日曜夜は気をつける
金曜日の夜というのは、多くの方々にとって解放感とともに過ごす楽しい時間なのでしょう。
店の定休日が(月)(火)であるわたしにとって、それは日曜日の夜。
日曜の閉店後は、ビールかワイン片手にしばらく1人で憩います。
暖かい季節は外に出て野鳥や虫の声に耳を傾けながら、寒い季節には店内の薪ストーブの傍らで、ちびちびお酒を飲むのが至福の時。
それにしても、一週間を終えた休日前夜に飲むお酒は、どうしてあんなに美味しいのでしょう。
とくに繁盛した日の夜は、ついついご機嫌で酒量が増えてしまいます。
若い頃は、飲み会で盛り上がっている最中に居眠りする上司や、飲みながら話した内容を翌朝すっかり忘れる父のことが、信じられませんでした。
今ならよくわかります。
年を取ると、どんなに楽しくても眠くなるし、記憶が無くなることがあるのです。
* * *
数年前、お隣に住む姉夫婦の家で食事をしながらワインを飲んだ時のこと。
店が繁盛した日曜夜で、夫が不在で、わたしは解放感に包まれていました。
姉夫婦と3人で楽しくおしゃべりしながらお酒も進み、優しい義兄が次から次へと注いでくれて、ある時点で姉が言いました。
「ちょっと、2人とも大丈夫? 結構飲んでるよ」
ハタと気づいて見てみると、空いたボトルが3本と開いたボトルが1本。
その前にビールもそこそこ飲みました。
姉はほとんど飲めないので、これらは義兄と2人で飲んだことになります。
えええ? いつの間に?
空のボトルと夜更けを示す時計を眺めて驚くわたし。
こ、これはいけない。そして、猛烈に眠い。
義兄はすでに爆睡。
「か、帰る!」
そう言って玄関に向かうわたしを、心配そうに見送る姉。
かなりふらついていたわたしですが、「ダイジョウブ、ダイジョウブ」と精一杯酔っていないフリをして、姉夫婦宅の玄関ドアを開けました。
次の記憶は、翌朝5時。
ひどい頭痛で目が覚めて、「メガネ、メガネ……」とベッド脇に置いてあるはずのメガネを探すも見つかりません。
とりあえず、手探りで洗面所へ行き、引き出しからスペアのメガネを取り出し、かけました。
視力が戻ってまず入ってきた光景は、鏡とシンク周りについている、それはそれは大胆な泥汚れ。
その泥跡は、バスルームまで繋がっています。
ま、まさか、泥棒?
恐る恐るバスルームのドアを開けると、洗い場の床と壁にも派手な泥汚れが。
おまけに、バスタブのフタが見事に「く」の字に変形している……。
え?
泥棒がいないことを確認してホッとしつつ、謎と頭痛を抱えながら、とりあえずトイレに入って考えるわたし。
昨夜、どうやって帰ったっけ?
お隣の姉夫婦の家から……………あれ? まったく記憶がない。
ところでいつもの愛用メガネはどこに行ったんだろう。
そして弱まってきた頭痛の代わりに別の痛みに気がつきます。
どうも左足と左ひじが痛い。
おや? ひじには擦り傷がある……。
………………………転んだのか? わたし。
初めて経験する記憶の欠落。
怖い。
結局、失った記憶は戻ってこなかったのですが、メガネは見つかりました。
記憶喪失の夜から数日後、帰宅した夫に呆れられながら姉夫婦の家とわが家をつなぐ小道に立ち、実況見分&状況説明していた時のこと。
「転んで泥が付くとしたら、このあたりの土かもしれないな~」
そう言ってわたしが指差した先の小道脇の藪の下に、まさにお気に入りのマイメガネがぽつーんと落ちていました。
「あああっ! メガネ!」
メガネとの数日ぶりの再会。
それでは推理します。
あの夜、お隣の姉夫婦の家を出た後すぐ、この小道でわたしは転んだ。
そこでメガネを落とし、左足と左ひじを打つ。
酔っぱらって前後不覚のわたしは、裸眼で視力0.02であるにもかかわらず、メガネを残したまま泥だらけで帰宅。
そして洗面所に向かい、付いた泥を洗おうとバスルームに行った。
ところがここでまたしてもバランスを崩し倒れて、お風呂のフタを曲げる。
驚きなのはそんな状態でありながら、玄関ドアをちゃんと施錠し、照明も消して、化粧も落としてパジャマに着替えて寝ていること。
おそらく歯も磨いたのでしょう。
日ごろの習慣って、すごいね!
いやいや、そのすべての記憶がまったく無いっていうのが、すごい。怖い。恐ろしい。
泥汚れと擦り傷くらいで済んで、ホント良かったです。
記憶をごっそり無くしたことなんて、それまでただの一度もなかったのですが(その後もありません)。
* * *
noteも、日曜夜にはほろ酔いで皆様の記事を読むのが楽しみなのですが、調子に乗ったコメントをしそうで怖いです(すでにしたかもしれません)。
スマホの操作を誤ることもありまして、ご迷惑をおかけした皆様、大変申し訳ありません。
次々と注いでくれる義兄と、ご機嫌な日曜夜には、とくに気をつけたいと思います。