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ガン患者のためのケトジェニック食:本当の犯人はタンパク質なのか?

以前のnoteで、糖はガンの餌になると書いた。だが、実際は糖だけがガンの餌じゃない。

他にも、インスリン、グルタミン酸、乳酸、ケトン体までも餌にするらしい。あのお方達は、なんでも餌にしてしまうんだな。

今回は、その中でもタンパク質について振り返ってみた。植物性/動物性といった種類に関わらず、タンパク質は多く摂りすぎないように気をつけると良い、って話だ。

ガンのためのケトジェニック食で、考えることが多かった栄養素がタンパク質だ。

糖は減らせばいい。
脂は増やせばいい。

この2つはシンプルにそう考えていい。だが、タンパク質の働きは複雑だ。

ガンは老化現象の一つだと考えられている。そのため、ガンについて考える時、老化を遅らせるにはどうしたらいいか、どうしたら長生きできるか、も考える。

ガン細胞を成長させる、人体を老化させる原因は何なのか?ストレスやDNA以外で考えられる原因と言えば、食べ物だ。

食事から糖質を減らす理由は、糖はガンの餌になると考えられているからだった。

だが、

“Cancer isn’t driven by glucose nor mitochondrial dysfunctions. It is driven by growth signals, particularly mTOR.”

「ガンはグルコース(糖)や、ミトコンドリア の機能不全によって引き起こされるものではない。ガンは成長シグナル、特にmTOR(エムトア)によって動かされる」

訳はこんな感じだろうか。

糖ではなく、「mTORなどの成長シグナルに影響を与えるタンパク質の摂取量を減らすこと」が大事だ、という考え方だ。

タンパク質が少なすぎると、筋肉の維持や体の修復ができない。タンパク質は健康な体づくりのためには欠かせない。

だが、タンパク質が多すぎると、細胞の成長や分裂が増えてしまう(老化する)。

では、タンパク質の何がそうさせるのか? 

タンパク質は、「mTOR(エムトア)」と「IGF-1」を刺激する。それが問題なのだ。

■mTOR について
mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質) とは、酵素の複合体だ。酵素の複合体って何よそれ!って思うのだが、体内の化学反応(代謝)に必要なものと思っておけばいいんだろう。

mTORの役割は、体内の栄養量に応じて「細胞の成長や代謝の調節」を行うことだ。

栄養素の中で、タンパク質が一番強くmTORを刺激する。タンパク質をたくさん食べるとmTORが刺激され、「細胞の成長や分裂を促す」んだ。なので、ガン細胞や老化が増殖/促進される、と考えられている。

逆に、mTORへの刺激が少ない(タンパク質が少ない)と、人体はサバイバルモードになる。細胞の成長や分裂は停止するか、スピードがゆっくりになる。老化が遅くなる、と考えたらいい。

タンパク質が食事として外から十分に入ってこない(mTORが刺激されない)場合、生き延びるためのスイッチがオンになるんだ。

体内にあるものを使って、DNAの修復、損傷した細胞のお掃除、体内でタンパク質をリサイクルしたりする。オートファジーが活性化されるんだな。栄養が入ってこないなら、あるものを活用して体をメンテナンスし、ジッとしてやり過ごそうっていう感じだ。

ってことは、ガン細胞の成長を抑えるためには、mTORを刺激しない、タンパク質が少ない食事が良い、という考えになる。(後、若さを保ちたい人も)

タンパク質の「種類」は気にするべきなのか?
以前のnoteで、私はタンパク質を、「植物性タンパク質 > たまご > 魚介類 > 肉」の順で選んだ、と書いた。 

肉の優先順位を低くした理由は、細胞の成長を促す種類のアミノ酸が多く含まれているからだ。

この問題は、研究者によって意見が異なる。動物性のタンパク質は少ない方がいいと考えているのは、下記の参考図書④の著者であり、ハーバード大学医学大学院、遺伝学教授のDr. David A. Sinclair氏。老化研究で有名だ。

タンパク質は22種類のアミノ酸から構成されている。そして、アミノ酸は大きく3つに分かれている。

・必須アミノ酸
(必ず食事から摂る必要がある:9種類)

・非必須アミノ酸
(体内で作ることができる:5種類)

・条件付き必須アミノ酸
(体内で作ることができるが、時と場合によっては体が必要とする量を作ることができないため、食事から摂ることが望ましい。例:怪我や病気、授乳中などの時。8種類)

この22種類の中でも、mTORをめっちゃ刺激するアミノ酸ってのがある。

必須アミノ酸:ロイシン、バリン、メチオニンなどだ。

これらは動物性タンパク質に多く含まれている。なので、David A. Sinclair氏は「ウサギのように食べよう」と著書の中で言っている。長生きしたいなら、肉を減らそうぜってことだ。(また、食事回数や量を減らすことが長寿の秘訣とも言っている)

