東京大学 理系 数学 大問6を解いてみた
いまやっている作業がどんづまったので、気分転換にとtwitter(Xと呼ばない頑なな心)の流れを眺めたら、先日行われた東大の入試問題が流れてきて、ざっと眺めたところ6番目の問題だけ今でも解けそうと思ったので解いてみました。
そうしていろんな情報を眺めていたら、どうやらこの問6が6問中最難関という評価が多く、じゃあこれいっちょ解き方記事にしたらいっぱい読んでもらえるのではという浅はかな考えで記事にしました。
注意
この記事は実際の試験で解答用紙に残すような解答ではなく、考え方を含めて解き方を書きます。
この解き方はあくまで一例ですし、自分と全く同じ方法の回答が見当たらないのであっているか分かりません(←重要)。
noteで書くので数式とか見づらいです。
筆者が大学受験に勤しんでいたのはそこそこ前の話なので証明の書き方などのお作法はすべて忘れました。記述的におかしい表現があるかもしれません。
この解説は(2)の問題に絞って解説します。あらかじめ(1)を解いてもらえると理解しやすいと思います。
6問中最も難しい問題は試験中に解く必要がない(それより簡単な問題を完璧に回答しろください)ので、未来の東大受験生の皆さんはこの問題が解けなくても気落ちする必要はありません。ただこの記事内に出てくる考え方の中で他の問題にも利用できる考え方が何個か出てくるので、そこらへんだけでも学び取ってくれたらうれしいです。
問題((1)は省略)
解き方
問題を見た第一印象
x でくくって、x=1 のときと、(x の2次式)=1のとき解は多くても2つなんだから、どうあがいても 3 個以下じゃん。簡単じゃね(←大バカ者)
まず気づくべきこと
この問題の(1)は a=10, b=20 のときに g(n) が素数となるような整数 n を求めよというものでした(一部表現を変えています)。
この(1)を解くうえで気づかなければいけないことは、
x, a, b は 0 や負の数でもいいこと
g(x)=x*(x の2次式) という形にできること
g(x) は素数であるから、x=±1 か (x の2次式)=±1 である必要があること
g(x) の解は最大6個であること
です。1. なんて当然のことだろうと思われるかもしれませんが、意外と錯覚しやすいので注意してください(例. 第一印象時点の私)。
そして 1~3 の考え方は(2)を解くうえでも必須(恐らくそのための(1)の誘導)です。
方針
具体的な数で答えを出せる(1)とは違い、係数が a, b のままで考えなければいけない(2)ではそもそも g(n) が素数なのかどうなのかを考えることすらちょっと大変です。なのでもっと楽な条件で考えられるか試してみましょう。
例えば g(n) が正の整数となるような整数 n の個数は 3 個以下であることを示せれば、おのずと。g(n) が素数となるような整数 n の個数は 3 個以下であることも示せています。このように素数よりも楽な条件で示そうとしてみて、それでも難しいケースが残る場合は素数の特徴を使ってみて示すというやり方でいってみましょう。
回答までの道のり
まず、g(x)=x*(x^2+ax+b) と書いて、x=±1のときについて調べましょう。
(1)を解いた人は x=±1のとき、 g(x) の答えが正の数と負の数の値が出てきたはずです。それと同じように、他の a, b についても片方が正の数、片方が負の数になれば g(x) の素数候補が1つ消えます。やってみましょう。
x=1 でも x=-1 でも g(x) が正の数になる場合、
1+a+b>0 かつ 1-a+b>0 (g(x)>0 に x=±1 をそれぞれ代入)
整理して、a+b>-1 かつ a-b<1
何の変哲もない単純な 2 式が出てきましたが、ここで思い出してほしいのが a, b が整数という条件。その条件と a-b<1 より、a=b のときしか g(1) とg(-1) は両方正の数になりません。ここまで分かれば、あとは a=b の場合を調べるだけです。
a=b のとき、g(1)=1+a+a=1+2a、g(-1)=1-a+a=1
おわかりいただけただろうか?a=b のとき片方は必ず 1 になります。もちろん 1 は素数ではないので、どのような a, b に対しても g(1) か g(-1) のどちらか一方は必ず素数ではないということが分かります。
そして、残る (x^2+ax+b)=±1 のときについて調べましょう。この2次方程式の解は4つありますが、そのうち2つ以上は素数でないことを言えれば回答が出来上がります。まずはこの2次方程式を調べてとっかかりを探しましょう。また、当たり前過ぎて忘れがちですか、このとき g(x)=x または -x ですので |x| が素数でありかつ、(x^2+ax+b)=±1 を満たすことが必要です。
(x^2+ax+b)=±1 のとき、2次方程式の解の公式より
x=(-a±√(a^2-4b±4))/2 (複合任意)
まず、素数でない解を探すのに使えそうなのは、√の部分が整数になるかどうかですね。プラスかマイナスどちらかの一方のときに√の部分が整数にならなければそれだけで、n の候補が残り 4 つ中 2 つの候補が消え、一気に素数が3個以下であることが言えます。やってみましょう。
√(a^2-4b±4) が両方整数となる場合を考える。
√(a^2-4b+4)=c とすると √(a^2-4b-4)=√(c^2-8)
c が 5 以上のとき c^2-8=17>16>4^2 であることから √(c^2-8) は整数にならないことが分かります。では c が 4 以下の場合について調べてみましょう。
c=4 のとき、√(c^2-8)=√8
c=3 のとき、√(c^2-8)=1
c<2のとき、√(c^2-8) は虚数になる。
これで c=3 を満たさない a, b については g(n) が素数となる n が 3 個以下になることが判明しました。最後に c=3 について調べましょう。
c=3 のとき
x=(-a±3)/2, (-a±1)/2
