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涙を呑む鳥Ⅰ読書感想文(上)
ドラゴンラージャを読んで育った者が知っている小説がある。
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なんだ?「涙を飲む鳥」?「血を飲む鳥」?
イ・ヨンドが書いた物語だから面白いのだろうなぁ……
そんなことを思いながら生きてきた少年少女が日本には大勢いただろう。
そして20年近くの月日が流れた。
『涙を呑む鳥』の邦訳版が2024年7月30日に発売されたのだ。
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この記事ではそんな『涙を呑む鳥Ⅰナガの心臓(上)』の読書感想文を書いていこうと思う。
第一章
まず読み始める前に帯を読んでみよう。
“ナガ 全身を鱗に覆われ、宣りで会話する。”
なによ、“宣り”って。
本文を読み始める前から先制ジャブを喰らう。
ともかく本文を読んでいこう。
第一章は人間・ナガ・レコン・トッケビのメインキャラの紹介といった様相だ。
最初に登場するのは人間のケイガン・ドラッカー
ナガの死体が入った袋と刃が二つ付いた剣を携えてインパクト抜群の登場である。
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個人的にこの剣思い出した。形状は違うけど。
この男、密林に住んでナガを殺戮してるらしいけど、大丈夫なんですかね?
物語の流れ的にナガと一緒に旅するみたいですけど。
ナガの都市とリュンとファリト
次はナガの若者の二人が登場。
ナガは心臓を摘出することで(ほぼ)不死の身体を得るそうですが、この二人はまだ心臓を持っています。
ナガの社会では心臓を持っているうちは常に護衛のナガがどこへ行くにも付いている様子。
すごい世界。
ファリトのほうがなにやら密命を帯びていて、ナガの都市からハインシャ大寺院に行く計画があると二章以降で分かるのですが、
この本を読み始める前に一人のナガを他の三種族が救出に行くストーリーだと認識していたので、心臓摘出を怖がっていたリュンのほうがナガの都市を脱出するのだと勝手に予測して、しばらく混乱していました。
「あれ?リュンが心摘を嫌がってハテングラジュを脱出する流れなのに、ファリトのほうが三種族と合流する流れになってるぞ?」と。
なのでファリトが殺されるまでリュンとファリトの区別がついていませんでした。
レコンのティナハン
この場面ではいろいろ出てきました。
身長3メートルの鶏人間の存在が霞むほどに。
群霊者に関しては下巻でいろいろあるのでここでは割愛しつつ
空飛ぶ巨大魚ハヌルチのインパクトが絶大です。
前のナガの場面でもハヌルチの名前が出てきて、そこでは体長2メートルのトビウオくらいの魚をイメージしていたのですが
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実際のハヌルチは古代都市の廃墟を背に乗せ、高さ2000メートルの上空を飛び続けるという圧倒的スケールの存在でした。
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そしてそのハヌルチの背に飛び乗ろうとしているのがティナハンと。
ハヌルチの背に旅館を建てるために大寺院に借金をしていると。
なんだコイツ~!?(ジョイマン)
トッケビの不思議城チュムンヌリ
さっきのティナハンパートと比べると小難しい話が始まった。
夜の五人の娘とか、夢の性質は昼とか。
そのあたりを流し読むとトッケビが住む(?)城が登場する。
このチュムンヌリとかいう建造物は現実世界にあるものなんですかね?
というか、この世界の“魔法”ってどういう扱いなのかわからないんですよね。
「魔法みたいに」といった言葉はたびたび出てきますけど、具体的に何が魔法なのかは分からない。
トッケビの炎は魔法というより種族に備わった能力といった印象ですし、シクトルの血縁探知はどういう技術なの?って。
ところで、ナガの話だとトッケビが戦争を楽しいと思うようになったら終わり、とか言ってたので「あれェ?このオモチャ、もう壊れちゃったァ!」みたいなこと言うサイコショタみたいな種族だったらどうしようと思ってたんですけど、けっこう話通じる感じですね。
カブトムシのフンバケツ持ってますけど。
ケイガンが六年前にトッケビの城主に送った手紙があるとのこと。
アイツ、お世話になった人に連絡とるみたいなことできたのか……
六年前の時点で「もう狂いそう」「マワリを振れなくなったら死ぬでしょう」とか儚げなこと書いてるのに、当のケイガンは現在でも元気にマワリ振り回してナガ殺しまくってるの面白い。
第二章
サモ・ペイ
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ナガってどういう見た目してるのでしょう?
