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freeeの「合理的配慮」を知る研修を全面公開します。

DEI leadのmioです。今日は合理的配慮のお話です。

「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進すること」を目的として、障害者差別解消法が平成28年4月に施行されました。
法律の改正に伴い、「合理的配慮」の義務化が令和6年4月1日からスタートしますが、それに先駆けてfreeeでも「合理的配慮を知る」ワークショップをやりましたので、資料も合わせて「あえて共有」します。

合理的配慮とは?伝えたかったメッセージ

障害のある方々が障害のない方々と同じように人権が保障されるように、それぞれの障害特性や困りごとに合わせておこなわれる調整のことです。合理的配慮は、その人のもつ障害の特性や、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものです。

「合理的配慮」という単語だけ聞くと、面倒くさいもの、腫れ物に触るようなものなのではないかと思われてしまうことを避けたいと思い、今回の研修を行うことにしました。
freeeのマネージャーの役割を担っているメンバー(freeeの社内用語ではジャーマネ(略してJM))を中心に伝えたかったのは、「合理的配慮は困っている誰かのためではなく、皆が生きやすくなるために必要なもの」というメッセージでした。

freeeのオフィス内スペースasobibaの大会場の写真。登壇者が写っている。スクリーン左に吉村が演台にいる。スクリーン右にはデザイナーのymrlと中根が座っている。
今回の研修を一緒に作ったymrl&maxと私が話す様子

社会モデル上の「障害者」になってみる

freeeのDEI(Diversity/Equity&Inclusion)研修では、入社時、全員に「自分自身がマイノリティ当事者である」ということを痛感してもらうという体験をしてもらっています。
その流れで、障害の医学モデルと社会モデルの話をしているのですが、今回の研修は、その社会モデル上の「障害者」を体感するというコンセプトで行いました。

当日slideのキャプチャが貼られている。
(復習)「障害」の考え方を知る |(Review) Understanding  "Disability"


障害には2つの観点での捉え方がある。freeeは社会モデル上の「障害」は極力なくしていきたいと考えている。
Disability can be looked at from two perspectives. freee strives to eliminate "barriers" in social models as much as possible.

医学モデル|Medical Model: 
医学的な事実に基づいて、その人が障害者であると判断する考え方
Concept of identifying a person as disabled based on medical facts.

社会モデル|Society Model: 
社会環境の不備がその人の不便を生み、その人を障害者にしているとする考え方
Concept that inadequacies in a social environment create inconvenience for the person and make them disabled.
実際の研修のslide。「障害の医学モデルと社会モデル」

前回に引き続き今回も、ワークショップを作ってくれたのはymrlさんと中根さん。ymrlさんの説明の後、ワークショップはスタートしました。

当日の写真。演台に立つymrlさん。スクリーンにはワークショップのスタートを知らせるスライド。画面奥に吉村と中根さんが座っているのが写っている。
ymrlさんの登壇する様子

会場では、3-4人のグループに分かれてワークショップが始まりました。担当分けは以下の通り。

1番の人は目かくし(または目をつぶる)|#1: Blind fold(or close eyes)
2番の人は声を出さない|#2: Can’t speak 
3番の人は普段通り|#3: Their “usual self” (no change)
4番の人は声を出さない|#4: Can’t speak

実際に障害の状態を体験してコミュニケーションをしていただくワークショップを行いました。

ワークショップを体験する様子の写真。1名が目隠しをし、1名が話すの禁止を表す×の印が書いてあるマスクをしている。その様子をカメラマンが取材をしている。
ワークショップを体験している様子
ワークショップを体験する様子。1名が目隠しをし、2名が話すの禁止を表す×の印が書いてあるマスクをしている。
ワークショップを体験している様子

実際に体験したメンバーからは、
「コミュニケーションが難しい…」
という反応が。

ワークショップでこのコミュニケーションルール以外は制限がなかったため、音声読み上げソフトを利用する猛者も居ました。

このワークで体感してもらいたかったのは、皆が自然にやっていたある行動でした。

見えてない人と、喋れない人がいる状態で、どうやってコミュニケーションする?
How do you communicate with someone who can't see or speak?

パソコンや紙に文字で書いてもらう|Ask to write  via computer or on paper
文字を読み上げる|Read out loud
指さしや身振り手振りで伝える|Use gestures 

いろんな工夫ができると思いますが、それが「合理的配慮」なのです(All of this is “reasonable accommodation”)
ニーズにあわせて、やり方を変えたり柔軟に対応する|Accommodate needs flexibly by changing methods
お互いがお互いのために、できる範囲のことをやる|Do what you can for each other
いろんな工夫ができると思いますが、それが「合理的配慮」。

お互いできる範囲で柔軟に対応すること。
コミュニケーションを諦めずに試行錯誤して工夫すること。

それが「合理的配慮」なのだと体感してもらうことで、「こういうことか」と「確かにそれがないと生きていくうえで疎外感がある」を両方味わえ、今後「合理的配慮」という単語を目にしても「当たり前のことだよね」と思ってほしい。そんなねらいがありました。

その後、各障害の特性で上げられやすい仕事上の困難さとその合理的配慮を紹介しました。

発達障害の場合の合理的配慮のケースを書いてあるスライド。
 仕事上の困難さ→
必要な合理的配慮という順に記載されている。

急な予定の変更や、臨機応変な対応が苦手→一日の業務スケジュールを立てた上で、その通りに業務を進める。
業務スケジュールに変更が生じる際には、事前に説明する。

指示を「口頭」でおこなった場合、
一度で覚えきれずに、抜け漏れが発生してしまう
→指示の内容は社内のチャットツールを使い「文章」で伝える。
マニュアルや手順書等で、作業や指示内容を随時確認できるようにする。

