『謀略と戦争を仕掛け、敗北するアメリカ』やまたつ【試し読み】
台湾有事で、米軍は助けに来ない!?日本は極限での選択を迫られる。中国の“覇権パワー”で壊される世界秩序。
北米在住の人気ユーチューバーが、現地の1次情報から、世界情勢のリアルを読み解く。
はじめに
2021年アフガニスタンからの屈辱的な敗走、2022年ロシアのウクライナ侵攻、そして2023年イスラエル・ハマス戦争。
2021年1月20日にバイデン政権が発足して以来、世界で大きな紛争・戦争が発生し、世界秩序が崩壊していっています。
この背景には、日本の最大の同盟国アメリカの経済・軍事・政治面すべてにおいての内部崩壊があります。
バイデンインフレに国民は悩まされ、国債は膨れ上がり、米軍は深刻な人手不足で縮小し、一方で、トランプ前大統領をはじめとする保守系の人々を「国内テロリスト」と呼び、司法を武器化して自国民を徹底弾圧。まさに失敗した独裁国家です。
いまの民主党は完全に左翼に乗っ取られていますが、左翼が生き残る術は「常に敵をつくり続ける」ことです。反マスク、反ワクチン、反中絶、反LGBT、反銃規制など、ありとあらゆるトピックで国民を分断し続けた結果、国家の生産性はまったくあがらず、アメリカはゆっくりと沈没していっています。
超大国アメリカの存在感・信頼が低下しているチャンスを生かそうとしているのが、中国であり、ロシアであり、中東・アラブ地域であり、BRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)です。
特に中国は世界2位の経済力を背景に、グローバルサウスと呼ばれる新興国を味方につけ、習近平の異例の3期目政権が決まり独裁化と暴走が止まらず、世界秩序をつくり変える中心国になっています。
「台湾有事は日本有事」という言葉が広く使われるようになったとおり、中国の台湾侵攻の危険性が高まりつつあります。従来の強いアメリカがいれば、「まぁ、なんだかんだ何も起きないでしょ」で済ませられていましたが、そうも言えないほど台湾情勢は緊迫化し、日本が巻き込まれる可能性が現実味を帯びています。
ここまで世界が変わった背景にはアメリカの衰退だけでなく、アメリカが長引かせているロシアのウクライナ侵攻があることは間違いないでしょう。
世界中でインフレ爆発の引き金になった出来事でしたが、2022年2月24日にロシアがウクライナ侵攻を開始して以来、停戦の兆しはみえません。
2022年3月~4月にかけ、和平合意が成立しそうになりましたが、それをぶち壊したのはバイデン政権だと言われています。
バイデンが大統領選挙で勝利したとき、「外交玄人のバイデンが大統領になれば、世界は平和になる」というトンチンカンな発言をしていた“センモンカ”もいましたが、バイデン政権こそが世界秩序を乱し、尾を引くことになる問題を積み上げまくっている諸悪の根源です。
2023年2月にユーチューブで公開されたインタビュー動画で、ネフタリ・ベネット元イスラエル首相が和平合意は「アメリカにより妨害された」可能性を示唆。
10月には元ドイツ首相で和平交渉に参加していたゲアハルト・シュレーダーが「アメリカが和平を認めなかった」と、アメリカによる妨害があったことを明かしていたのです。
このような言説は“陰謀論”という三文字で片づけられる傾向にありますが、アメリカがロシアを疲弊させることを狙い、当事者(ウクライナ)の意向を無視した謀略を仕掛け、戦争を長引かせているかもしれないのです。そして、その謀略は巨大なブーメランとなって、自らに突き刺さることになっています。
このような当事者無視の身勝手なことをしているアメリカと距離を置くことで、グングンと存在感を増しているのが中国やBRICSで、世界秩序・世界のパワーバランスは変わろうとしています。どこかの国やグループがトップになるのではなく、様々な国が肩を並べる世界がやってくると考えています。
つまり、従来のアメリカに追従するだけでよかった世界ではなくなるかもしれないのです。
ロシア制裁の反動で多くの国が痛感したのが、いくつもの戦争・紛争を引き起こしてきたアメリカにつき従い続けるのはデメリットでしかないほど、各国のパワーバランスは変わってきているということです。
