しゃべる冷蔵庫
「納豆ヒトツノ 賞味期限ガ キレマス」
はいはい。
「玉葱ガフタツ 腐リカケテイマス」
わかったわかった。
「氷ヲ作ル為ノ 水ノ量ガ 足リマセン」
わかったわよ、もうっ。うるさいわねぇ。
SONYからAI機能搭載の冷蔵庫が発売された。
ある程度の予備知識と、日常の会話などからその家庭の習慣を学習するらしい。私は普通ので良かったが、夫がどうしてもと譲らず仕方なく購入した。
管理してくれるのはありがたいが、段々と言うことが細かくなってきて、少しずつ煩わしくなって来た。
玄関の方でガチャっという音がした。
夫が帰宅したようだ。
「ちょっとぉ、ただいまぐらい言ったら?」
はいはい。
「シャツは脱ぎっ放しにしないで、ちゃんと洗濯かごに入れてよね!」
わかったわかった。
「食べたら食器片付けてね。乾くと落ちにくいから、ちゃんと水に浸しておいてよ」
あー、もうわかったよ。うるさいなぁ。
あぁ、そうか。あなたは私に似たんだね。
冷蔵庫を撫で、私は呟いた。