蒐集:ROCK VOICE
ワタシは雑誌蒐集家なんですが、全号コンプリートした雑誌というのはほとんどないんです。ただ、少ない号数のものなら長年集めてれば流石に揃った!というのも少数あります。そういうものをたまに見せていく感じに。
今回取り上げるのは1970年代『ROCK VOICE』。池袋の日本楽器(ヤマハ)が運営するクラブ「ROCK MATE」会員向けの新聞で、第3次会員募集の際にこの新聞が創刊されました。ROCK MATEになるための会費は無料で、新聞無料購読の他、会員限定のレコードバーゲンへの招待、レコード割引制度、通信販売、自主企画への招待、年2回の抽選プレゼントなど、もりだくさんの特典がありました。顧客との結びつきを強くしておくことで販促を狙ったのだとは思いますが、どれくらいの効果があったんだろう?というのは気になるところです。
なぜこれを集めていたかというと、森永博志さんが編集に関わっていたからです。森永さんは原宿クリームソーダ関連の書籍で有名な編集者ですが、『ドロップアウトのえらいひと』という書籍も最高ですし、立川直樹さんとの『シャングリラの予言』という対談集も面白いです。しかしなにより文章がとにかく面白い! 視点も人とは違ってすごく興味深い。森永さんの最初期の仕事として『ROCK VOICE』に言及されることがあり、どうしても中身が見たかったのでした。
内容面は、渋谷にあった「アップルハウス」の人脈が多く反映されており、そこも興味範囲です。アップルハウスはビートルズシネクラブの浜田哲生さんが中心となった、カウンターカルチャーに興味のある若者たちの共同生活体で、ここを出入りしていた人には東由多加(東京キッドブラザース)、立川直樹、近田春夫、高校生の坂本龍一、小暮徹など、70年代に世に出て文化に影響を与えた名前が多いです。「場」ですね。
アップルハウスの隣にはアドセンターという広告制作会社があり、人が行き来していたため、アドセンターが制作していた最初期の『アンアン』にもアップルハウス関連の人脈が出てきます。なるほど、1970年代前半のサブカルチャーの重要な拠点のようだな……とアップルハウスが気になってきた方は、『団塊パンチ』vol.2の長沼行太郎「ビートルズとアップルハウスの伝説」、森永博志『あの路地をうろついているときに夢見たことは、ほぼ叶えている。』、高橋廣行『イベント仕掛人が語る「70年代ロック実話」』などを御覧ください。
『ROCK VOICE』に関しては、森永博志さんのウェブサイトに少し説明があります。というか、過去から現在に至るまで、『ROCK VOICE』に言及しているのは森永さん以外に知りません。あとはペーター佐藤さんの作品集だったかに表紙が載っているのを見たくらいです。
ぼくの初めての編集の仕事は、日本楽器池袋がスポンサーとなった『ROCK VOICE』だろう。
1970年、71年、まだ自分は20歳ほど。編集のことなど何も知らない。でもロックのレコードは毎日聴き、その感想ぐらいは書ける。レコード会社をまわって広告をもらったり。
編集長は現オノ・ヨーコの代理人である浜田哲生氏。写真とデザインは、まだデビュー前の小暮徹さんだった。
東由多加主宰の東京キットブラザースや頭脳警察の特集を組んでいた。 VOL2は「特集 帰ってきた〈黄金バッド〉」。
カバーに、東由多加氏が浜田哲生氏あてにNYから書いて送ったPOST CARDが使われている。
彼らはまだ23歳ほどだ。若い。
プロフィール5森永博志
ということで一号ずつ軽く見ていきましょう。
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ばるぼらさんの全記事アーカイヴ
2001年以降に雑誌等に書いた記事を全部ここで読めるようにする予定です(インタビューは相手の許可が必要なので後回し)。テキストを発掘次第追…
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