急成長する国が増えている中、日本は今のままで本当に良いのかを判断するためには、何となくの雰囲気ではなく、世界で何が起きているのかを把握する必要があります。
本書では、バイデン政権発足以降、その“謀略”まで射程に、世界で何が起き、どのような変化が起きているのか。急激に悪化する米中関係と高まる中国の台湾侵攻の可能性。アメリカは中国に対して本気で動くのか。世界のパワーバランスに変化を与えうる11カ国体制に拡大したBRICSのポテンシャル。そして、世界の行く末を決める2024年大統領選挙の展望まで紹介します。
本書が激動の世界情勢を読み解き、日本の未来を考える一助になれば幸いです。
第1章 イスラエル戦争は第三次世界大戦の序章なのか
1 ハマスを育てたイスラエルの大誤算
ハマスの奇襲テロ攻撃
2023年10月7日午前6時半、武装組織ハマスがイスラエルに対する陸・海・空からの奇襲テロ攻撃を始めた。
数千発のロケット砲弾がイスラエルに降り注ぐ中、動力付きパラグライダーによる空からの侵入、スピードボートを使った地中海側からの侵入、バイク等の陸からの奇襲攻撃を1000人以上のハマス兵が電撃的に仕掛け、イスラエルは甚大な被害を出すこととなりました。
9月29日、ジェイク・サリバン国家安全保障補佐官が「20年前と比較し、今の中東はとても落ち着いている」と発言した8日後の出来事だった。
10月8日、イスラエル基本法第40条の適用が承認され、ハマスに対する「宣戦布告」をし、野党と合同で戦時統一政府を発足させています。
このイスラエルとハマスの戦争に関して、私は全面的にイスラエルを支持するつもりはありません。理由は後述する領土問題やイスラエルのアパルトヘイト問題などを踏まえ、パレスチナの人々のことも真剣に考えるべきだと思っていて、今回の奇襲テロ攻撃を理由に水に流すのは違うと思うからです。
強調しておきたいのが、ハマスによる奇襲テロ攻撃は決して許されることではありません。パレスチナを応援している多くの人に欠けているのがコレだと思っていて、テロを賞賛するような連中の話を聞くには毛頭なりません。
イスラエルとパレスチナの戦争と言われますが、正確にはイスラエルの「シオニスト」とパレスチナの「ハマス(とそれを支援する国・勢力)」の戦争です。
シオニストとは、ユダヤ民族国家樹立を目指す「シオニズム」運動・思想を持つ人を指します。
現時点では地域紛争ですが、参戦国が増えることにより第三次世界大戦に発展することが危惧されています。
パレスチナ問題は領土問題
そもそもイスラエルとパレスチナの間にどのような問題があるのかを簡単に整理します。
キリスト教、ユダヤ教、イスラム教という、3つの宗教の聖地がある地はイスラエル・パレスチナのユダヤ人とアラブ人による領土紛争が続き、第一次世界大戦中のイギリスによる「三枚舌外交」が原因でややこしいことになり、そこに欧米の政治的思惑が絡み、手のつけようのない状態になっています。
3000年以上前、この地域にユダヤ人によるエルサレム王国が建国されましたが、度重なる侵略で崩壊、ユダヤ人は世界に散っていきました。そこに周辺に多く住んでいたアラブ人が住むようになりましたが、やがてユダヤ人が戻ってくるようになり、領土紛争が起きます。
第一次世界大戦中、イギリスは1915年アラブ人の中東独立を「フセイン=マクマホン協定」で約束、1916年にフランス・ロシアと戦後の領土割譲の秘密協定「サイクス=ピコ協定」を結び、1917年には「バルフォア宣言」で、ユダヤ人にパレスチナのユダヤ民族国家樹立を約束した。
アラブ人には、当時戦争敵国だったオスマン帝国内部で反乱を起こさせ、フランスとは戦後のスエズ運河利権を取られないように事前に話をまとめ、ユダヤ人からは資金とアメリカでのロビー活動を狙ってのものでした。
先述の「政治的思惑」というのは、このユダヤ人の潤沢な資金、影響力のことで、特にアメリカでは今でもユダヤ系団体を意識する傾向にありま
す。戦後、英仏は秘密協定に則り中東の分割をします(ロシアは革命の影響で協定離脱)。
アラブ人からすると、中東全域に独立国家をつくれると思っていたので不満が高まります。ユダヤ人にはパレスチナ入植を認めたわけですが、大量にやってくるユダヤ人とアラブ人の間で対立が起き、年間の受け入れ人数の制限を設けるも、ユダヤ人は無視。やがて、第二次世界大戦中のユダヤ人迫害から逃れてくる人が増えました。