作業の優先順位付けが苦手なため、
複数の社員から指示をすると、混乱して
効率よく作業が進められない
→指示系統を一本化し、指示をおこなう担当者を決める。他の人から本人に直接指示があった場合は、本人から担当者に相談をして、どの順で作業を進めるか相談して決めるようにする。


マルチタスクが苦手→一つの作業が終わってから、次の作業の指示を出している。

「なるはや」「だいたい」「できるだけ早く」などの曖昧な表現から、意図を想像して業務を調整することが難しい→
作業の期限日、必要な数量などを明確にし、
具体的に説明するようにしている。
合理的配慮のケース(発達障害の場合)

障害の特性は、いつでも誰でも起こりうるケースであることを知ってほしくてこの項目を取り上げました。
特別「配慮」しなくてはいけないものというよりは、業務を「調整」することで働きやすくなる人が増えるなら、そのほうがいいよね、とfreeeのメンバーは感じてくれたようでした。

続いて、今回の改正での一番のポイントである、お客様対応時の合理的配慮についての話に移ります。

今回の4月1日の障害者差別禁止法の施行により、サービス提供側としても合理的配慮が必須になりました。

というメッセージが書かれたスライド。表が描かれており、行政機関と民間事業者が並べられている。
それぞれについて、
1)不当な差別扱いの禁止
2)合理的配慮の提供
3)環境の整備
の各項目について、行政と民間の扱いが書かれている。
主に改正前と改正後の差で民間事業者に合理的配慮の提供が義務化されたということを伝えたい表で、当該部分が赤く塗られている。
今回の障害者差別禁止法の施行に伴う変更点
ワークセッションその2のスライド。

freeeのユーザー対応では何ができるか話してみよう

例えば以下のようなケースで、ユーザー対応が必要だった場合、
どういうことができるでしょうか。(5分)
イベントに電動車椅子で来たいという方がいる
商談の電話をかけたら、聴覚障害のある方だった
サポートへ問い合わせをしてきた方が外国の方で、
日本語が得意でなさそうだった

ユーザー対応のときに、どういうケースが想定されるのか?
3人で話してみましょう。
freeeのユーザー対応では何ができるか話してみよう

先ほどワークショップをしてみたメンバー同士で、今度はお客様対応について話をしました。

実際にセールスメンバーが聴覚に障害のある方からお問い合わせを受けたケースを共有し、どのような対応をしたのか?どうしたら良かったのか?という話をするグループも、
イベントなどで電動車椅子で会場にユーザーさんがいらっしゃった場合どのようなことで困ることが想定されるか?という議論をしたチームもありました。

実際に参加者側からすると、freee側がどういう対応をしてくれるかわからないから問い合わせるにも勇気がいるかもしれない。freee側にも対応をする姿勢があることを示したほうがいいねという意見が出ました。

合理的配慮のケース(メンバーに相談されたときのお客様対応事例)

表がえがかれており、それぞれ

 freeeを利用するうえで感じる困難さ
→考えられる合理的配慮

の順で事例が紹介されている。

webサイト上でイベントの申し込みがうまくできない(視覚障害をお持ちの方)→
(前提として)webのアクセシビリティを担保する※環境の整備
電話やメールによる申込を受け付ける

聴覚障害をお持ちのお客様との商談
→
事前に質問を確認し、商談資料に商談内容を文章で記載する
webの場合chatでコミュニケーションする。対面の場合は筆談で対応する
手話を使うことのできる従業員の同伴を検討する

イベントに車いすで来場されたいとの申し出があったが、会場が完全にバリアフリー化されていない→
出入りしやすい席や段差がない区域に「関係者席」等として座席を確保しておき、そちらへ案内する
(エレベーターがない場合)裏口の従業員用エレベーターを案内する
合理的配慮のケース(お客様対応事例)

合理的配慮は、誰のためのもの?

freeeでは様々な事情がある人が働いています。個別の事情に合わせて、働きやすいように極力調整しようとする受容性の高さや、環境の変化に合わせ組織を柔軟に変化させて対応できることがfreeeの強みでもあります。

私たちが当たり前に対応しようとする公平性(Equity)が、合理的配慮とほぼ同義であることを伝え、今まで通り社内のメンバーやユーザーに向き合い続けようと思ってもらえていればいいなと思い、今回の研修を実施しました。

参加してくれたメンバーからも最後に振り返りのコメントで、
「前提が違うのは人それぞれ当たり前。だからこそ、その前提が違うことに気づいて前提を確認することは大事だ」と、頂けたので、ちゃんと伝えられたのかなとホッとしています。

こちらの研修ですが、NHKさんでも取り上げていただけました。

※2024/04/04追記:日テレさんでも取り上げていただきました。

今回の研修を、もし合理的配慮について悩まれているスモールビジネスがあればと思い、研修資料を共有します。
ぜひ社内の勉強用になど、ご利用頂ければ嬉しいです。

「スモールビジネスを、世界の主役に。」
皆が生きやすく、働きやすい社会を、みんなで作っていけるといいなと思っています。私たちもできることを一つずつ、取り組んで参ります。

freeeは「あえ共freee」というマガジンから、freeeの事業や組織に関する情報を「あえて、共有」しています!ぜひ他の記事も読んでfreeeを知ってくださいね。

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