nakazumi

長野の高原で喫茶店をやっています。https://r.goope.jp/cafe-nakazumi/

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マガジン

  • つれづれと思うこと

    山暮らしの日々の中で考えていることを綴った文章をまとめています。

  • 本や映画のこと

    おすすめの一冊や映画についてまとめた文章です。

  • 人々との日々

    ちょっと笑顔で心をほぐしたい時に。誰かとのやりとり、小競り合いから生まれた文章です。

  • ジーンとした話

    嬉しかったり切なかったりしんみりしたり、ちょっぴり心震えたお話をまとめています。

  • お店をめぐる色々

    営んでいる小さなカフェをめぐる出来事、思いなどをまとめています。

最近の記事

わたしの頭の中の楕円形

ずいぶん前に、「文字に色がついています」という記事を書きました。 誰にでもある感覚だと思っていたところ、文字に色を感じるのは少数派なのだと知りました。 そして、わたしには他にもちょっと変わった感覚があります。 それは、1年間が楕円形になったカレンダーのようなもの。 1年単位で過去のことを思い出したり、今後の予定などを考えたりする時に、このような楕円形がいつもポーンと頭の中に浮かびます。 この楕円形も、気がついたときには頭に存在していました。 文字に色を感じるので数字にも

    • 『ともぐい』河﨑秋子 著

      カフェ店主おすすめの一冊と、個人的に気に入っているツボをご紹介いたします。 今回は、わたしにとって今年のベスト、『ともぐい』(河﨑秋子)です。 2024年直木賞受賞作とは知らずに、夫の本棚で見つけて読みました。 『羆嵐』(吉村昭)、『クマにあったらどうするか』(姉崎等・片山龍峯)、『羆撃ち』(久保俊治)など、もともとクマに関する本は好きですが、今回は冒頭から荒々しく生々しくも繊細な表現に惹き込まれ、目を離せなくなって一気に読了。 ところどころ、三島由紀夫を彷彿とさせる細や

      • 上高地週間(涸沢編)

        一週間のうちに2回上高地を訪れた後半の、涸沢カールへの旅をご紹介します。 前半の徳沢編はこちら。 毎年上高地の徳沢を訪れて、ずっと「いつかはその先の涸沢へ」と思い続けて、10年経過。 ついに今年、1年前から計画して、友人と夫と、3人で行ってまいりました。 女性陣の体力を考えて、2泊3日の行程。 少々膝に難のあるわたしは下りがとても苦手なのですが、結局1泊目を横尾山荘、2泊目に涸沢ヒュッテという「上りに2日かけて、3日目に一気に下って家まで帰る」という計画です。 今回の涸

        • 上高地週間(徳沢編)

          一週間の間に、2回上高地へ行っていました。 1回目は徳沢まで1泊2日。 2回目は涸沢まで2泊3日。 今回は、徳沢編をご紹介します。 後半の涸沢編はこちら。 上高地について詳しくはこちらをどうぞ。 10年くらい前から、毎年上高地へ行っています。 家族や友人とグループで訪れた年もありましたが、ここ7年ほどはずっと10歳年上の友人と2人で訪れていました。 徳沢までの片道約6キロの散策道を、友人と2人のんびり歩きながらいろんな話をして、天国のような美しい景色を眺めて、徳澤園や徳

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        • つれづれと思うこと
          52本
        • 本や映画のこと
          17本
        • ジーンとした話
          19本
        • 人々との日々
          38本
        • お店をめぐる色々
          40本
        • 創作
          4本

        記事

          汚点

          実家から衣類を運ぶ際、母が衣装箱に入れてくれたことがありました。 祖母の実家が洋装店で、そのお店の懐かしい箱です。 祖母はその洋装店で仕立ての仕事をしていたことがあり、わたしもよく服を作ってもらったものです。 姉や私の中学の制服は祖母が作ってくれたオーダーメイドで、夏用のプリーツスカートを涼しい素材で特別に作ってくれたこともありました。 雑誌などを祖母に見せて「こんな感じの服がいい」と言うと、布地を一緒に選んだりデザインを相談したりして、見事に所望した通りの服を作ってくれた

          うちのイチオシ

          たまに、取材の方やお客様などから、「こちらのお店のイチオシは何ですか?」「ここのウリは?」「こだわりは?」と聞かれることがあります。 17年もやってるんだから、「もちろん、○○です!」とズバリお答えできるといいのでしょうが、わたしは毎度口ごもってしまいます。 もちろん、珈琲は豆の鮮度を保って挽きたて淹れたてを心掛けて、自信を持って提供しておりますが、豆自体は信頼できる珈琲豆店にお任せしていて、わたしが焙煎をしているわけではありません。 ケーキはすべてわたしが作っているけれど

          うちのイチオシ

          ひとり旅の夜

          そんなに遠くへ行かないひとり旅をして、そこで訪れるお店での時間が好きです。 それに、店を営んでいる身としてはどんな飲食店も勉強になるし、刺激を貰うことができます。 少し前に、ある地方都市のワインバーをお目当てに旅を計画しました。 古い建物をリノベした、ナチュラルワインとビストロ料理のお店。 オシャレ! 字面だけでオシャレ。 ネットで調べた評判もとてもいい感じで、間違いないと意気込んだわたしは定休日をチェックして、訪れる日が営業日であることを確認したうえで近くの宿を早々に予約

          ひとり旅の夜

          食べもののうらみ

          「僕たちは人間の食べものになったんだね」 冷蔵庫の中で、瓶詰の紫色のシロップになったヤマブドウが言った。 ヤマブドウは振り返る。 「森の中の山栗の木に、蔓を絡ませて紫色の実をつけていたのはずいぶん昔のことだなぁ。 実のいくつかは野鳥に食べられてしまったけれど、でも食べられたっていいんだ。肝心の種は残るからね。 むしろそのために熟れてくると紫色になって実を目立たせているんだ。鳥や獣に食べられることで、種を遠くに運べるって作戦。 動物に食べられても、そのまま熟れて腐っても、い

