「買う」は「選ぶ」
昨日、さとゆみゼミの先輩であり、チョコレート探究家 荒木千衣さんの梅田阪急百貨店視察に同行させていただいた。百貨店9階全部を使った会場には、100以上のブランドがひしめき、広く設けられた通路も人で満杯。Tシャツになりたい暑さだった。
そんななかを千衣さんはスイスイと泳いで、味わい確かなブランドの【バレンタイン限定】や【今だけコラボ】のチョコレートをおすすめしてくださり、膨大な知識量に驚くばかり……。それもそのはず、荒木さんは毎日1つチョコレートを食べて、その魅力を何年も発信し続けるすごい方なのだ。
でも一番すごいなと思ったのは、千衣さん自身が購入したチョコレートの選び方だ。選んだのは2つ。1つは、「チョコレートなら失敗しても何度も溶かして作り直せるから」と、障害者の方を雇用され、その特性に合わせ、作業場環境を整えている「QUON」。
もう1つは、大メーカーに勤務していたけれどコロナ禍に「本当にやりたいことをやろう」と一念発起。大好きなチョコレートを研究され、2023年に独立開業した若き女性パティシエあいかさんの「Aika Kobayashi」だ。
「Aika Kobayashi」は、【店舗を持たない紹介制】というブランディングと、1粒ずつ手書きでデザインするボンボンショコラの美しさと個性で、世界的なチョコレートの大会「クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ(C.C.C.)」で金賞に輝いている。立ち上げからわずか1年で、ものすごい快挙だ。
どちらも、味も最高においしいと思う。でもおそらくは味よりも、これらのディティールを目を輝かせて教えてくれた千衣さんは、「応援したい」から買ったのだ分かった。
そんな千衣さんを見て改めて、「買う」とは「選ぶ」ことなんだなと。
誰がどう作ったものを買うのか。
どんな店を、商品を未来を残したいのか。
無意識に選んでいる。そして、選ばなければ、いつのまにか無くなってしまうかもしれない。お気に入りの小料理屋にしばらく行けずにいたら、ある日突然電話がつながらなくなってしまったように。
「選挙」のようなものなのかもしれない。
清き一票、清き一食、清き一購入。
私も真似させてもらって、これも千衣さんにおすすめいただいた、「ル ショコラ ドゥ アッシュ」が能登の酒造とコラボした限定チョコレートを購入した。一緒に行った奈美さんも。その購入資金の一部は、能登半島地震の被災者支援に回される。
「Aika Kobayashi」で千衣さんが買ったチョコレートは、実はすでに売り切れだったところを、「千衣さんが来たから」と、その場でスモークした生クリームをボンボンショコラの殻に詰め、わざわざ手作りしてくださったものだ。私も1粒頂いたのだけれど、信じられないくらい美味しかった。(写真は、その特製チョコレートです)
その美味しさと未来の一部を、千衣さんが支えている。そこにあいかさんも応えている。
幸せな循環を見た。
その連鎖は、自分も作れる。というか、すでに作っているはずなのだ。
ただ値段を比べて漫然と「買う」のではなくて、「未来」を買う。選ぶ。
その気概で財布の紐を握りたい。残念ながら、いつも軽いのだけれど。
そしてこちら、千衣さんの真摯な姿勢が伝わるレビューです。ぜひ。
キラキラ映えるチョコだけじゃない。人がつなぐおいしい文化を絶やさないために。『チョコレートと日本人』|CORECOLOR