩手県花巻市産のヒエ。近くのスーパーで真空パック入りのものを購入した。ヒエを炊いて水洗いし、上記の野菜と混ぜてみたら、プチプチ感がまさにブルグルの食感。我ながら、驚くほど、タッブーレサラダの味そのものだった。

上の写真が自作の「タッブーレサラダ」。本場よりも、パセリがじゃっかん少なめだったかも知れない。パセリは岩手県盛岡市三本柳地区のものを使った。

まだ試してはいないがおそらく、アワやキビなどほかの雑穀も利用できると思う。パセリと最後に上からギュッと絞るレモンの存在感が強い料理だが、ブルグルがないと、タッブーレサラダとはいえないだろう。日本でタッブーレを作る場合、ヒエをはじめとした雑穀はとても頼りになる。

雑穀は、白米と一緒に炊く、という食べ方が主流なようだが、ご飯の「まぜ物」という地位を抜け出して、もっと様々な料理に活用できるのではないかと思った。

岩手県の雑穀栽培が盛んなのは、夏に「ヤマセ」という、寒流にのって冷たい風が吹くため、かつては冷害が多く、米が充分にとれずなかった、という歴史的な背景があるとみられる。寒冷な気候でも比較的育ちやすいヒエやアワは、飢饉が起きた時の人々の緊急食糧だったのだ。

そうした岩手の過酷な歴史がはぐくんできた食材である雑穀を、日本料理に限らず、世界のいろいろな料理に活用することは、自分たちが日本という国を理解し、他の国の人々に日本を理解してもらうことにも役立つかも知れない。

料理とは、距離や時間を超えて人や土地をつなげる「橋」の役割も担っていると思う。異質なものに、ブリッジをかけるということは、あらゆる意味でとても重要なことだ。このほかにも岩手の食材を使って料理できる、中東の料理を探してみたいと思う。

(ちなみに、ヘッダーの写真は、エジプト・カイロのレバノン料理店で食べた時に撮影したもの。念のため)




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