Fuckin’ Great!リスペクトとオマージュに溢れていたが『エイリアン:ロムルス』【映画レビュー】
★★★★☆(3.5/5)
鑑賞日:9月15日
イオンシネマ大高
監督: フェデ・アルバレス
出演: ケイリー・スピ―ニー
『エイリアン(1979)』公開から45年。
舞台はリプリーがノストロモ号を爆破してから20年後の2142年、そのノストロモ号の残骸付近で無人探査機(ウェイランド・ユタニ社)が生命体の繭のようなものを持ち帰るところから始まる。
時系列的には1作目(舞台は西暦2122年)と2作目(2179年)を繋ぐ『エイリアン1.5』である。
エイリアンシリーズへのリスペクトとオマージュに溢れまくっていた(「ドント・ブリーズ」のセルフオマージュも?)
以下ネタバレあり。
お馴染み20世紀FOXファンファーレのオープニングからファンファーレとロゴがフリーズするのは『エイリアン3(1992)』のオープニングと同じだ。
ウェイランド・ユタニ社が植民地として開拓した劣悪な環境のジャクソン星。そこから抜け出したい若者たちが(ユヴァーガ星への移住を切望)
廃棄され漂流しているユタニ社の宇宙船(研究施設)ロムルスとレムスの休眠装置を盗み出そうと忍びこむことで惨劇が始まるのだが『エイリアン2(1986)』でもウェイランド・ユタニ社は惑星(LV-426)の植民地開拓(テラフォーミング)を進めていたがエイリアンによって壊滅されており、
同社の入植計画が上手くいっていないのがわかる。
レインがエイリアンに追い詰められ顔を背けるシーンは『エイリアン3(1992)』でリプリーがドッグエイリアンと対峙したシーンとそっくりだ。
タイラーがレインに銃の扱いを教えるシーンは『エイリアン2(1986)』でヒックスがリプリーに同じように教えている。
極めつけはアンドロイドのルークだ。まんま『エイリアン(1979)』のアッシュと同じ見た目で同型改良版という設定か(『エイリアン2(1986)』のビショップ曰くアッシュは不良品だったと)。
「君たちは生き残れない、同情するよ」アッシュと同じ台詞を吐いた。嫌味なところは改良されてないw
アンディには「合成人間と呼ばれる方がいい」というビショップの言葉を言わせている。
そして上半身のみの姿はビショップへのオマージュであろうか。
エンドクレジットのSpecialThanksイアン・ホルムはリスペクト。
音楽にもオマージュが。J・ゴールドスミスの1作目のテーマ曲や『エイリアン:コヴェナント(2017)』の冒頭で、アンドロイドのデヴィッドがピアノ演奏したワーグナーの曲も流れていた。因みにスコット御大はワーグナー好き
『エイリアン4(1997)』の“ニューボーン”よろしく“オフスプリング”がラストに登場。“プロメテウスの火”を注射したことで産み落とされたエイリアン+エンジニア?+人間のDNAミックスの新種生命体だ。
造形にひと工夫欲しかったが 『プロメテウス(2012)』の“エンジニア”ルックで繋がりを持たせたか。オフスプリングは“母”であるケイを殺害するが、ニューボーンもエイリアン・クイーンを殺していた。母殺しの
DNAが埋まっているのか?
爆破のカウントダウン、決戦の前に下着姿から宇宙服を着るくだりや撃退の方法、モノローグでの航海日誌風の語り等々。オマージュにがてんこ盛りだ。(思いついたものを書き出してみたがまだまだイースターエッグは隠されているのだろう。そういう目線で再度鑑賞してみたい)
それ故既視感が強いのは当たり前で、新鮮味に欠けていたのはしょうがない。どうしても観る側にバイアスがかかってしまうから。
改めて『エイリアン(1975)』の素晴らしさを再確認した。
古臭いモニターなどガジェット類はシリーズを継承していて違和感なく楽しめた。
もちろん新しいアイデアもあり 無重力装置やX線透過装置、アンドロイドのモジュール交換など面白かったが、公開前の劇場予告で観たシーンも多く驚きが少なかった。
シリーズをよく勉強し手堅く作ったという印象。続編の余地を残した感じもする。リプリーではない新たなエイリアン史の始まりか?
人間とアンドロイド(合成人間)姉弟の物語 レイン(ケイリー・スピニー)とアンディ(デヴィッド・ジョンソン)の2人が素晴らしかった。逆に2人以外のキャラが弱く物足りなかった。
スコット監督は、以前続編は自分が撮るべきだったと後悔を口にしていたが、アルバレス監督が手がけた今作を「クソ素晴らしい(Fuckin’ Great!)」と絶賛している。
シリーズを通しての悪の企業ウェイランド・ユタニ社はエイリアンの軍事兵器利用を試みていたが、ここではDNA操作で新たな生命体を生み出そうと画策していた。考え方は4に近いのか?
エイリアンシリーズを通してよく語られるフェミニズムは、本作ではさほど強調されず代わりに世界の潮流である多様性が描かれていた。
『エイリアン』シリーズの次回作は、25年にHuluで全米配信予定、米FX制作のシリーズ初ドラマ版『エイリアン:アース(原題) / Alien: Earth』。
現在(2024年)から70年後、1作目より30年前の2094年の地球が舞台。
『プロメテウス(2012)』の設定は無視されるみたいだが、ウェイランド・ユタニの設立過程と新しい合成人造人間を創造するための企業間の競争を扱うらしい。
エイリアン「1」と「2」のオマージュがたくさん観られるそうだ。脚本にはリドリー・スコットも参加している。
こういう作品は若い人達がやるべきという考えからシガニー・ウィーバーはこの作品に関わる意志はないという。
『エイリアン:ロムルス(2024)』とは別の企画となり、『FARGO/ファーゴ』『レギオン』などで知られるノア・ホーリーがショーランナーを務める。
まだまだ楽しませてくれそうだ。
(text by 電気羊は夢を見た)