x は整数なので、a は 奇数であることが分かります。c=3 という条件から他に a の候補を絞れないか見てみましょう。
また、この a は √(a^2-4b+4)=c=3
すなわち、a^2=4b+5=4(b+1)+1 を満たし、
このとき、a^2≡1 (mod4) より、a≡1,3 (mod4)
よって a が奇数であれば、c=3 を満たす 整数 b は
存在する。
そろそろ素数より簡単な条件で絞るのも限界になりました。ここで出てきた、a の条件は奇数なのでまだ無限個ありそうです。ここから先は 4 解中 2 解は素数でないことをいよいよ示さなければならなそうです。
ただ、その方法は皆目見当もつきません。こういうときは a, b に具体的に数値を当てはめてみましょう。
a=-5 のとき、a^2=4b+5 より b=5
x=(5±3)/2, (5±1)/2=4,1,3,2
このときは 1 と 4 が明確にダメなので2解以下に収まってます。ただまだ方針が見えてきません。もう少し更に調べてみましょう。
a=-7 のとき b=11
x=(7±3)/2, (7±1)/2=5,2,4,3
困りました。2,3,5 で成り立っています。ただ、思い出して欲しい。4解の内2つは、(xの2次式)=-1 すなわち g(x)=-x のときだから、この場合、x=4,3 は g(x)=-x です。なので素数になるのは 2 と 5 ときだけなのです。
ここで新たな方針が見つかりました。x の 4 解の符号がすべて同じとき、必ずそれら 4 つを代入した g(x) は必ず 2 つは負の数になる、すなわち素数の可能性があるのは 2 個以下になります。
x の符号がすべて一致する a を省いて、残りの a について g(x) を求めてみても、もう答えが出せるところまで来ていますが、最後にちょっとだけスマートに解いてみましょう。a=-5,-7のときの x の解を見てなにかに気づきませんか?気づかないならもう 1 つ調べてみましょう。
a=-9 のとき
x=(9±3)/2, (9±1)/2=6,3,5,4
そろそろ気づきました?そうですこの 4 解は連続する 4 整数になっているのです。わざわざこの順番で書いてるのが意地悪かもしれませんね。でも筆者はこの書き方のせいで、3個目の例を見るまで気づけませんでした。察しの良い方はx=(-a±3)/2, (-a±1)/2 という式でもう気づいているかもしれませんが。察しが悪くても、何個か例を調べればこういうことに気付けるということを示したくてちょっと遠回りをさせていただきました。
何はともかくこれで何が言えるのかというと、x の 4 解全ての符号が一致してるならば、その4 つの x から求まる g(x) は必ず 2 つ負の数になる。
x の 4 解全ての符号が一致していないなら、x の 4 解は連続する 4 整数なので必ず 2 つ以上の解の絶対値は 0 か 1 である。 よって求まる g(x) のうち 2 つ以上は必ず素数ではない。
つまり、例え c=3 の場合でも、g(n) が素数となる n は 2 つ以下(最初に調べた、n=±1 の場合を合わせると 3 つ以下)となることが言えました。
まとめ
g(n) は素数であるから、n=±1 か n^2+an+b=±1 である必要があり、その場合考えられる g(n) は最大で 6 つ。
n=±1 のとき、g(n) は 2 つ存在するが、a≠b の場合どちらか一方は負の数、a=b の場合どちらか一方は 1 となるため、素数となる g(n) は最大でも 1 つ。
n^2+an+b=±1 のとき、g(n) は最大 4 つ存在するが、√(a^2-4b+4)=c とすると、c≠3 のとき、n^2+an+b=1 か n^2+an+b=-1 のどちらかは実数解を持たないため、g(n) は最大でも 2 つしか存在しない。
c=3 のとき、n^2+an+b=1 と n^2+an+b=-1 の解は連続する 4 整数となる。g(n)=n*(n^2+an+b) であるから、連続する 4 整数 n の全ての符号が同一な場合、g(n) は最大でも 2 つしか正の数にならない。また連続する 4 整数 n の符号が異なる場合、必ず 2 つ以上絶対値が 0 か 1 である n が含まれ、g(n) は最大でも 2 つしか素数になり得ない。
あとはこれらの根拠となる式と共に、回答欄に記述すればダイスケ的にもオールオッケー!(今の高校生にHOT LIMITが伝わるかチキンレース)
解いてみての感想
本番の試験でこれをやれといわれたらまあ30分はかかるだろうし、なんかの条件は絶対勘違いする自信があります(なんならサムネは最初に解いてみたときのメモですがよく見ると間違えています)。
ただ難問の中でもクソ問と呼ばれる部類ではなく、むしろかなり良問の類なのではないかと思います。特に連続する 4 整数を利用するところとか、難しいテクニックではないですが、なかなかその利用の仕方をすることないだろというものでしたので、思いついたときは結構爽快でした。
再びの注意
忘れられていると思うので最後にもう一回
この記事は実際の試験で解答用紙に残すような解答ではなく、考え方を含めて解き方を書きます。
この解き方はあくまで一例ですし、自分と全く同じ方法の回答が見当たらないのであっているか分かりません(←重要)。なんか間違えていてもおかしくありません(←追記)
noteで書くので数式とか見づらいです。
筆者が大学受験に勤しんでいたのはそこそこ前の話なので証明の書き方などのお作法はすべて忘れました。記述的におかしい表現があるかもしれません。
6問中最も難しい問題は試験中に解く必要がない(それより簡単な問題を完璧に回答しろください)ので、未来の東大受験生の皆さんはこの問題が解けなくても気落ちする必要はありません。ただこの記事内に出てくる考え方の中で他の問題にも利用できる考え方が何個か出てくるので、そこらへんだけでも学び取ってくれたらうれしいです。
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