          食べもののうらみ

          たった一度のインパクト

          年に1回ほど、決まった季節にご来店してくださるお客様がいらっしゃいます。 その方が、ご来店されるたびにおっしゃるのです。 「nakazumiさん、ずいぶん明るくなったね。  最初に来た時、なんだかホント暗くて、今と顔つきが全然違ってたよ」 と。 毎年、ご来店するなり第一声が、「明るくなって別人だよね!」とか「あれ? なんか若くなった? 前は暗かったよね」とか「イイ顔になった! 昔、暗くてさー」とか、さらにはお連れ様に「あのね、この人、前はすごく暗かったんだよ」とご説明され

          たった一度のインパクト

          『二十一世紀に生きる君たちへ』 司馬遼太郎 著

          歴史小説で有名な司馬遼太郎が、子供たちへ向けて書いた初めての随筆『二十一世紀に生きる君たちへ』は、小学校6年生の国語の教科書に掲載されました。 教科書に載ったのはわたしが小学生ではなくなって何年も経った後のことで、10年ほど前までこの文章を知らずにいました。 たまたまわたしが営む店にて常連様と雑談中に話題にのぼり、すぐにこの随筆を読んだその時の感動は忘れられません。 それは短くも丁寧な文章で、そのすべてが心打つ言葉の連続ですが、わたしがとくに惹かれたのは、「自然物としての人

          『二十一世紀に生きる君たちへ』 司馬遼太郎 著

          深夜の出来事

          妙な音で目が覚める。 ペロペロペロ……と耳元で音がしたような気がしたのだ。 まどろみの中で目を閉じたまま、「夢かな」と思った。 そしてまた眠りに落ちようとウトウトしていると、今度はハッキリと左の耳元で音がした。 ペロペロペロ……クッチャクッチャ……。 わたしはいつも独りで寝ているし、ペットも飼っていない。 にもかかわらず、明らかに今、左耳のすぐ脇に何か物体が存在して音を発している……。 とたんにサーーーーッと背筋が寒くなって完全に目が覚めたわたしは、これはマズい、と身を凍ら

          深夜の出来事

          本物の輝き

          一年前のことですが、店のテラスの庇に「おにやんま君」をぶら下げました。 ご存知の方も多いと思いますが、「おにやんま君」は蚊やハチ等を避けることができるといわれる虫除けグッズです。 当店は山の中にある喫茶店のため、網戸や扉の開閉の度に店内へ虫が入ってしまうことが多く、テラスの庇と玄関の2カ所におにやんま君を設置しました。 ある日の閉店後のことです。 テラス庇の下のタイルに、おにやんま君が落ちていました。 ところが庇を見上げてみると、おにやんま君、ちゃんとぶら下がっています。

          本物の輝き

          『暁の寺』 三島由紀夫 著

          店主おすすめの一冊と、個人的に気に入っているツボをご紹介いたします。 今回は、『豊饒の海』第3巻『暁の寺』です。 第1巻、第2巻についてははこちら。 『暁の寺』は、タイのバンコクを舞台に始まります。 20代で初めて読んだ時、三島が描くバンコクの情景に強く惹かれるあまり、その後2回タイを旅行しました。 湿気を纏った空気、チャオプラヤ(メナム)川のカフェオレ色と木々の緑、蜃気楼のようにあちこちにゆらめく寺院の金色、甘みの濃い果物、控えめで穏やかなタイの人々、漂う気怠い雰囲気……

          『暁の寺』 三島由紀夫 著

          おかあさんといっしょ

          幼いころよく遊んでくれた親戚のお姉さんが、懐かしい写真を数枚送ってくれました。 色褪せたそれらの写真は20~30数年ほど前のものと思われ、どうやら撮影年はまちまちだけれど、どれも親戚一同でお墓参りをした時のものでした。 まだ学生だった頃の姉やわたしも写っていたり、今はすっかり大人である若者たちが可愛らしいチビッコだったり、もう故人となった皆さんも元気に微笑んでいたりして、つい見入ってしまいます。 その中の1枚に、大きな麦わら帽子を被って墓石の前に立つ自分を見つけました。

          おかあさんといっしょ

          わたしが水着にきがえたら

          久しぶりに泳ぎに行こうと思い立ったある日のこと。 長野市も猛暑の予報で、おそらく街に降りたら灼熱地獄。 標高1120mに暮らすわたしは思いました。 「下界の暑さで汗だくになった体で水着に着替えるの、嫌だなあ」と。 汗ばんだ肌と水着は恐ろしく相性が悪いのです。 乾いた水着は汗で湿った肌の上でまったく滑らず、ものすごく着づらい。 前回更衣室での着替えに難儀したことを思い出して、涼しい高原の自宅で水着を着てから出かけることにしました。 25℃の自宅にて楽々サラッと水着を着用し、そ

          わたしが水着にきがえたら

          コロッケと夏の休日

          夏休みシーズンに突入していよいよ繁忙期、という当店の週末営業が驚くほどパッとしなかったため、定休日のわたしは気持ち的にはやや低めでしたが体力的には元気でした。 そこで、この日の夕食はコロッケに決定。 最近目にしたこちらのお二人の記事の影響です。 お店のコロッケも美味しいけれど、家で作る家庭のコロッケはまったく別の味わいがあります。 わたしは、最後の晩餐の話題になると、必ず「祖母の作ったコロッケ」と言うことにしています。 祖母は16年前に亡くなっておりますが。 この日外出予

          コロッケと夏の休日