【朗読】太宰治『走れメロス』

有名なやつ、朗読しました。

こんなに、作者の筆が疾走しているのが分かりやすい作品も珍しいと思います。
ノリノリの太宰治の姿が浮かんでくるような、そんな勢いが感じられます。
文体の力強さ、弾けるようなリズムの良さ。
声に出して読むと、一層その大胆さに驚かされます。
完全に、声に出して読まれる事が視野に入っているような文章。
太宰治の作品はどれもその要素が強いと思いますが、
ことさらこの『走れメロス』は顕著な気がします。

メロスは激怒した、と、語りとしては「私」ではなく、
第三者の視点から入っているくせに、
物語が進むにつれて、実況解説のようなテンションになり、メロスを励ます声になり、
そしてメロス自身の声になりと、
「語り」という機能がいつしか「メロス」と融合していく。
読んでる側も、いつしかメロスの応援者に、
そしてメロス自身になっているという、恐ろしい引き込み力を持っているように思います。

暴君が、「万歳、王様万歳」の一言で許されたりと、ツッコミ所はありますが、
この小説は、そういう所が問題ではないのだ。
何か、大きなもののために書かれているのだ、という気がします。
沈みゆく太陽の十倍も速く走るような、その大胆さ。

暑苦しい!!と清々しく言える名作だと思います。

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