アニメ『SHIROBAKO』をこれから何度も見返すと思う
平日の夜の時間を使って約1ヶ月半かけながら、お仕事アニメの代表格『SHIROBAKO』を見た。私が学生の頃に放映されていたアニメであるが、社会人をある程度経た今だからこそ響くアニメのような気がする。名言がたくさん出て、私の過去の経験と重なるところも多かったので、記録してみたい。
杉江さんは基本があるから描けるんだよ
萌えアニメが描けない杉江茂は武蔵野アニメーションのお荷物的存在として描かれていたが、動物の原画の描写に困っていた安原絵麻を救ったのは、他でもない彼の助言だ。彼は動物の実際の動きをよく観察しており、その経験を原画に活かしている。彼はその後、原画メンバー向けに社内ワークショップを開くまでになる。
これは研究者でも通ずると思う。たとえ専門外でも研究の基本を習得しているメンバーをプロジェクト内に入れていると、研究上の盲点が見つかりやすく、痛手を回避しやすい。大事なのは、課題設定力や仮説検証力、論理的思考力の堅牢さだと思う。難解な技術をいくら理解していようと、それを使うべき必要性やタイミングを認知していることのほうが遥かに重要だ。
クオリティを人質にすんな!
仕事の納期は大切とはいえ、クオリティを犠牲にして良いものではない。クオリティをどうしても向上させる必要があるならば、無理を言って納期を延ばしてでも食らいつくことも時には大事だ。研究は大いにして計画通りに進まないのが常である。そんな時にいかに計画を変更していくかが研究者の腕の一つだと思うのだ。
ただキャッチボールをしに来ただけ
まさに管理職の役割であると思う。答えを最初から教えることなく、対話の中で相手に回答を見出してもらう。最近私もチームリーダーとしてメンバーと議論する機会が増えたが、自分が思っている答えを最初から提示しないように意識している。「こういう観点で見たら、その実験は十分だろうか?」「そもそもこの実験を通して示したい仮説は何だっただろうか?」と根幹から疑問を提示することによって、本人に納得感のある答えを出してもらう。時間は掛かるものだが、メンバーを育成するという観点で大事。急がば回れ。
チャンスを掴める握力
私は担当するプロジェクトが急に変わったことがあった。これまで私が培ってきた分子生物学の専門性を活かしづらいプロジェクトで、気乗りしなかったのが正直なところだった。その時に同僚から言われた「今のうちに幅広い分野を学べるだけ学んでおくといい。プロセスのことがわかる分子生物学者というだけで価値が高いから。」という言葉が心に残っている。これを機に、培養工学や生物化学工学、バイオインフォマティクスなど実に様々な学問を一から勉強しながら、食らいついてきた。今ではチームリーダーとして様々な課題を包括的に管理していることから、間違いなくそれが今の私を作っていると思う。もしあの時くすぶっていたらどうなっていたのだろうと少し怖くなる。
終わりに
全24話。総時間にして約12時間になるが、今この時期に『SHIROBAKO』を観ることができて本当に良かったと思う。これまでの私の人生と、これから私の人生の双方を見直すことができ、きっとこれからも事あるごとに様々な見方を教えてくれるアニメになるだろう。どんどんドーナツどーんといこう!