ふたつの気持ち
自己紹介にもさらっと書いたが
私は法律を扱う業界で働いている。
離婚や交通事故、相続、窃盗、殺人…といったような
いわゆる個人をクライアントとする案件は事務所としては基本的に受任していないが
新人の先生が必ず受ける国選弁護(勾留された後に、資産がなく私選弁護人を呼べない場合、国が弁護士費用を負担してくれる制度)や、プロボノ(無報酬で行う公益活動)では個人をクライアントとする案件を受任することがある。
個人をクライアントとするような案件には
(企業の案件でも案件の性質によっては稀に)
目を背けたくなるようなものがある。
細かなことはもちろん一切かけないのだが、
本当にこんな非人道的なことが起こってるの?
同じ人間がしていること?
と目を覆いたくなったり、憤りを感じることがある。
写真をみて吐き気をもよおしたこともある。(そんなことを言っていたらダメなのはよくわかっているが私の人生で目にすることがないような場面だった)
一通り悲しんだり憤ったりした後に抱く感情は決まってふたつ。
自分にもできることがあるんじゃないか
という気持ちと
苦しいけど私如きにできることなど何もない
という気持ちだ。
相反するこのふたつの感情が一気にわきあがってくる。
自分にもできること…ものによるが例えば募金だったりボランティア活動だったり、だろうか。
ただ、私自身は法学部卒でもないし有資格者ではない。
(目指しているわけでもない)
こういった大きな問題、人の命に直結する仕事ができるのは資格を持った人だけだ、ということを常々考えている。
またもやおかえりモネの話になるが、
第26話で菅波先生がモネと"資格"について話していた時にこのようなことを言っていた。
資格を必要とする仕事の多くは、他人の財産や生命に直接かかわります。何かミスをすれば、目の前の命を奪ってしまう可能性があります。それぐらい重い資格が自分にはあるのか。それを問うものだと僕は思います。
まさにこのとおりで、
事務所で扱う案件は個人がクライアントでなくても
誰かを守り、救っているなと感じている。
先生たちは、
法を盾として(時には誰かを守るための槍として)
依頼者の人生、財産を守っている。
(資格を持っている)先生の言うことなら信じようと、
依頼者の信頼を得て働いているのだ。
私も案件に関わっているので、もちろん、無事に解決した時には、あぁ本当によかった、とやりがいも感じる。
ただ、その成果はあくまでも資格を持つ先生たちが自分の時間を犠牲に、頭脳と知識をフル稼働させた結果なので、私の手柄ではない。私のおかげ、ではない。
そこを履き違えてしまうことがいちばん怖いので、
私は入所以来その点を胸に留めて働いてきた。
それでも、私は、悲惨な現状を目にした時に、無責任にも、自分にもなにかできないか…と思ってしまうのだ。
無資格の人間にもできることがあるのかもしれない、調べたら出てくるだろう。
迷っているならやればいいと思う人もいるだろう。
けれど私は、努力をして司法試験を突破し、その後も常に努力を続け、誰かの人生を変えることができる力と責任を背負いながら働く有資格者に囲まれて生活しているのだ。
例え先生と同じことを私が言っても肩書きの違いで信用してもらえないだろうなと感じることもある。
資格を持つことは誰かの人生を救うことができる。
責任も生じるが、その対価として、救う資格を得ることができる。
私はそれをよくよくわかっているつもりだから、
資格を持たない自分一人が動いても何も変わらないと思ってしまうのだ。
あくまでも、資格を持たない"私"のことなので、
ボランティアや募金がなんの役にも立たないとは全く思わないし、実際に行動して、これらの活動をしている人たちのことをただただすごいなと純粋に尊敬している。
ここまでぐだぐだとつづってきたが
なにかと言い訳をして行動することから逃げているだけかも。
以前書いた"あなたのおかげ"の件もある。
ただの偽善に思われるのが怖いのかもしれない。
それでもやっぱり、資格の持つ力は大きいし、
資格を持たない私の力は微々たるものだ、というのが私の考えだ。
それに私は誰かのためじゃなく自分のために生きようと決めたから。
今の私は自分のことで手一杯なのだから、無理して、誰かのために行動する必要はない。
***
行動も起こさないのに悲しいとか苦しいとか憤りとか、そんな感情抱いていいのかな。
そんな風に思う資格もないんじゃないかな。
思うだけで何もしないくせに。
別に資格がとか関係ない、
偽善と思われてもいい、
誰かのためになるのか、
とかそんなことなんにも考えずに、
何かできることを探して動けばいいのにね。
なんで私は動けないんだろう。
なにが引っかかっているんだろう。
毎日毎日、そんな風に葛藤しながら働いている。
答えは出ない。
21.09.07 ぴぃ
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