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真野さんと吉田くん 9話〜アフタークリスマス〜
12月に入り、空気はだんだんと冬らしい寒さをたたえ、街のそこかしこには、クリスマスを彩る電飾が飾られ始めていた。
そんなある日のこと。
僕はいつも通り勤務開始の20分前に出勤し、自分のデスクに座って仕事の準備をしながら朝礼の時間を待っていた。
いつもなら、9時からの朝礼に滑り込むように真野さんが出勤して来るのだけど、今日は時間になってもドアが開かない。真野さんが不在のまま朝礼は終わり、各々の
真野さんと吉田くん 8話 〜ハロウィンの2人〜
「なぁ、吉田」
「なんですか、真野さん」
「ハロウィンって、結局のところ、何?」
「え、なんで僕に聞くんですか?」
「吉田なら知ってそうだから」
何故真野さんが僕なら知ってそうだと思ったのかはわからないが、とりあえずググってみた。
「元々は古代アイルランドのケルト人が起源のお祭りで…」
「吉田、ごめん、もういい」
「え?」
「小平の毛糸人がご機嫌なお祭りとか、意味がわからない」
どうやら全然伝
真野さんと吉田くん 第7話〜素直になれなくて〜
吹く風も涼しくなり、少しずつ秋らしくなってきた、とある休日。僕はタナベ書店で小説を2冊購入し、なんとなく商店街をぶらぶらと歩いていた。
反対側の歩道を歩くカップルがいて、その女性が真野さんだと気づいた僕は、気づかれないよう、逃げるように近くのコンビニに入った。
僕と真野さんは恋人では無いから逃げる理由も無いのだけど、他の男性と笑顔で腕を組む姿を見て、反射的に隠れてしまった。
男性は僕や真野さ
真野さんと吉田くん 2話 七夕の話。【企画参加ショートショート】
このお話の続きです。
「あそこの本屋って、毎年七夕の時期に大きな笹を飾ってんだよな」
真野さんが言った。
「あっ、知ってます。良いですよね、子どもたちの短冊、楽しくて」
僕が言った。
同じ会社の三年先輩である真野さんは、どちらかというと事務職より、スナックが似合いそうな雰囲気の大人の女性。そんな真野さんから七夕の話が出たことが、僕はそれだけでなんだか嬉しかった。
「吉田さぁ、『あそこの笹に
真野さんと吉田くん 1話 晴れのち雨、夕陽のち虹。【短編小説】
「雨ですね、真野さん」
僕が言った。
「雨だね、吉田」
真野さんが言った。
朝の天気予報では一日晴天だと言っていた。
だが、オフィスの窓の向こうには、雨雲から降り落ちるザーザー降りの雨。
「日本中の天気予報士さん、怒られちゃいますね」
「うん、誹謗中傷の豪雨だな」
「上手いですね、真野さん」
「だろ、吉田」
ドヤ顔の真野さんが、なんだか可愛い。
真野さんは、職場の三年先輩だ。少しやさぐれた夜