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TPP? EPA?というあなたもお子さんに胸を張って解説できる(かもしれない)説明 ②TPPやEPAはなぜ生まれたか

前回の記事では、

・第二次大戦後の世界では「自由貿易を進めよう」という考え方が基本
・自由貿易を進めるため、第二次大戦後まもなくGATTが作られた
・GATTの役割と流れを引き継いでできた国際機関がWTO(世界貿易機関)
・WTOには法的拘束力があり、対象とする貿易の範囲も広い

ということをお話しました。今回の記事ではいよいよ

 ● なぜTPPやEPAが生まれたのか

についてお話を進めていきます。
この記事を読み終えるころにはこれらのアルファベット略語の意味がわかった!ちょっと親しみがわいてきた!と思っていただけるといいなあ…と願いつつ、第2話のスタートです。

WTOに加盟する国は大きく増えた

WTOが発足した1995年当時、加盟国の数は77でした。しかしその後次々と加盟国は増え、2001年には中国が、2012年にはロシアが加盟しました。現在では、加盟国数は164となっています。

世界の国や地域の数は196(日本が承認している国の数である195か国に日本を加えた数)。国連加盟数は193ですので、WTO加盟国は、かなり多いということがわかります。

ここで、素朴な疑問がわいてきます。GATTからWTOになって、加盟国はなぜこのように増えたのでしょう?それぞれの国は、どんなメリットを期待してWTOに加盟したのでしょうか。

「自由」と「無差別」がWTOの基本


「自由」と「無差別」――WTOは、この2つの考え方を基本としています。

自由とは、関税をなくし(もしくは限りなく低くし)、輸入の数量制限などは原則として禁止することを指します。これは、前回の記事で自由貿易についてお話した内容と同じですね。

そして無差別とは、輸出入についてWTOに加盟するすべての国を平等に扱い(=最恵国待遇)、国産品と輸入品を平等に扱う(=内国民待遇)ことを指します。

国による差別や輸入品に対する差別をなくしていけば、自由貿易が広がりますよね!そうすれば、世界の経済は発展しますよね!!…というのがWTOの考え方、目指すものなのですね。

経済の大きさで比べると、世界はほんの少しの「とても豊かな国」と「それ以外」


自由貿易を平等に…と聞くと、公平で良さそうな感じがします。でも、実はここにWTOの「弱点」があったのです。

ちょっとここで、世界のGDPランキングを見てみてください。

このグラフを観ると、世界の国々は、経済の規模という面から見ると、ごく小数の「とても豊かな国」と、少しの「そこそこ豊かな国」、そして「それ以外の国」から成り立ってるということがわかります。


2001年に始めた話し合いが現在もまとまらず


つまり、WTOが「世界の大半の国が加盟する機関」になったということは、とても豊かな国やそこそこ豊かな国とそれ以外の国が、「同じルールにしたがって」貿易することを目指すということを意味しています。


え?それって話がまとまらないんじゃ…?
と思ったあなた、大正解です。

立場の違う国々が集まっていることに加えて、WTOは「全会一致」つまり、みんなが賛成しなければ結論が採択できないこともあって、加盟国が増えてからの「ドーハ・ラウンド(ドーハ開発アジェンダ)」は、2001年に開始された話し合いなのに、何度も交渉が決裂したり凍結したりされながら、結論を出すことができないまま今に至っています。

利害が一致するもの同士の交渉が増加


「全員が賛成しなければ結論が出せない」WTOでルールを作るのは難しい。でも、(自分の国にとって有利な)貿易のルールづくりはしたい…と考えた世界の国々は、1990年代から利害が一致する者同士で話し合ってルールを決め、グループを作って貿易をするようになりました。

これがFTA(自由貿易協定)です。そして

  NAFTA(北米自由貿易協定) 
  TPP(環太平洋パートナーシップ協定)

  RCEP(東アジア地域包括的経済連携)

すべて、FTAの一例なのです。
(ようやくTPPまでたどりつきました!)


増加し続けるFTA

FTAのような、複数の国の間で締結される協定や条約は、WTOのルール(=WTOの加盟国は、他の全加盟国との間で公平な自由貿易を行うこと)の例外とされています(※)。

(※)貿易量の九割以上の品目を対象にする場合に限り、特定の国同士で関税を下げ合うことが認められています。

このFTAは大流行(?)となり、世界でも、そして日本も、様々なFTAを検討・交渉し、発効させています。


FTAとEPAは何が違うのか

先ほどの図のタイトルに「日本のEPA・FTAの現状」とあったことにお気づきになりましたでしょうか。この2つの違いについて、外務省のホームページでは

FTA:
特定の国や地域の間で,物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定

EPA:
貿易の自由化に加え,投資,人の移動,知的財産の保護や競争政策におけるルール作り,様々な分野での協力の要素等を含む,幅広い経済関係の強化を目的とする協定

と説明していますが、実はこれ、方便なのです。

EPA(経済連携協定)、そして、最近使われ始めたTAG(物品貿易協定)の2つは、どちらも日本が独自に使い始めた用語。これらは両方とも、世界の基準でみればFTAそのものです。

日本国内では、FTA=農産品の関税引き下げ=輸入品の増加によって日本の農業が圧迫される、との警戒が根強いため、FTAという呼び方を避けているというのが実態です。

(素直にFTAと言ってくれれば受験生の悩みが減るのに…)

***

少し長文になってしまいましたが、今回も最後までお読みいただきありがとうございました!次回(第3話)では、関税をテーマに話を深めてみたいと思います。

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