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『バグトリデザイン』 〜てんこ盛りのカゴの前で立ち尽くす私を救うのはデザインかもしれない〜

『バグトリデザイン』を読了。

ここ何ヶ月は、週に1回スーパーに行き、一週間分の食料をまとめて買っている。
まとめて買うので、いつもカゴはてんこ盛りだ。
レジは必ずセルフレジを使う。で、ここで問題が起こる。

スーパーに行く時、私は必ず買い物リストを作成する。
リストをもとに、まず何からカゴに入れるかというと、重いもの、もしくは硬いものだ。そしてだんだんと軽いもの、柔らかいものを入れて、最後にレジに向かう。

もう何が問題か、わかりますよね。

そう、買い物カゴからエコバッグに入れる時も、もちろんカゴと同じように重いもの、硬いものから入れていきたい。でも、それらはてんこ盛りのカゴの奥底に埋まってしまっているのだ。

一時的に置く台みたいなのがあるじゃない。と、あなたは言うだろう。でも、無理。てんこ盛りだから、あんな小さな台じゃ足りないの。
そして私は毎週「なんとかならんかのー」と思いながら、カゴの奥底から商品をかき出しながら、無心でバーコードを読み取らせる。(時には読み取り音を「ワン!」とか「ニャ〜」とかいわせながら。)

こんな風に私たちの日常を見渡すと、「行為が阻まれる事象」があふれている。
著者はこれを「バグ」と捉えていて、バグを見つけ出して解消するデザインをタイトルでもある「バグトリデザイン」と呼んでいる。
デザインは「モノ」だけじゃない、「行為のデザイン」ももちろん含まれる。

本書では、このバグの見つけ方から始まり、解決策を導き出すワークショップの進め方までがまとめられている。
バグの種類・原因とその因子の定義の仕方はすごくわかりやすいし、そうやって因数分解することで、何がどう問題なのかがスッキリしてくる。
さらにはそれに対して、アイデアが出やすい効果的なディスカッションの方法なども書かれていて、数多くのワークショップを開催してきた実績が余すところなくまとめられている。

実は十数年前、著者の村田さんにお会いしたことがある。
ドイツで行われた同じ展示会に出展していたのだ。
その時、村田さんは本書でも何度か出てくるLEDの光が空気で揺らぐ「METAPHYS hono」を展示されていて、ご多分に漏れず、私ももちろんLEDの炎に息を吹きかけた。
そう、それが人工物だとわかっていても、それは人にそうさせてしまうデザインだった。

私たちは何もかもがすっかり便利になった21世紀を生きているけど、よくよく見ればまわりはバグだらけで、まだまだ私たちが起こせるイノベーションって無限にあるんじゃないかなと思わせてくれた、デザインの可能性を信じさせてくれる一冊。

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