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ダダダイアリー、主に映画。 2021/12/18ー12/31


12 月18 日 
池添俊監督「朝の夢」シネマテーク・フランセーズ配信プラットフォーム「HENRI」にて朝に鑑賞。
老婆の語りを追体験する様な朝の微睡。すき焼きからビー玉、愛の讃歌と谷川俊太郎。言葉が身体を通じて風に立つ一連の映像。朝は詩そのものだと感じさせてくれる短編。

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12 月19 日
キネカ大森にて、アレクサンダー・ロックウェル監督「スウィート・シング」鑑賞。2回目。
愛おし過ぎるアイリスイン/アウト。そしていつも心にビリー・ホリデイ。ロックウェルからのこの冬1番のギフト。画面の凡ゆる所から溢れ出るスウィートなシングにもう朝から号泣。ホント宝物みたいに素晴らしい作品だなぁ。

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下高井戸に移動。下高井戸シネマで開催中の「作家主義・相米慎二」にて相米慎二監督「台風クラブ」鑑賞。
近づく台風に釣られて騒つく思春期の得体の知れないエナジー。尋常じゃないテンションで歌われる「もしも明日が」。バービーボーイズで暗闇でDANCEして翔んでみせる。久々に観たけどやっぱり不思議と打たれる作品だよなぁ。
上映後にはなんと出演した大西結花によるトークショー付き。夏休みの小学校を貸し切って和気藹々とした中であの奔放な世界は作られたのだと知れて感無量になった。いやホント貴重な話を聞けたなぁ。

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続いて「東京上空いらっしゃいませ」鑑賞。
東京上空が下高井戸にいらっしゃいませ。
牧瀬里穂の圧倒的過ぎる存在感と「帰れない二人」の反復。もう何回も観てるのに今日も号泣。今年遂にBlu-ray化されて自宅で飽きるまで観れる事になったけど、やっぱりスクリーンで観たい作品だなぁ。サントラも発売して貰いたい。

「台風クラブ」に於いて、三浦友和が俳優として覚醒したように、本作では中井貴一が覚醒していく様を見れる。牧瀬里穂が圧倒的過ぎていつも埋もれてしまうが、実は名優・中井貴一誕生の作品でもある。

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続いて同じく下高井戸シネマで開催中の「メイズルス兄弟特集」へと雪崩れ込む。先ずはアルバート&デヴィッド・メイズルス監督「グレイ・ガーデンズ」鑑賞。
歌い踊り喋り倒すリトル・イーディと歌い叫くビッグ・イーディのイーディ親娘の非日常な日常を綴ったドキュメンタリー。伝説の人物たちが実在していたという発見の喜びと見つけられたという喜びとの双方の利害が一致しスパークした様な作品。映画祭で観るのは初めてだったけどスクリーン映えする親娘だったなぁ。

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続いてヨーラン・ヒューゴ・オルソン監督「あの夏」鑑賞。
72年のモントーク。ピーター・ビアードとリー・ラジヴィルと仲間たち。グレイガーデンズのイーディ親娘と猫とアライグマ。リーの素敵さに何度も泣きそうになる。多分観るの3回目位だけど毎回新鮮なトキメキに襲われる理由無しに絶賛したい作品。今日も素晴らしかった。
上映後には作家の柚木麻子のトーク付き。見た目だけでなくトークの感じもリトル・イーディ感がハンパなくて楽しめた。肌蹴る光線の井戸沼さんやGFSの降矢教頭と久々に会えて良かったな。今日は朝から晩まで映画を浴びまくったのでグッタリするかと思ったけど、来年もたくさん映画観に行こうって思った。

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12 月20日
午前中に歯医者へ検診に。とりあえず治療する歯は今の所なくまた4ヶ月後の検診となりホッとする。
渋谷に移動。
ユーロスペースにブリュノ・デュモン監督ジャンヌ・ダルク2部作を鑑賞。
先ずは「ジャネット」。
ジャンヌ・ダルク誕生前夜を歌と踊りで描くロックオペラの様な作りで一瞬ワクワクするが、肝心の歌も踊りもイマイチで直ぐに飽きた。親戚の子供の発表会を見させられてる気分になりグッタリ。

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続いて「ジャンヌ」。
詩的な映像と哲学的な演出と美少女のジャンヌ。ポエジーな美しさはあるが「ジャネット」の様な弾けたハミ出しがなく退屈な展開。「ジャネット」と「ジャンヌ」を一つに纏めてもっと短くすれば楽しめたのにな。残念。