戦後収拾がつかなくなったため、イギリスは国連に問題解決を丸投げ、1947年に国連が分割案を提案し、①聖地エルサレムは国際管理、②パレスチナの56.5%をユダヤ人に与え、③43.5%をアラブ人国家にするというものが決められました。
しかし、パレスチナ全人口の3分の1しかいないユダヤ人に多くの土地が与えられるもので、1948年にはイスラエルが建国されると、アラブ人の居住地が制限されることにアラブ連盟諸国が猛反発。第一次中東戦争にまで発展しましたが、英米の支援を受けるイスラエルが勝利しました。
ここまででお分かりのとおり、「パレスチナ(ハマス)が悪い」「イスラエルが悪い」という議論の前に、イギリスの身勝手な行動により複雑化した領土問題であることを忘れてはなりません。
日本はパレスチナを国家として認めていませんので「パレスチナ自治区」と呼んでいます。ヨルダン川西岸地区とガザ地区に分かれていますが、まとまっていません。パレスチナ解放機構(PLO)の政党「ファタハ」がヨルダン川西岸地区を統治し、ガザ地区をイスラム原理主義組織でムスリム同胞団から派生した反政府勢力「ハマス」が支配しています。
ハマスはテロ組織に認定されていますが、パレスチナ自治区の政党です。イランやレバノンのヒズボラの支援を受け、定期的にイスラエル軍と衝突してきていました。
ハマスは単なるテロ組織ではない
信じがたいことですが、ハマスはパレスチナ議会(立法評議会)の過半数を占めています。最後に選挙があったのが2006年1月で、132議席中76議席の単独過半数を獲得し、当時の首相はハマスから選出されていました。
選挙結果を見てみると、比例区での獲得議席はファタハもハマスもほぼ同じため、パレスチナ人の支持は拮抗していたと言えますが、大選挙区の結果で大きくハマスが議席を伸ばしていました。ファタハは候補者乱立による票の分散が起きた一方、ハマスは綿密な選挙戦略をとったことで、議席を伸ばしたのでした。
パレスチナ議会選挙は2021年5月に15年ぶりに予定されていましたが、無期限の延期が発表されています。
表向きの理由は、イスラエル政府が東エルサレムで選挙を実施することを拒否したためとされていますが、イスラエル政府はパレスチナ自治政府の主張を否定、仲介をしていたEUもパレスチナ自治政府の主張を否定しています。
カーネギー国際平和財団は2021年5月11日の報告で、真の理由はハマスが圧勝する可能性が高かったからだと指摘します。
3月にイスラエル公安庁トップがアッバス議長と会談し、ハマス圧勝の危険性がある分析結果を伝え、その後アッバス議長が選挙延期を決めます。つまり、イスラエルの説得で選挙が延期された可能性があるのです。
イスラエルとしては、ハマスの台頭はムスリム同胞団のような過激派の活動が活発になる懸念から防ぎたかったよう。周辺国も同意見で、たとえばエジプトはムスリム同胞団が反政府活動を続けていますし、ヨルダンもハマスの台頭を回避できたことを歓迎していたようです。
ちなみに、ハマスの母体は元々が慈善活動団体で、ハマスは政治・慈善活動・テロ活動という、3つのいびつな組み合わせの顔を持つ組織です。
イスラエルと敵対しているレバノンのテロ組織ヒズボラも、「レジスタンスへの忠誠」という議会会派で政治活動をし、2006年から連立内閣に参加、2018年選挙ではレバノン議会の128議席中71議席を獲得しています。学校や病院の建設を行い、貧困層の支援をしていることで支持を集めていて、政治・人道支援とテロ活動をする組織なのです。
もくじ
第1章 イスラエル戦争は第三次世界大戦の序章なのか
1 ハマスを育てたイスラエルの大誤算
・ハマスの奇襲テロ攻撃
・パレスチナ問題は領土問題
・ハマスは単なるテロ組織ではない
・「イスラエルの9.11」
・ハマスの奇襲テロ攻撃は偽旗作戦だったのか?
・テロ組織に翻弄されていた世界最高峰の諜報国家
・イスラエルのアパルトヘイトの実態
・イスラエル戦争の最悪のシナリオ
・第三次世界大戦のカギは「タコ」
・バイデンが世界大戦の引き金を引く
2 混乱ばかりのバイデン外交
・イランvs.サウジアラビア
・サウジアラビアはペトロダラーシステムに歯向かうのか?