個人的にはTESシリーズのアルゴニアンみたいなのを想像してますが。
ていうか、TESシリーズに出てくるウッドエルフは肉食で樹木を傷つけないというナガに似た文化を持ってる種族ですね。
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リュンの姉のサモ・ペイが登場してきました。
サモの態度にリュンがキレます
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サモは男から人気があって、それでペイ家はハテングラジュで有力な家(?)らしい。
なんか……アレすね。例えが適切かは分かりませんが、ゲイバーが女の人に人気みたいな雰囲気?
ナガは妊娠するのが難しい(?)様子。
ビアスが自身の年齢と妊娠していない期間を気にしているということはナガにも“老い”はあるのか?
不老不死なのであれば年齢を気にしたり、種族の人口を増やすことに躍起になったりしないと思うので。
ナガは数百年、外界と断絶していて事故死や行方不明もほぼなさそうなので不老不死なら人口がとんでもないことになりそう。
合流
最後の酒場で三人合流。
トッケビのビヒョンと「三だけが一に対向できる」とかの話をする。
なんかトッケビ関連の話は小難しい印象があるんだよなー
そうしていたら三人目が最後の酒場にやってきました
砂嵐を起こしながら疾走して崖を駆け上ってくるティナハン。
分かりやすく面白いヤツきたー!
レコン出てくると話が単純になって読みやすくなるから助かる。
ビヒョンとティナハンはその動作に感銘を受け、その分、その中身を見たときには呆れた思いを隠せなかった。
「ふぅむ。こいつはずいぶんと危険そうだな。冷めた肉スープか」
↑この文章めちゃくちゃ“ドラゴンラージャ”を感じる。
というか“イ・ヨンド節”と呼んでもいいのかもしれない。
リュンがファリトの任務引き継ぐ展開
ビアス、マジで殺る気だったのか……
ユベックス司書が再生しないレベルで切り刻んでるのもドン引きだけど、その状態でまだ意識がある心臓抜いたナガの生態にもドン引きだよ。
リュンが心臓摘出怖がってるからリュンがキーボレン脱出したほうが都合良くね?って思ってたけどやっぱりそういう展開になりましたね。
リュンの父親のこととか、心臓摘出への忌避感とか、ここが物語の核心な印象。
ビアス怖すぎ
ファリトを殺した罪をリュンに擦り付けて、その責任をサモにとらせることでペイ家も弱体化させるとか……
ここまで全部計算でやってたのか?怖すぎ。
その後意気揚々とマッケローの家に帰ってきたビアスですが、カリンドルにその所業を見抜かれていて、ビアスはカリンドルに弱みを握られる形になります。
さらにこえー。
陰謀渦巻きまくりじゃないですか
カリンドルについてですが、彼女はファリトと同じ母から生まれていて、ファリトには情がありそうなんですよね。
いまのところビアスに協力する立場を示していますが、波乱の展開もあるかも。
第三章
救出隊珍道中
花びらに溜まった露を飲むケイガンにイ・ヨンドの“癖”を感じる。
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リュン逃走中
アリクイ一匹丸呑みとかいうナガの食性にも驚かせられましたが、さらに新たなナガの特殊能力が発動。
“精神抑圧”
そんなことも出来るのかよ!