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帰宅後、録画してたBS「ザ・ベストテレビ2021『面会報告』」鑑賞。
閉鎖的で一向に進展しない入管の実態。人権意識の低く他者に冷たく内向きで閉鎖的な社会。良い加減なんとかならないのかなぁと怒りが湧いた。何度も再放送してもらいたいな。

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12 月23日
ジョナサン・デミ監督「ストップ・メイキング・センス」@シネクイント。もう何回目なんだろ。とりあえず今年は4回目か。
boidsound仕様でティナのベースラインがご機嫌に唸り2曲目で早くもピークへ。そしてバーニー・ウォーレルの勇姿に涙。もう本作と「アメリカン・ユートピア」は地球の財産だよ。全人類必至の名作。

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12 月24日
ケイズシネマにて柳町光男監督「十九歳の地図」鑑賞。
原作には無いユーモアと軽さ。俳優の身体を通じて物語が生き直されており、絶望的でなんの救いもない話なのに活力に溢れてる。本間優二のフレッシュさと蟹江敬三のダメっぷりが素晴らしく板橋文夫の音楽も良い。
果たしてクリスマスに観る映画かと思うが、今見直されるべき名作だと思ったな。そういえば若き友部正人もチラッと出てたよ。✖︎3つというよりも○3つな作品。

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続いてWildSide TOKYOにて開催の「TOKYO ROCK DOWN」へ。
LAメタルバンドTheBlue Scream主催のイベント。OAにRAMBLING ROSE。そしてファンタスティックラウンジの推しダンサーNINA GalaxyとGiGiNoirが競演。普段全く聴かないLAメタルを浴びてグッタリしたけどバーレスクとの相性はバッチリだったなぁ。

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12 月26日
鈴木洋平監督「丸」シネマテークフランセーズHENRIにて久々に鑑賞。
球体が奏でる不穏な通奏低音。平凡な日常は球の上に乗ってる程のバランスでしかない事を暴く。不条理な喜劇から悲劇へそしてアウフヘーベンするしつこいラストへ。20分でネタが尽きそうな設定で90分引っ張る力技。やっぱり鈴木洋平は非凡だね。早く新作が観たい。

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兼田達矢「横浜のロックステーションTVKの挑戦」読了。
プロデューサー住友利行を中心に横浜のローカル局がなぜ音楽ファンに支持されたのかを紐解く。「ファイティング80's」「ライブトマト」。「ミュートマ」。日本のロックはEPICソニーとTVKが作ったようなもんだよ。ホント知らないウチに育てられてたんだなぁと改めて実感した。

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ケイズシネマにて中川奈月監督「彼女はひとり」鑑賞。
彼女はいったい何に復讐するのか。一瞬たりとも目が離せないアクションとサスペンスに満ちた心理的躍動。圧倒的な孤独が生む哀しみと強さと美しさに泣く。世界なんか別に好きにならなくて良い。たったひとりで立ち尽くすたったひとりに向けた60分の衝撃。決意と覚悟に満ちた強い作品。
上映後には中川監督と思考家佐々木敦によるトーク付き。黒沢清、篠崎誠、万田邦敏の系譜に位置して実はポランスキー「チャイナタウン」がベースにある事など制作の過程が伺えて楽しめた。最初の上映とシネマリンで観逃してたけど年内に観れてホントに良かった。

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渋谷に移動。ヒカリエ裏の「渋谷二丁目アートプロジェクト」を眺めた後に、久々のカフェモノクロームへ。
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のコラボドリンクとブラックシフォンケーキを。「ダンサー~」だけにてっきり後味が悪く絶望的な味かと思ったけど、そんな事はなくセルマの見る夢の様な甘いテイストで一安心。木炭の様なシフォンケーキも美味しかった。

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続いて三鷹まで移動。
三鷹SCOOLにて上演中の小田尚稔の演劇『レクイヱム』 観劇。
死や死者について想う程にそこから否応無しに立ち上がる生きていくことの煩わしさや不快さ。男女7人の俳優によるモノローグを中心に敢えてとりとめなく纏めた物語。特に橋本和加子(バストリオ)のモノローグが素晴らしかった。
映像やギターの生演奏や様々な美術。会場の空間をフルに活かした構成は楽しめたが、叫び走り回る役者との近さは、観劇に慣れていながら内容とは関係無く物理的な緊張が襲った。コロナ前には無かった心境で観劇に影響を及ぼしている事を実感したな。
橋本和加子(バストリオ)目当てで観に行ったのでもちろん贔屓目かもしれないが、やっぱり存在が際立っており、今日の演目を1人でやるのも有りなんじゃないかという想像を同時進行させながらも観てた。久々に再会出来て挨拶も出来て良かった。

