スクールトラウマ
先日の記事の続報です。
Almost 140 parents, students and teachers have now spoken out about “systemic” and “lasting” emotional harm to children stretching back two decades at two schools in Hackney run by the Mossbourne Federation.
20年にわたってハックニー地区の二つの学校で行われてきた子供に対する構造的および永続的な感情的危害について約140名の保護者、生徒と教師が述べた。
In response to the Observer story a fortnight ago into the treatment of children at Mossbourne Victoria Park academy (MVPA) in Hackney – based on testimonials from 30 parents – a further 70 parents, more than 30 former students and eight former teachers have now come forward with new evidence.
2週間前のオブザーバー(新聞)の記事が出た後、
さらに70人の保護者、30人の元生徒と8人の元教師たちが声を上げた。
この二つの学校は、元OFSTEDの視察官長(2012-2016年)の Sir Michael Wilshaw (サー マイケル ウィルショー)
という人が運営し、OFSTED査察の成績も「優良」で、テストの成績がいいことと厳しい規律で知られていた。
(OFSTEDとは、イギリス全国の学校や保育所などを定期的に査察し、評価する政府直属の機関)
この記事で驚いたのは、学校内で教師に対してある研修がなされていて、
それが、生徒に「健康的な恐れ」を植え付けることを前提とした対応で、
生徒を怒鳴りつけたり、脅したりといったことがどうも日常的に行われていたようなのだ。
このような研修を受けさせられた結果、この学校を辞めざるを得ない教師もいた。
また、この学校のルール(校則のようなもの)が恐ろしく厳しく、例えば放課後の居残りに値する違反は
指定の色のペンを忘れた*
片付けに時間がかかりすぎ
時計を見る など
(*注 娘が通っていた学校指定の持ち物の中にも、赤ペン2本、黒ペン2本などの指定があり、忘れると罰の対象だった)
このような刑務所よりも厳しい環境で多くの時間を過ごした生徒たちの中には、卒業して何年たっても精神疾患に悩まされている者が少なからずいる。
さらに、この学校は特別支援の必要な生徒たちに対しても個別の対応をするべきところ、障害を罰し、できないことに制裁を与えていた。
近隣の学校は、この学校から排除された生徒たちの受け入れを要請されていたが、その生徒のレポートからは、生徒をサポートする代わりに罰していたことが明らかだった。
どうして20年もこのような学校が放置されていたのかは想像するしかないですが、ただ経験から言えることは。
例えば子供が不登校になった場合。
まず親は学校に相談しますが、他の不登校児の親との連携というのはなかなかとりにくいと思われます。
実際私も、娘の通った学校でそのような状況の親と繋がることはありませんでした。
なので、学校に対して不満があったとしても、一人ひとり個別に苦情を申し立てたところで無視されるか、適当にあしらわれたのだろうと想像します。
また学校側の言い分は、厳しくしているから成績が上がった、という彼らから見た「実績」があるので、ついてこられない生徒は辞めろ、という態度で親をガスライティングします。
さらに、学校側としてはそういう手のかかる生徒が減ることで、「学校が望む結果を出せる生徒」のみがいることになるので、成績/出席率を高く保つのに都合がいいのです。(Ofsted高評価につながる)
そしてもっと悪いことに、このような学校は実はこの二校だけではなく、現実に同じようなレベルの(意味のない)校則を生徒に強制している学校はイギリス中に間違いなく存在します。
そのあおりを受けているのがもちろん生徒、保護者とこころある先生たちで、彼らが頼りとするのは臨床心理士です。
彼らはクライアントとしてくる子供や保護者達から似たような話を聞きかされ、学校がおかしいと気づいています。
そのうちの一人、私の救いの神(笑)Dr Naomi Fisher(ナオミ フィッシャー)は自身のフェイスブックやツイッター(X)で、彼女のもとに来る子供たちの現状に対して問題提起している数少ない(本物の)臨床心理士です。
彼女は本も書いているので興味のある方はぜひ。
彼女の投稿を読んでいて知った言葉がSchool trauma(スクールトラウマ)。
カウンセリングの勉強を何年もしてきましたが、この種のトラウマが存在することは全く知りませんでした。
学校に行くことそのものがトラウマになる、ということ自体が私の知っている学校からは想像できなかったのです。
でも、娘を見ていて、こういうことかというのはすぐに理解できました。
みんなが当たり前にできていることができない自分に傷付き、
しかもこれが毎日続く。。。
あるいはこの訴えられた学校の生徒たちのように、何も悪いことをしているわけではないのに、毎日のように罰を与えられる。。。
日々のこうした体験が積み重なり、トラウマとなって体に染みついていきます。
だから、学校を卒業して何年たっても、そのことを思い出し、苦しくなるのです。
スクールトラウマという言葉そのものがなくなる世界が理想ですが、「しつけ」や「賞罰」にこだわる大人がまだまだ大多数のこの世の中、理解ある先生たちが増えることがまずは第一歩なんでしょうかね。。。