そういえば一章でネズミの処置がどうのこうの言ってたっけ。
ソドゥラクを使って偵察隊員から逃げたリュンが龍花と遭遇。
ソドゥラク入りのゲロで龍花が開花するのも、龍根にソドゥラクをまぶすのも意味が分からなかったけど、下巻まで読むとソドゥラクはもともと植物を育てるための化学肥料的なものだったと判明する。
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自分はデンドロビウムという蘭を育てているんですけど、土の代わりに苔を使うので龍根を包むために苔集めるシーンでちょっとテンション上がりました。
ソドゥラクがもともと植物用とか、真相が後になって明かされるパターン多いですよね。
この世界では“ナーニ”はマドンナとかマリリン・モンロー的な美女の代名詞として使われているのも後になって分かりますし。
サモ・ペイ襲来
ヨスビ(故人)、いろんな人から矢印向けられすぎな件。
サモはいろいろやりすぎ。
大鷲に乗ってくるのも、ピラミッドほぼ単騎で攻略するのも、大虎手懐けるのも、黒獅子の毛皮手に入れるのも。
主人公補正がかかってるでしょ。
ティナハン……というかレコンは病的に水を恐れてるけど、水分補給はどうしてるんすかね?
さすがに水飲まないと死ぬと思うんですけど。
水が飲めないレコンが増えている衝撃「とにかく怖いから苦手」
水は飲めないけどジュースは飲めるもん!みたいな生態をしているのか?レコンは。
あっ、涙を呑む鳥ってそういうこと?水はダメだけど涙はOKみたいな。
サモの襲撃を退けたあと、リュンと救出隊があれこれ会話するシーン。
リュンがヨスビの名前を初めて“発音”して驚くシーンがありますけど、現代のネット民はこれに近い経験あるんじゃないでしょうか。
DECO*27というボカロPのことを僕は10年以上前から知ってたけど、「でこにーな」と発音するのはつい最近知りました。(QuizKnockというクイズ系youtuberの早押しクイズの答えがDECO*27だったとき初めて発音を聞いた)
SNSとかでも人の名前は文字で認識してるから発音は意識しないこと多いですよね。
ナガの言語は基本的に他の三種族と同じっぽいですけど、“発音”を前提としないならだいぶ特殊な言葉がありそう。
洞窟で雨やり過ごしシーン
雨降っただけで行動不能になるナガ、難儀な種族すぎん?
僕の好きな小説の『ハローサマー、グッドバイ』で寒さを異常に恐れる宇宙人が登場するのですけど、その宇宙人たちは焼いたレンガを懐に入れて冬でも外で活動していたんですよね。
ナガもそういうことすればいいのに……と思ったんですけどナガって樹木を伐採できないから火使えないのか……
ますます難儀な種族だ。
生きてるものしか食えないし。
急にグロい
急に始まったナガ虐殺シーン。
首だけになったナガが肺がないので喋れず、ケイガンが気管から息を吹き入れて喋らすシーン。
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さらにグロい
斗億神の都市に潜入する三人。
斗億神って神を失った種族みたいですけど、神の定める法則の加護を受けられないから無茶苦茶な身体してるんですかね?
手足やら身体のパーツが無茶苦茶に生えている姿は精度の悪い生成AIみたいな。
ドラゴンラージャのセイクリッドランドだと、疾病の神だけが支配する土地になるから全てが病になるというものでした。
対して、何の神の影響も受けられない世界だとあらゆる法則がなくて生き物として成立できない……みたいな感じだと予想。
アレですね、四つ石を投げるときに、信じる神がいれば形を整えてくれるけど、いなければ偶然に四つの石が正方形になるまでガチャを繰り返さないといけないみたいな。
ピラミッドの奥にいた“群肉者”はそのガチャに成功したものと言ってもいいのかもしれない。
終わりに
ダラダラと無計画に感想を書いてしまいました。
上巻は導入として様々な謎が散りばめられている感じで、初読だとよく分からないところが多いと思います。
この感想文を書くためにパラパラ流し読んでいるときに気が付いたことも多いです。
下巻の感想文も投稿すると思います。
全体の感想はそのときに。
ということで一旦これで締めます。