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12 月30日
ル・シネマにて濱口竜介監督短編集「偶然と想像」鑑賞。
全てのエピソードに用意された意外な偶然が引き起こすユーモアと想像を裏切る軽やかな驚きと余韻。演劇的なダイアローグと映画のダイナミズムから湧き立つエモーションの見事な調和。ロメール的アプローチを実践しながらどこまでも濱口的な作品。特に第三話が素晴らしかった。 
渋川清彦、河井青葉、占部房子ってキャストが「PASSION」同窓会みたいで感慨深く楽しめた。作品全体の掴みとも言える第一話の中島歩、古川琴音、玄理も素晴らしかったな。
全部で七話まであるとのことだから次回も楽しみだ。

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続いてシネマヴェーラにて、ダグラス・サーク監督「ステキなパパの作り方」鑑賞。
男の子2人を持つ未亡人と、女の子2人を持つやもめが出逢い恋に落ち、子供たちと犬たちを巻き込んでの大騒動サマーキャンプ。軽快で痛快でテンポも抜群。メロドラマだけじゃない。サークの職人的手際が冴え渡るハートフルコメディ。単純に楽しめた。

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最後は池袋に移動。新文芸坐にて開催中のboid sound映画祭にて、番場秀一監督「ミッシェル・ガン・エレファントTHEE MOVIE-LAST HEAVEN031011-」鑑賞。
あの映像とこの音響で黙って座って観るという苦痛。なんで〈モッシュ強制上映〉じゃないのか不思議なくらいの仕上がりだった。唐突なムラジュンのナレーションだけが不思議なTMGEを永遠に刻んだ作品。やっぱり凄まじくカッコ良かったな。

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テレ東ドラマ24「スナックキズツキ」全12話ほぼ一気見。お酒を出さないスナックのママ、原田知世がやんわりとグイグイ傷付いたお客の懐に入り込む。1話完結のゲストが次のゲストに関連していき傷付いてるのはアナタだけじゃないという皆んなが癒される展開がステキな話。でも原田知世が1人でお店を切り盛りしてるというのはそれだけでファンタジーだな。

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BS「魔改造の夜」総集編。
掃除機が跳び、扇風機が走り出す。リミッターを外したエンジニアたちのどうかしてる魔改造ぶり。コロナ禍による業績悪化の中、果敢に挑戦して限界越えを目指す企業チームたちの失敗する事の美しさに胸を打たれる。赤ちゃん人形が綱を登り号泣って最高かよ。いやあ良い番組だ。

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12 月31日
ケイズシネマにて富田克也監督「サウダージ デジタルリマスター版」鑑賞。 
土方と移民たちとヒップホップ。そっちはどうだと10年前から現在を問い直す。久々に観たけどリマスターで蘇った「わがままジュリエット」は震えたね。そして壮大な新作予告編付き。全てがチョッケツして行く空族。来年も目が離せない。

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池袋に移動。新文芸坐boid sound映画祭最終日にて、スパイク・リー監督「アメリカン・ユートピア」スタンディング強制上映。
初見の時から待望していたユートピアのスタンディング上映。しかもboidsound仕様。舞台右寄りの〈アンジー・スワン応援シート〉で鑑賞。いやあもっと踊り練習してくれば良かったと思ったけど大満足だったね。やっぱり立って観てナンボのもんだろって作品。
次回はスタンディング強制じゃなくて振り付け強制上映をお願いしたい。

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続いてジョナサン・デミ監督「ストップ・メイキング・センス」スタンディング強制上映。
上映権が年内で切れる国内最終上映見届けて来た。ホントの踊り納め。最後位はバーニー・ウォーレル側で観ようかと思ったけど、結局いつものティナ・ウェイマス応援シートで鑑賞。今日もティナと何度も目が合った。最高の大晦日になった。花俟さんも長丁場お疲れ様でした。

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以下、今年のまとめ

2021年映画ベスト10
下半期
①スウィート・シング 
②1秒先の彼女
③ビルド・ア・ガール
④プロミシング・ヤング・ウーマン
⑤17歳の瞳に映る世界
⑥ サマー・オブ・ソウル
⑦ イン・ザ・ハイツ 
⑧Summer of ’85
⑨TOVE/トーベ
⑩ボストン市庁舎