・迷走する核合意
・トランプとバイデンのギャップ
・アフガニスタン敗走
・サウジアラビアとイランが正常化合意した理由
3 中国が支配する大変革時代へ突入
・「さらばアメリカ、こんにちは中国」
・シリアのアラブ連盟復帰から分かるアラブ諸国の本音
・G7サミットにぶつけられた2つのサミット
・イラク戦争以来最悪の外交政策
・100年に一度の大変革時代の到来
第2章 軍事大国アメリカの沈没
1 戦争どころではないアメリカ国内事情
・人民解放軍の急拡大
・過去50年で最悪の入隊率
・なりふり構わぬ入隊条件の緩和
・多岐に渡る米軍没落の原因
・米軍の崩壊を食い止めようとしたトランプ政権
・”多様性”に酔いしれる虹色社会正義マン集団の実態
・特別待遇のトランスジェンダー兵
・トランスジェンダーの権利と女性の権利は衝突する
・次の制服組トップは怪物級の左翼?
2 アメリカは本気で戦う気はない!?
・スパイ気球問題の実態
・「恐怖を送り込むサイレントキラー」
・キューバに中国がスパイ基地建設
・すっからかんの戦略石油備蓄
・なぜ戦略石油備蓄が急減したのか?
・国家安全保障を中国に売り渡したバイデン政権
・崩れた文民統制
3 台湾有事、日本は何をすべきか
・台湾侵攻の可能性
・曖昧なアメリカと台湾の関係
・台湾侵攻は”いつ”起きるのか
・台湾侵攻が早まる可能性
・台湾有事、勝つのはどっち?
・台湾侵攻で暴落する世界経済
・侵攻に備えて日本ができること
第3章 経済ではズブズブな米中関係
1 米中半導体戦争
・バイデンがこぼした中国への”本音”
・バイデン政権の半導体規制は本気か
・しのぎを削る半導体争奪戦
・世界を変えた2022年10月7日規制
・半導体規制が与える日米企業へのダメージ
・抜け穴だらけの規制
・追撃の投資規制は効果があるのか
2 中国市場に未練たらたらな面々
・中国市場を捨てられないアメリカ企業
・半導体市場の3分の1を占める中国依存の実態
・言論の自由は中国に握られている
・中国依存か脱中国か
・教祖習近平を信奉させられている
3 中国に依存する環境左翼政策
・「地球を救う」の本質
・無意識の中国共産党支援
・環境汚染大国中国を支える〝クリーン〞エネルギー産業
・山積みになる電気自動車
・電気自動車はアメリカ自動車産業の衰退を招く
・日本もイギリスとビル・ゲイツの転身に続け!
第4章 ロシア制裁が招いたBRICSの台頭
1 謀略だらけのウクライナ戦争
・ロシアのウクライナ侵攻、割れる見解
・ノルドストリーム爆破は誰が仕掛けたのか
・ロシア制裁で儲かった国
・西側諸国のクビを絞めたロシア制裁
・なぜあのオリガルヒは制裁されなかったのか
2 BRICSの台頭
・BRICSと新開発銀行
・BRICSサミットの成果
・加盟した6カ国
・11カ国体制のBRICSのポテンシャルと未来
・BRICSは一枚岩ではない
3 次の覇権を決める”脱ドル”の行方
・ドル決済から自国通貨決済
・脱ドルは“現時点では”難しい
・脱ドルはすでに失敗していた
第5章 日本の未来を決める2024年大統領選挙
1 岐路に立つアメリカ
・アメリカ建国史上最重要の選挙
・大統領選の次に重要な連邦上院議員選挙
・盗まれた2020年選挙
2 トランプ復活に立ちはだかる敵
・武器化する司法
・トランプ潰しの刺客ジャック・スミス特別検察官
・ゴミのようなジョージア州起訴
・共和党候補のビベック・ラマスワミーの怪しさ
・選挙の構図を変えたロバート・F・ケネディJr.
・2020年に揉み消された不正選挙捜査
・2024年選挙でトランプが勝つ条件
ここまでお読みいただきありがとうございました。本書は全国の書店・ネット書店で発売しています!ぜひお手に取っていただけたら幸いです、よろしくお願いいたします。
\ 2023年12月1日発売 /
謀略と戦争を仕掛け、敗北するアメリカ
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