何を引きかえにしても、欲しいものはありますか?
新年あけましておめでとうございます。
文藝春秋 デジタル・マーケティング部のSともうします。
快晴が続いた正月休み、
何か新年らしいことをしたい!
と思い、2025年にやりたいこと、欲しいものなどなど書き出してみるものの、
度の合った眼鏡やいいかんじのマフラーなど、それは必要なものやなんとなく欲しい(なければないでよい)ものばかり。
「どうしても欲しい」ものはなかなか見つからない…と思うような新年を過ごしました。
そんな人間をハッとさせるような、
どうしても、どうしても、とある”賞”がほしい
という”欲”を描いた本を紹介します。
『PRIZE―プライズ―』(村山由佳)
主人公の天羽カインはデビューから作品を重ね、「本屋大賞」も受賞したベストセラー作家。たくさんのファンに愛され、そしてファンを愛する人です。
そんな彼女がただひとつ、手に入れられていないもの…それが直木賞。
何でも持っているように見えても、その実満たされてない。
「どんなことをしても、もっと小説がうまくなりたい」
と飽くなき欲で小説を書き続ける作家の内面が、ぞくりとするほどの鋭さで書かれています。
読み進めると「賞のために、天羽先生そんなこともしちゃうの!?」「それはやりすぎでは…」と思うようなシーンも。
これが、本当に欲しいものを持っている人の欲……。
怒涛のラストまで、一気に読んでしまいました。
☟こちらで冒頭の試し読みができます。
「どうしても直〇賞が欲しい小説といえば、これが古典」
(そんなジャンルあるの??)
ベテラン社員からそう勧められたのが
『大いなる助走』(筒井康隆)
です。
筒井康隆先生といえば、言わずもがなの大御所作家。
最近では『残像に口紅を』がSNSを中心に大きな話題となりました。
そして意外にも、直木賞は受賞されていないのです。
これは、
「直廾賞候補となった作家を描いた」「猛毒文壇小説」。
会社に鬱憤を抱えた主人公・市谷京二がとある小説を書いたことから始まります。
コンプラという言葉もない昭和50年代初出のこの小説、天羽先生以上に「何でもやる」トンデモない作家・市谷とその周りの人々。
モデルにされた直木賞選考委員のひとりが、”大きな唇”で「あの連載をやめさせろ」と怒鳴り込んできたほどの毒の入れようです。
マグマのような怨念は、果たしてフィクションなのか…。
「猛毒文壇小説」”平成版”も併せてご紹介します。
また『PRIZE―プライズ―』でも、「直木賞」の候補作が選ばれ、そして賞が決まるまでの内情がくわしく描かれています。
これまで(出版社にいるのに)文芸とは縁遠かったこともあり、「こうやって候補作が決まっていくんだ…」と勉強になりました。。
(これを就活前に読んでいれば、文芸の部署とももっと近しい関係になれたのかもしれない)
そこで、文芸と近しい関係になりたい方に必読なのが
『拝啓、本が売れません』(額賀澪)
本ができ、そしてそれが売れるには? を描いた本作。
松本清張賞(主催・文藝春秋)と小学館文庫小説賞を受賞しデビュー、
吹奏楽部を描いた『風に恋う』がヒット、
『転職の魔王様』がドラマ化もされた小説家・額賀澪さんによるルポです。
小説の骨組みともいえる”プロット”、書き込みだらけの生々しい”ゲラ”など、額賀さんが実際に小説を書く過程が見られるだけでなく、
作家さんからみた編集者の存在意義、「とある」シリーズを手掛けたスゴ腕編集者から見た作品の顔、本を売るために書店で工夫するひと、これから売るための術を授けてくれるひと
…などなど、もりだくさん!
小説家志望の方だけでなく、出版業界に関心がある人、出版就活をしている人、そして額賀先生の小説が書かれるまでを知りたい方にぜひ読んでほしい本です。
「出版業界は斜陽といわれていますが…」
と、入社試験の面接で言われたのは数年前。しかも役員面接でした。
どうしてそんな業界にいるのか?の答えのひとつが、描かれています。
そして欲しいもの、見つかりました。
誰もが知っているような、新しいベストセラーです!!
☆名作いっぱい!芥川賞直木賞フェア
詳しくは、各電子書店のページをご覧ください。