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【ソリューション営業の基本戦略】/高橋 勝浩

ソリューション営業の基本戦略

新規性  :★★★☆☆
有益性  :★★★★☆
おすすめ度:★★★★☆

■この本で解決できること

御用聞き営業は時代遅れと叫ばれる中、とはいえ問題解決型の営業がなぜ必要で、どのように進めていけば良いのか分からない方も多いでしょう。この本はそれらが解決できる一冊です。

■この本で伝えたいこと

 ●問題解決型営業(ソリューション営業)の背景

ターゲットを定める

経済学ではパレートの法則と呼ばれる、投入したものの20%が成果の80%を占めるというものがあります。企業の売上でも、主に上位20%のお客様や製品で、売上全体の80%を占めています。

これを営業の世界で適用させると、20%の重要な案件を成功させることで80%の業績が決まってしまいます。したがって、すべての案件に同じ努力を注ぐのは間違っていると言えます。

では、どのように優先順位をつければよいのでしょうか。「商談の期待値」という切り口で、優先順位をつけます。これは、「商談の魅力」から「商談における障害」を差し引いたものを指します。

商談の魅力の要素としては
①潜在的な需要(点数化することがポイント)
②ニーズの緊急度(担当レベルではなく会社として)
③自社のメリット(金銭的利益、取引による波及効果、実績やノウハウ)
④競合状況

商談における障害とは
①営業計画・戦略の問題
②営業スキル・知識の問題
に分けられます。

これらを加味し、商談の期待値によって優先順位をつけていきます。
決して思い込みや希望だけで案件の優先順位を判断せず、商談途中であっても絶えず見直すくせを付けることが重要です。
※障害も小さいが魅力も小さい商談やお客様にパワーをさくと、売上は上がりにくいです。

問題解決型の提案営業とは何か

商品・サービスの提供や取引関係を通じて、お客様が抱える問題の解決に役立つことを目指した営業スタイルのことを指します。

問題解決型の提案営業では、「商品・サービスの効用」と「お客様が抱えている問題」をマッチングさせることが営業担当者の使命と言えます。

また、問題解決には3つのレベルがあります。
商品レベルのニーズだけでなく、業務レベル、経営レベルのニーズを解決できる提案によってインパクトを上げることが重要です。

 ●提案する中身のつくり方

まず、お客様の真の問題を把握することが出発点となります。お客様が求める商品ニーズ(〇〇が欲しい)から、「なぜ欲しいのか?」を掘り下げていきます。

それが「コスト削減」という経営ニーズまで下げられた時点で、次に「コスト削減」を実現するための最適な手段という観点で、もう一度商品ニーズまで具体化させます。

これをすることで、本質的なニーズにマッチした解決策を提案することが可能になります。

この深掘りの際に大切なのが「仮説を立てる」ことです。

仮説を持って商談をすることにより
・商談サイクルの大幅な短縮
・信頼関係の構築
というメリットがあります。

仮説営業の重要性は、営業 野村證券伝説の営業マンの「仮説思考」とノウハウのすべてをご参照ください。

お客様のビジネスを理解し、あるべき姿とのギャップから仮説を立てていきます。この際、あくまで仮の答えなので完璧さを求めずに常に検証していくことが重要になります。

ギャップそのもの=「目標と実際の成果の比較」
ギャップを引き起こしてるもの=「変化や高い目標設定」
→見直す可能性があるもの
・戦略
・関連するビジネスプロセス
・人や組織
・システム・ルール
・商品・サービス
・人・モノ・カネの調達方法

※仮説を立てるときは、確認できた事実と推測したものを明確に区別する

また、お客様の課題に対する解決策を提案する前に、「提案のコンセプト」を伝えることが重要です。そうすることで、お客様自身と解決策の方針や範囲の合意が取れるので、提案内容がズレるということがなくなります。

したがって提案のコンセプトとは、「解決策よりも抽象度が高く、解決策の範囲を決めるもの」と定義できます。
ポイントは、お客様の収益に結び付くようなストーリーになっているか、お客様の課題との関連や他の解決策との違いが明確かという点になります。

 ●ソリューション営業の進め方

ソリューション営業を進める上で重要なことは、以下の3点です。
①商談相手を見定める
②購買プロセスを把握する
③商談シナリオを描く

まず重要なのが、本当に会うべき商談相手は誰かということです。
購買関係者は主に3つの役割がおり、
・キーパーソン…最終決裁者(収益の向上やイメージ向上が関心事)
・チェッカー…ふるい分ける人(基準を満たしているかが関心事)
・ユーザー…直接利用する人、使用状況を直接監督する人(仕事がスムーズになるか、負担が減るかが関心事)