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2021年映画ベスト10
下半期邦画しばり
①君は永遠にそいつらより若い
②ドライブ・マイ・カー
③偶然と想像
④由宇子の天秤
⑤いとみち
⑥彼女はひとり
⑦カウンセラー
⑧愛のまなざしを
⑨水俣曼荼羅
⑩シュシュシュの娘

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2021年映画ベスト10
旧作しばり
① バーバラ・ルービンとニューヨーク・アンダーグラウンドのビッグバン
② アメリカの友人
③戦場のメリークリスマス4K修復版
④ 十九歳の地図
⑤グレイ・ガーデンズ
⑥ 愛のように感じた
⑦ヘカテ デジタル・リマスター版
⑧ サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレイス
⑨ 赤い唇
⑩ ザ・クレイジーズ

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ベストアルバム2021
①Barn/Niel Young with CrazyHorse
②Things Take Time,Take Time/Courtney Barnett
③オオカミが現れた/Lee Lang
④Jubilee/Japanese Breakfast
⑤El Otro Lado/Gran Sur
⑥Los Suenos de los Otros/Mariano Gallardo Pahlen
⑦Cande y Paulo/Cande y Paulo
⑧Get Up Sequences Part One./The Go! Team
⑨ I Know I'm Funny haha/Faye Webster
⑩Voyage/ABBA

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ベストアルバム2021(邦楽しばり)
①Lucid Dreaming/マイカ・ルブテ
②Lots of Birds/澁谷浩次
③Cell/スモール・サークル・オブ・フレンズ
④タンデム/冬にわかれて
⑤We Are The Times/バッファロードーター
⑥Turntable Overture/カーネーション
⑦Un chat noir/黒猫同盟
⑧Strolling Planet'74/Exne Kedy And The Poltergeists
⑨あめりか/細野晴臣
⑩Drive My Car(OST)/石橋英子

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2021年の10冊
①私の名前を知って/シャネル・ミラー
②ザ・レインコーツ普通の女たちの静かなポストパンク革命/ジェン・ペリー
③カンバセーションズ・ウィズ・フレンズ/サリー・ルーニー
④わたしたちが光の速さで進めないのなら/キム・チョヨプ
⑤話し足りなかった日/イ・ラン
⑥家で待つ君のための暦物語/青柳菜摘
⑦ 二重のまち/交代地のうた/瀬尾夏美
⑧ 一度きりの大泉の話/萩尾望都
⑨ 薬を食う女たち/五所純子
⑩ 石岡瑛子とその時代/河尻亮一

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展覧会ベスト10
①Walls&Bridges壁は橋になる/東京都美術館
② 石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか/東京都現代美術
③ The Absurd and The Sublime
ギイ ブルダン展/CHANEL NEXUS HALL
④ 20世紀のポスター[図像と文字の風景]ービジュアルコミュニケーションは可能か?/東京都庭園美術館
⑤ マン・レイと女性たち/Bunkamuraザ・ミュージアム
⑥ 写真家ドアノー/音楽/パリ/Bunkamuraザ・ミュージアム
⑦アイノとアルヴァ二人のアアルト/世田谷美術館
⑧ アール・ブリュット特別展2021「アンフレームド」/公園通りギャラリー想像は無限を羽ばたいてゆく
⑨ 生きている東京展/ワタリウム美術館
⑩ 「新しい成長」の提起 ポストコロナ社会を創造するアーツプロジェクト/東京藝術大学大学美術館

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観劇10選
①アップデイトダンスNo.78「空 踵の下の」/カラス・アパラタス(1/16)
② 「銀河鉄道999」シネマコンサート/東京国際フォーラム(2/6)
③アイサ・ホクソン「Manila Zoo(ワーク・イン・パンデミック)」/KAAT(2/9)
④ 家と暮らせば/家劇場(3/12)
⑤メトロポリス」伴奏付上映/KAAT(3/21)
⑥ 舞姫と牧神たちの午後/新国立劇場(3/26)
⑦ 中村蓉劇場版「ジゼル」/スタジオHIKARI(6/18)
⑧ ダンスのある星に生まれて「ブルグミュラー25」/さいたま芸術劇場小ホール(9/11)
⑨ 円盤に乗る派「ウォーターフォールを追いかけて」/STスポット(10/27)
⑩ 小田尚稔の演劇『レクイヱム』 /SCOOL(12/26)

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