今では笑えるけど、当時の私たちにとっては相当な大事件だった。
今日は前の日記の続きになる。
LINE電話をスピーカーにする。
クロが電話に出て、その日に内見した物件について話した。
クロは、2人が良いと言うなら、その家に決めても俺はいいよと優しく言ってくれた。
そのまましばらく話して、それぞれの家族にシェアハウスをすることについて確認したのか?という話になった。
そう、この時、私の目の前には、大きな壁が立ちはだかっていた。
🧑🧑🧒
クロは、私たちと住む前も一人暮らしをしていた。
何度か引っ越しもしているし、3人の中で1番家探しに慣れていて、不動産屋さんもクロの紹介で色々と教えてくれた。
でも、私とアオは実家暮らしで、家を出るのは初めてだった。
お互い、母には相談していたけど、最難関は父。
かわいい娘が家を出ると言ったら、それはもちろん悲しいに決まっている。
しかも、男友だちと3人で・・・
こんな世間的にも珍な話を受け入れてもらい、父にシェアハウスをOKしてもらうには、入念な策が必要だと私は考えていた。
私たちは定期的に休みを合わせて、その都度、「シェアハウス匂わせ作戦」について、お互いの進捗状況を発表しあった。
まだ物件探し中の頃、アオは急遽、家族会議を開き、私よりも先に、見事シェアハウスについて父や家族にOKしてもらったと報告してくれた。
確かその日は、アウトレットに遊びに行った時で、初めて3人でディズニー旅行に行く約束をした時だったと思う。
クロはディズニーに行ったことがなく、「将来の嫁としかいかない」と頑なになっていたのにも関わらず、この日はすんなり、初めてディズニー旅行に乗り気になってくれた。
一緒に住むなら嫁同然ってか。
住む家を決める前にディズニー旅行を決めちゃうあたり、
どう考えても私たちらしい。
👨
実は、私の家族は特殊だった。
それに気づいたのは、アオが「家族会議をする」と言った時。
そして、クロが、「父にわかってもらうには、家族会議を開いて、面と向かって真剣に話すべき」と言った時。
私の父に面と向かってお願いしたところで「やめとけ」の一択に違いない。
これには母も同意見だった。
私は母に協力を求めた。でも、母も父のことが大好き故に、悲しむとわかっているからこそ、このお願いは母にとっても辛いことかもしれない。
だから私は、1人で策を練ることにした。
家族の形は様々。
当たり前のことなのに、自分だけがOKしてもらえていない状況になると、こんなにも重くのしかかるものかと、私はこの時、人生で初めての感覚を味わっていた。
私が考えた最善策はこうだった。
まずはシェアハウスを匂わせる
3人の仲良し度をアピールする
そしてさらに自立して成長したいことをアピールする
私の気持ちは揺らがないことをアピールする
そして家を決めてしまって覚悟を決めてもらう
なんとなくシェアハウスをスタートする
これを、じっっっっっっくりと時間をかけてやるのが最適だと考えた。
もちろん、アオもクロも解ってはくれなかった。
うちの家族は、私含め特殊なのだ。
私は1人きりで、この作戦をじっくりと時間をかけて決行した。
母はなんとなく察して、話を合わせてくれた。
この作戦は、アハ体験のように、じわじわじわじわと、シェアハウスがスタートするまで、進行していくのだった。
🍚
そして、初めての内見の日。
ショッピングモールの屋上で、スピーカー越しにクロは言う。
「お父さんからはOKもらった?」
私は答えた。
「OKをもらったわけではないけど、OKをもらうのは決まってるからOKだよ」
もちろんクロは微妙な反応だった。
「物件は、ちゃんとOKもらってから決めた方がいいんじゃない?」とクロ。
アオもそれに同意した。
私は考えた。それだと私の作戦は水の泡になってしまう。
唯一思いついた策では無理だとすると、シェアハウスすら叶わない夢になってしまう。
だから私は、「大丈夫!絶対大丈夫!信じて!」そう言うしかなかった。
アオは、少し黙ってから、「信じよう。それしかない。」そう言った。
その日はみんな疲れていて、そのまま電話を切ってしまった。
何度も言うが、その頃、私は、仕事のことでかなり疲弊していた。
今の私なら、そんな言い方はしないと思う。
もう少し丁寧に、クロにもアオにも解ってもらえるように説明できたんじゃないかと思う。
仕事のせいにするくらいしかできないくらいに、今は、自分の言葉の足りなさに後悔している。
それから数日経った時、アオから変なLINEが届く。
私たちは、急遽、仕事終わりに集まることになった。
それが、【大号泣事件】当日の出来事。
地下の改札前に集合した私たちは、ゆっくりとご飯屋さんに向かった。
私は笑顔を搾り出し、クロはいつもに増してポーカーフェイス。
アオは、涙を流していた。
今日はここまで。
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