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『わけるとつなぐ』 〜ちゃんと考えるって、何?〜

『わけるとつなぐ』を読了。

「ちゃんと考えろ!」「ちゃんと考えたの?」
私たちは人生の中で、何度こんな言葉を言われてきただろう、そして言ってきただろう。

でも、「ちゃんと考える」って何?

著者はこう言う。

ちゃんと考える = 「わける」 + 「つなぐ」

本書ではこの「わける」と「つなぐ」を、弱小女子高校サッカー部のキャプテンが「ちゃんと考える」ことによって、チームメイトと一丸になって悲願の一勝を目指す物語を通じて教えてくれる。

この、物語というのがミソ。

一般的なビジネス書だと、事例と解説が書かれていて、読んだときは「わかった!」って思うんだけど、いざ実践してみようとすると「あれ?」ってなることが多い。
いざ自分に当てはめてみようとすると、いきなりつまづいたりしてしまう。それって結局私は「事例の解説」がわかってただけで、その解説が成り立っている「要素」を本当に理解していなかったからだ。

物語の主人公は普通の女子高生アヤ。
アヤの質問は、私にとって「そう!まさにそれ!」って感じだった。
「奈々の彼氏に(試合を)観に来てもらうべきかどうか問題」では、課題を決めた後に、単純にみんなに意見を出してもらって多数決で決めるのではないと感じたアヤが言った「どう進めたらいいかわかりません」なんて、「わかる〜!」そのものだった(笑)

でも、この「奈々の彼氏に(試合を)観に来てもらうべきかどうか問題」は例としてはすごく良くて、「けっこう」とか「かなり」とか「ちょっと」みたいな、曖昧な感情を仮の数値にすることで、具体的にどれぐらい違うものなのかをハッキリとさせることができることが分かるからだ。

こういう感情が含まれる問題って、実際なかなか難しい。
この例でも、奈々は本当は観に来て欲しいけど、必死の顔を見られたくないとか、負けたらカッコ悪いとか、足が太いのがバレるとか、そんな気持ちが邪魔してしまって決められなくなっていた。

そこでまず、彼氏の応援を「あり」と「なし」分けて、さらにその先を「勝ち」と「負け」にわける。で、それぞれに奈々の恋への影響度を数値化して比較すれば、どうしたらいいのかが客観的に決められる。
結果、「観に来てもらった方が8倍良い影響がある」ということで、奈々は彼氏の駿太を試合に誘うことに決めた。

実際この試合が奈々の恋にどんな影響を与えるかなんて、わからない。試合に勝てるかどうかもわからない。
でも、そういう不確実な物事に対しても、「ちゃんと考える」をすれば、行動につながる答えを出すことができることを、この例は教えてくれる。これは、実は一番参考になったかも。

もちろんその他にも、彼女たちはいろんな課題をわけて、つないで、行動していく。
そうしてたどり着いた試合のシーンでは、グッときて涙ぐんでしまう場面もあり、女子たちの成長物語としてもつい楽しんで読んでしまった。

SWOT分析、ロジックツリー、PDCAサイクル…などなど、そんなフレームワークの名前を覚えたり、使い方を教えてもらうよりも、大事なのは自分で「ちゃんと考える」こと。
先日読んだ『Au オードリー・タン』にもつながるような、問題解決へのアプローチが、ものすごくわかりやすく、しかも楽しく読めてしまう、サイコーな一冊。

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