22種類のアミノ酸のうち、mTORを刺激するものは12,13種類あるようだ。アミノ酸の半分以上がmTORを刺激するなら、タンパク質の種類に気をつけるよりも、「全体のタンパク質摂取量」に気をつけるべき、と考えているのが、代謝医学やアンチイエイジングのエキスパートであるDr. Ron Rosedale氏や老化研究で有名なDr. Volter Longo氏だ。

前述した必須アミノ酸の他に、条件付き必須アミノ酸のアルギニンも劣らずmTORへの刺激が強いらしい。ちなみに、アルギニンは子供の時は必須アミノ酸としてカウントされている。成長に欠かせない、ってことだ。

アルギニンは植物性タンパク質に多く含まれているものもある。植物性タンパク質からのみタンパク質を摂る場合(ビーガンとか)、かなりの食事量が必要になる。

大雑把に言うと、動物性のタンパク質を控えても、植物性タンパク質をたくさん食べて、アルギニンなどを摂りまくるなら、mTORへの影響は一緒じゃね? 種類を制限するのは現実的じゃないよね、って考えのようだ。なので、種類よりも全体量を気をつけようと。

そこで、私は全体のタンパク質量を気にしながら、一応、上記の優先順位でタンパク質を選んだ。

■IGF-1について
ちなみに、アルギニンはIGF-1も増やす。

IGF-1とは、インスリン様成長因子 (Insulin like Growth Factor) の略。主に肝臓で作られるホルモンだ。インスリンに似た構造のため、この名前だ。

人間の健康や成長に重要なホルモンで、役割は、細胞の成長、分裂を促進、細胞死を抑制することだ。

IGF-1が過剰になると、ガン細胞の増殖スイッチがオンになる。インスリンとともに、ガン細胞が糖を取り込みやすくする状態を作るんだ。

これは、ハーバード大学医学大学院の細胞生物学者、Lewis Cantley, Ph.D.の発見だ。

ガン細胞は、PI3Kという酵素を活性化させる機能を持っている。このPI3Kは、ガン細胞の壁に穴を開け、糖を流し込んで、細胞の成長速度を加速させる。インスリンとIGF-1は、PI3Kを活性化させる。なので、インスリンとIGF-1が体内に過剰にあると、ガン細胞に餌をめっちゃ与えてしまうことになるんだな。

mTORとIGF-1へのこれらの影響を考えると、ガン患者の場合、タンパク質は減らす方が賢明かな、と思う。

■では、どれくらいのタンパク質を食べたらいいの?
ガン患者としては、「Lean Body Mass(LBM): 除脂肪体重」x 0.6gがよいという考えがある。(Ron Rosedale氏)

体脂肪率を知っていれば、LBMは計算サイトで算出できる。
例)体重60kg、体脂肪率25%の場合、LBMは45kg。45kg x 0.6 =27.6

27.6gが目標のタンパク質量となる。カロリーは、112kcal。鶏胸肉100g位。少ない。

なお、ガンの話抜きにして、栄養科学の世界では、理想的なタンパク質の摂取量はまだ議論中のようだ。

摂取量の目安として、「理想体重」の1kgあたり0.8g〜1.2gが適量だという考えが現在は一番ポピュラーだ。理想体重が60kgだと、 48〜72gのタンパク質、例として鶏胸肉300g(タンパク質:約64g)を食べるとこの範囲に入る。

また、タンパク質の摂取量は、年齢によっても変わる。30代まではタンパク質をモリモリ食べても大丈夫。40代〜65歳まではタンパク質少なめにして、65歳以上は30代の頃より多めに摂ると良いらしい。

タンパク質について少し知識が増えた後、私はタンパク質量に気をつけながら、炭水化物の量を増やし、運動を始めた。

下記は、私の2017年9月の各栄養素のカロリー摂取のチャート。縦軸はカロリー。

真っ赤だな…

緑がタンパク質、水色が炭水化物、赤が脂質だ。チャートを見ると、タンパク質の摂取量が炭水化物より少ない日が多いな。私のタンパク質のメインターゲットは55gだが、上記の考え方だとこれでは多すぎる。その日の活動量などに合わせて20g〜50gの幅でタンパク質を摂っていた。

今回、ガン時代のケトジェニック食、主にタンパク質のことを振り返った。が、この件について最近腑に落ちないことがある。今後また、それについて書いてみたい。

うーん。代謝って、難しい。
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参考図書:
①The Metabolic Approach to Cancer
-Dr.Nasha Winters, ND, Jess Higgins Kelly, MNT-

②Outlive
-Dr. Peter Attia-

③Change your diet, change your Mind: A powerful plan to improve mood, overcome anxiety and protect memory for a lifetime of optimal mental health.
-Dr.Georgia Ede-

④Lifespan 老いなき世界 -Daivd A. Sinclair PhD with Matthew D. LaPlante-

⑤新版・科学者たちが語る食欲 食欲人 -デイヴィッド・ローベンハイマー、スティーヴン・J・シンプソン-

*①〜③は日本語翻訳本なし
*Dr. Ron RosedaleはYoutubeなどより

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