徹底的に残酷で恐ろしい、人間の本性を浮き彫りにするサバイバル群像劇『コンクリート・ユートピア』【映画レビュー】
★★★☆☆
鑑賞日:1月7日
劇 場:ミッドランド名古屋空港
監 督:オム・テファ
出 演:イ・ビョンホン、パク・ソジュン、パク・ボヨン
ソウル市一帯が瓦礫の山と化すなか、唯一奇跡的に無傷で残った高級マンションを舞台にくりひろげられるサバイバル群像劇。
極限状態での人間の利己主義や排他性を浮きぼりにして見せる批判性の高い作品。『コンクリート・ユートピア』の表向きの顔はこれで、その奥に見てとれるのはホラー映画へのオマージュ。
子供の頃、夢中で読んだ楳図かずおの『漂流教室』を思い起こす世界観に浸りました。徹底的に恐ろしく、残酷シーンに満ち、非常事態の中で興奮した人間のタガ外れる心理描写が見事でした。
結末も中途半端なハッピーエンドではなく、『パラサイト』にも通じる、作り手の映画魂が感じられてよかったです。
日本では能登半島地震が起きてしまい。色々と考えさせられます。『ゾンビ』のジョージ・A・ロメロ監督への追悼文「ロメロのおかげで、ぼくらはみな、安全な距離から地獄を経験できたのだ。」を思い出し、時節柄この映画を楽しめてしまう自分が不謹慎だと思ったり、安全な距離にいる自分に出来ることってなんだろうと考えています。
(text by NARDAM)