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【書評】AIは短歌をどう詠むか / 浦川通

以前から気になっていたこの本。
私、ぶりきのかには短歌に取り組んでいる一方、本業はAI・データ領域のため本書に強い興味がありました。その内容をかみ砕きつつ感想を書いてみたいと思います。


筆者の紹介

1988年、埼玉県生まれ。メディアアート・広告制作を経て、2019年より朝日新聞社にて自然言語処理の研究開発に従事。主な作品・仕事に「バイナリカードゲーム」(NTTインターコミュニケーション・センター/2014年)、「意識の辞書」(スパイラル/2017年)、「[穴埋め式]世界ことわざ辞典」(TRANS BOOKS DOWNLOADs/2020年)、「短歌AI」「朝日歌壇ライブラリ」(朝日新聞社/2022年〜)など。AI生成を一部に含む連作「バニラ・シークエンス」で第64回短歌研究新人賞最終選考通過。

出典:浦川 通 toru urakawa | 現代新書

キャリアとしては、メディアアート(光・音・映像・センサーなどを用いたアート)関係のプロダクトの開発者からスタートし、自然言語の研究に興味をもったことから現職へ。転職後、AIと著者の原体験である短歌を融合する研究をテーマに据え、そこから短歌(作歌)に取り組みはじめたとのことです。

本の紹介

誤解されやすいと思うので記しておきますが、著者は短歌の作歌にテクノロジーを積極的に用いるべきという主張はしていません。用いるとしたらこういう使い方が考えられる、という言及に留めています。

本書は短歌AIを作り、それに付随した様々なイベントや取り組みを行ってきた著者が、
・短歌AIはどのように作られているか
・様々な短歌AIと、それらの出力の違い
・なぜ違いが生じるか
・短歌AIと人間の違い、人間の強み(弱み)
・AIに良い短歌は作れるか
などの考察を通して、人間がより良く短歌と関わる(詠む/読む)ための示唆やヒントを得ようとしています。

感想(良かったところ)

本書の良かったポイントを紹介します。

AI(言語モデル)の仕組みについて分かりやすく書かれている

かなり易しく書かれていると思います。AIの知識が全くない方だとよく分からない部分があると思いますが、飛ばしてもそこまで問題なく雰囲気は掴めるかと思います。

短歌AIとの適切な関わり方が分かる

本書を読めば、必要以上にAIを恐れる必要はないという気持ちになると思います。それは短歌AIが優れた短歌を作れないということではなく、なぜ人は短歌を作るのかといった問いを通過することで到達する場所ではないかと思います。
本書を読むうえで大事なのは「短歌にAIを持ち込むなんて最悪だ」といった拒絶反応を一度抑えておくことです。僕もそういう気持ちが無いわけではないのですが、そうしないと本書をうまく読めないと思います。

最後に

個人的には今後は「著作権をどう保護していくか」という問題が最も取り沙汰されるのではないかと思います。そしてAIは短歌の著作性の脆弱性や曖昧さにスポットライトが当てるだけであり、その話題の中心はAIではなく人間なのでは無いか、と思っております。
その話題についてはこちらのnoteでも触れています。

全体として読みやすく面白い本でした!

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