『窓の向こうのガーシュウィン』(著者:宮下奈都)は田園調布学園中、江戸川学園取手中で出題されました!中学受験国語の入試問題の内容・あらすじを紹介します!
■『窓の向こうのガーシュウィン』(著者:宮下奈都)について
この本は、未熟児で生まれて保育器にも入れられず育てられた主人公「私」が欠落感を抱えたまま19歳になり、ヘルパーとして勤めた先の横江先生の家で額装家と出会い、額装の仕事を手伝いながら少しずつ心がほどけていく物語です。
この物語は、特に事件が起きるでもなく、平坦に主人公の日常が描かれます。横江先生のお宅での会話、私と父との会話、1つ1つがとても大切に描かれていて、絵や景色が浮かび、音楽が聴こえてくるような、とても優しい作品です。
ですが、心の内面を綴った、とても繊細な作品で、小学生向きではありません。
こういった文章が出題される可能性もあるということで、難しめの学校を狙っている生徒さんは、軽く目を通してみるのも練習になるでしょう。
この本は、大人でも好みの分かれるところかもしれません。
詳しいあらすじを最後に書いています。読書感想文などを書く際に参考にしてみてください。(ネタバレになりますので、読みたくない方はご覧にならないでください。)
中学受験では、2013年度第3回田園調布学園中等部、2012年度江戸川学園取手中の国語の入試問題で出題されました。
◆2013年度第3回田園調布学園中等部の国語の入試問題
大問1番で、最初に長めのリード文があり、その後文庫で約6ページ半分、出題されました。「私」が初めて額装を見て衝撃を受けた後に、もう一度見せにもらいに横江先生のお家を訪れた場面が出題されました。
この大問1番の設問形式は、漢字の書き取りが1問、35字、50字、75字記述問題、自由記述問題が1問、5択の記号選択問題が3問で全部で8問でした。
大問2番は説明的文章で、大問2番まででした。
◆2012年度江戸川学園取手中学校の国語の入試問題
大問1番で、「私」が横江先生のお宅にホームヘルパーとして通うことになり、「私」がお米を炊いたときのシーンが出題されました。
この大問1番の設問形式は、語句の挿入が2つで1問、漢字の挿入が1問、4択の記号選択問題が5問、抜き出しが2問で、全部で9問でした。
大問2番と大問3番は論説文で、かなりボリュームのある問題です。
■『窓の向こうのガーシュウィン』あらすじ(ネタバレ)
主人公の私(佐古さん)は、未熟児で生まれたのに、保育器にも入れられず育てられたため、耳に雑音が混じることがあり、他人の話をきちんと理解できなくなる時がある。そのため、人と話すことも少なく、自分に欠落感を感じたまま19歳になる。父は小学生の時に家をふらっと出て行ったきり戻ってこない。母は片付けることをしない人で、いつも家の中はぐちゃぐちゃで、私は家でお皿を洗ったり、片付けたりということを小学生の頃からやるようになっていた。
私は、高校卒業後薬問屋に勤めるが、半年で倒産してしまい、失業となる。ホームヘルパー3級の資格を取り、仕事を紹介してもらうことになる。最初に息子と2人暮らしの79歳の横江先生の家に決まる。その息子さんは額装家で、私はレコードのジャケットの額装を見せてもらうと、小さい頃から歌っていた「サマータイム」の音楽が聴こえ、景色が見えたのだった。額装家のその人は、しあわせな景色を切り取る仕事だと言う。横江先生の家のお仕事は居心地良く、聞こえなくなることがないのに、他の家では、家の人たちの話を聞き取ることができず、クビになってしまっていた。額装に興味を持った私に、額装家の息子さんは、仕事の手伝いをしてほしいと頼む。結果として、横江先生のヘルパーの仕事と、息子さんの額装のお手伝いの仕事で、毎日横江先生のお宅に訪問するようになる。そして、横江先生の孫、つまり、額装家の息子隼とも会い、実は、私と中学校が同じであったことがわかる。隼は、横江先生のボケが始まっていることに気づいていて、とても心配している。
そんな時、長らく帰ってこなかった父が突然帰ってくる。が、何を話せばよいのか...
横江家での仕事にも慣れて、時間が経つのを忘れてしまうほどになる。みんなでお茶したり、食事をしたりと楽しい時間を過ごせるようになる。私は、隼にも額装をするように勧めるが隼には向いていなかった。隼は何か仕事を探すと言って、バイト先を見つけてくる。横江先生も額装を始める。自分の遺影を飾るために。家に帰ると、父がもやしラーメンと作ってくれていた。「お父さん、おかえり」と私はやっと言うことができた。