『エイリアン』シリーズ7作品。「完璧なる生命体」と「アンドロイド」に注目してみた。【前編】『プロメテウス』『エイリアン:コヴェナント』
「宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない。」
『エイリアン(1979)』から始まった「エイリアン」シリーズ7作品。
(VSシリーズは含まず)
『エイリアン』はナンバリングシリーズとして「1」~「4」まで、その前日譚にあたる『プロメテウス』と『エイリアン:コヴェナント』(前日譚3部作構想のうち2作)、そして2024年に「1」と「2」の間の時代を舞台としている『エイリアン:ロムルス』が公開されている。
H.R.ギーガーによる異形の宇宙生物が襲ってくる緊張感。異常なスピードで成長、進化し異種族を駆逐していく。その特異な生態も含め観る者に狩られる恐怖を植え付けた。そしてリプリーの存在も大きい。エイリアンに立ち向かい倒したのが、屈強な男ではなく女性であったことから当時フェミニズムを持って大いに語られ、シリーズ「2」~「4」は歴代のアンドロイドたちが「完璧なる生命体」と口を揃える最強エイリアンを如何にして倒すかも見所のひとつとなっていった。
シリーズ全作品を通して欠かせないのがウェイランド社の存在。この恐ろしいエイリアンを利用しようとする人間たちの思惑。そして彼らが派遣したアンドロイドの暗躍もマストである。
■ウェイランド・ユタニ社
「宇宙を支配している」と言われるヴィラン企業。エイリアンシリーズの背景となる未来時代で、宇宙開拓事業分野と関連して政財界にも多大な影響力を持つ巨大企業。アンドロイド製造、テラフォーミング、貨物輸送、防衛産業など多様な分野で事業を行っている。宇宙海兵隊(合衆国植民地海兵隊※『エイリアン2』)にも膨大な資金援助をしており、見返りに海兵隊を我が物顔で利用している。前身はウェイランド社とユタニ社であり、2099年に2社が合併して「ウェイランド・ユタニ(湯谷)社」となった。
SFならではの設定とホラー要素が見事に融合、SFホラーの金字塔を打ち立てた。
シリーズにおける「完璧なる生命体」と「アンドロイド」に注目してみた。
舞台2093年(惑星LV-223)
『プロメテウス(Prometheus)』(2012年)
「何故、人類誕生の瞬間は空白のままなのか」
「人類」誕生と「エイリアン」誕生の起源に迫る。
前日譚として位置しているが(3部作の1作目)ラストまでいわゆるギーガー的エイリアンは登場しない。よってタイトルにも「エイリアン」が付いていない。舞台は『エイリアン』の29年前。惑星LV-223にプロメテウス号が探査に入ることで物語は動き出す。
いまはまだ線ではなく点で繋がる程度で『エイリアン』の設定を踏襲した派生作品の体を成す。
本作のアンドロイド デヴィッドは、物語の中心的な存在で、その行動が「エイリアン」の誕生と進化に大きく関わっていることが明らかになった。(それは『コヴェナント』でより深まる)そしてこれにより、シリーズ全体のアンドロイド像、背景設定や世界観が大きく変わり一層興味深いものとなった。
『エイリアン』で登場し化石化していた「スペースジョッキー」の謎は解けたが、新たな謎を残したまま「地球には戻らず、エンジニアの母星を目指す」とショウは旅立ち『エイリアン:コヴェナント』にバトンを繋いで映画は終わった。
低評価の声も聞かれるが、非常に面白かった。「1」ありきではあるが、映像も物語も(矛盾点も含め)大好物の作品だ。
タイトルの「プロメテウス」は、人類に火(知識)をもたらしたことで神々の罰を受けたギリシャ神話のプロメテウスから取られている。「プロメテウスは神から火を盗んで人間に与え、そのために岩で鎖に繋がれ永遠の責苦を受けた」
この神話は、知識や創造の力がもたらす危険と、それに伴う責任を象徴しているとされる。
さらに諸説あるが、惑星LV-223は旧約聖書の一節を暗示(レビ記22節3章)「礼儀を失くして神に近づく者は罰を受ける」「穢れたままで神に近づいてはならない」
舞台2104年(オリガエ-6に向かう途中の惑星星系セクター87)
『エイリアン: コヴェナント(Alien: Covenant)』(2017年)
「あなたが私を創ったなら、あなたを創ったのは誰?」
若きピーター・ウェイランドと彼が創ったアンドロイド=デヴィッドの会話で始まる本作。『プロメテウス』同様、人類の起源に言及するが、むしろ「エイリアン」の起源に拍車が掛かり『エイリアン』的展開が繰り広げられる。ゼノモーフの原種(?)ネオモーフとプロトモーフが登場。よって今作はタイトルにめでたく「エイリアン」が付いた。
ネオモーフは、フェイスハガーではなくブラックタールから派生した菌のようなものが体内に入り込み、チェストバスターも胸(チェスト)ではなくどこから飛び出すかわからない(バックバスター/マウスバスター)など進化の過程である。そしてついに『エイリアン』に繋がるであろうプロトモーフが誕生する。
舞台はプロメテウス号事件(ショウとデヴィッドは地球に戻らず、エンジニアの母星を目指した)から11年後、『エイリアン』の18年前の2104年。
ウェイランド社はピーターの死後、2099年に日本の湯谷社に買収され「ウェイランド・ユタニ社」となった。
「私の創造者はあなた 私は仕えるが、あなたは人間。あなたは死ぬ、私は死なない」「あなたが私を創ったなら、誰があなたを?」ピーターには従順に仕えていたが、彼の死後は自我が暴走。エンジニアに創造された人類、人類に創造されたデヴィッド。やがて親である人類を忌み嫌うようになる。「私は仕える者ではない。彼らは復活を熱望する滅びゆく種だから 価値が無い種に再生はさせない」エンジニアを滅ぼし人間を実験台に「完璧なる生命体」創造の研究に邁進し、ついに結実する。
エリザベスを愛したという 夢を見るという バイロンの詩ではなくシェリーだと間違いを指摘され、屈辱の表情を浮かべたり 嫌悪する人間に近づいていたりもする。
創造したものと創造されたもの 果たして自分は何者か。
『ブレードランナー』の世界観とクロスオーバーしてきたような
「コヴェナント」とは、契約という意味があり、キリスト教では神との契約という意味まで発展する。
「我が名はオジマンディアス 王の中の王 我が偉業を見よ 諸侯よ そして 絶望せよ」
「他には何も残らぬ 巨大な遺跡の残骸と果てしなき荒涼が 遥か彼方まで広がるのみ」〈パーシー・シェリー〉
これほど壮麗な詩を残せれば、幸せに死ねる。
もし 死ねるなら。〈デヴィッド〉
後編へ続く(『エイリアン』、『エイリアン:ロムルス』『2』~『4』)
大変楽しく読ませていただき、また参考にさせていただき、
ありがとうございました。
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(text by 電気羊は夢を見た)