彼らにはそれぞれ記述したような組織としての関心事(ニーズ)があるが、それを満たしているだけでは人は動きません。
本音の動機や隠された動機である個人ニーズを満たすことが重要になってきます。※1つと限らない
・権力や支配
・リスクの回避・安全
・周囲からの承認・評価・参照
・帰属の欲求、能力の確信・達成
・新奇なものへの興味・関心、個人的な事情・思い入れ

次に重要なのが購買プロセスの把握です。購買プロセスは以下が循環しています。
①問題の認識
②解決方針の検討決定
③解決策の評価・決定
④解決策の導入
⑤環境・内部の変化による見直し→①へ

ソリューション営業では、お客様が問題を認識したとしても「何もしない」という決定も競合になります

一方で商談プロセスとしては以下となります。
①情報収集とニーズの探索
②商談設定(コンセプト訴求)
③解決策の作成
④解決策の合意
⑤解決策の実行
⑥アフターフォロー

最後に、商談のシナリオを描くということです。
複雑な商談を計画的に展開するために必須と言えます。

そのうえで、危険シグナルを事前に把握することも重要な作業です。
危険シグナルの一例は下記となります。
・組織の変更・担当者の変更
・重要な情報が提供されない
・購買関係者の情報不足(誰がキーパーソンか不明、関心事が不明)
・競合に関する情報不足
・予算の出どころが不明
・決済プロセスが決まっていない
・必要な情報のフィードバックが遅い
・業績の急落
・商品やサービスのクレーム

これらを察知した場合、アプローチ先を変える、情報提供してくれる人に依頼する、社内のメンバーからの支援を受けるなどが対応策として挙げられます。

 ●障害とリスクの乗り越え方

購買責任者であるキーパーソンと商談を早めにすることが早期契約には非常に重要なファクターとなっていますが、キーパーソンへのアプローチが滞るケースは多いと思われます。
その理由としては、
①キーパーソンが不明
②キーパーソンに近づけない
③キーパーソンに会うのが怖い・自信がない
に場合分けできます。

①への対策としては、役職から見当をつける・直接聞き出すなどが効果的です。
②への対策としては
・キーパーソンに会うメリットを伝える
・担当者を迂回する
・チームで営業を行う(上司を活用する)
などがあります。
③への対策としては、彼らが望む情報を準備することや、必要以上に偉い人だと思いこまないことなどが挙げられます。

キーパーソンに会うメリットを伝える

というのがなかなか難しいかと思います。

担当者が上席者を同席させるときの心理は2つで
①営業担当者の提案する解決策がよほど気に入り、何としてでも通したいが、予算確保の観点からキーパーソンを巻き込んでおかないと実現できない。
②担当者の権限やリスクの範囲を超え、この先自分が担当するにしても上席者にも一緒に話を聞いて判断してもらいたい。という一種のリスク回避。

この心理を利用して、
・キーパーソンを同席させることによって担当者の仕事がしやすくなることを訴える。
・解決策を推進するうえで部門間の調整など一担当者では手に負えないような事態が発生し、そのことにより担当者の仕事が非常に大変になることを伝える。
・経営的な判断が必要とされるので、ぜひキーパーソンにも同席してほしい旨を伝える。
などが具体例となります。

また、危険シグナルを察知した際に情報提供してくれる人がいると安心です。彼らのことをコーチと呼びます。

コーチが教えてくれることは下記です。
・お客様がどのような問題やニーズを抱えているのか
・お客様の組織内の意思決定プロセスや方法
・購買関係者についての個人の情報
・購買関係者に接触する場合、どのような戦術をとるべきか
・訪問や商談がうまくいかなかった場合の理由やヒント
・競合会社について
・お客様の組織内での人間関係

また、良いコーチの条件は下記です。
・あなたを信頼している
・アプローチ先の企業で信頼されている
・正しい情報を提供してくれる

最後に、優れた営業パーソンとは、常にトップ成績を残せるという点が優れおり、並の営業パーソンと異なる点です。
業績が乱高下しないためには、期待値で計算することが重要です。これは、受注見込み時期と受注確率を踏まえて、自分の注ぐパワーをどのように割り振るかによって期待値を最大化させる作業によって実現させることができます。

■この本から得た教訓

気づき

すべての案件に同様に力を注ぐのではなく、優先順位をつけてアプローチすることで売上の最大化につながる。(KPIが受注数などのときはこの限りではない)

明日からできること

各案件のありたい姿と現状を整理する。


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